体質が変わったので

JUN

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呼ばう(3)純粋なお願い

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 新しい患者が出たと聞いて、急いで病院へ行く。
「怜!?」
 何とそこには、敬達のグループがいた。敬と幼稚園から仲良くしている子供達だ。
「どうした、敬?」
「先生のお見舞い。先生が病気で入院したから、休み時間にクラスの皆で手紙を書いて、遠足の写真と一緒に持って来たの」
「まさか、新しい患者って」
 廊下に出て来ていた医師が、微かに頷く。
 なんてこった。
「会えないんだって。だから、先生に渡してもらおうとしてた所なんだよ」
 皆、病状を知らないが、心配そうに顔を曇らせている。
「そうか。早く良くなるといいな」
「そうだねえ」
 そう言うのが精一杯だ。
 多少間違った字が混じったひらがなの手紙の束と、遠足の時の集合写真を預かる。大きな木をバックにして、教師と生徒が笑みを浮かべて写真に納まっている。
「へえ。この前の遠足の写真かあ。天気も良かったしねえ」
 直も言いながら、2人で写真を覗き込む。
 敬は――いたいた。可愛いなあ。それに一番賢そうだ。
 そんな事を考えていると、それに気付いてギクリとした。
「敬。これ、公園だったよな」
「そうだよ。広くてねえ、アスレチックもあってねえ、面白かった!」
「だるまさんがころんだと、ハンカチ落としもやったんだよ!」
「先生も小さい頃は好き嫌いがあったんだって。でも、思い切って食べたら意外と美味しくて平気になちゃったんだって!私もひじき、食べてみたら食べられた!」
 子供達は、口々に遠足の日がいかに楽しかったか、笑顔で報告してくれた。
「そうかあ。皆、先生が大好きなんだな」
「うん!」
 一斉に、満面の笑みで頷く。
「わかった。じゃあ、これは先生に渡してもらおうな。
 ああ。もう帰らないと夕方になるぞ。寄り道は、今日は大目に見るが、だめだからな」
「気を付けて、急がないで帰るんだよ」
「はあい」
 敬達はランドセルを揺らして、帰って行った。
 笑顔で見送っていた僕達だったが、敬達が見えなくなると、真剣な目を写真に落とした。
「これ、ねむの木だよな、直」
「だと思うんだよねえ」
「ここか?」
「行こうかねえ」
 僕と直は、担当医に手紙の束を渡して、病院を飛び出した。

 その公園は、家からそう遠くもない所にある。何せ、小学校1年生が歩いて行く距離だ。
 真ん中は大きなグラウンドになっていて、周囲に、遊具のあるコーナー、ちょっとしたアスレチックのあるコーナー、日時計と花壇のあるコーナーがある。
 付近の住民に利用されているようで、まだ遊ぶ子供達や、花壇のベンチで話をしている老人達がいた。
 写真のねむの木は、遊具やアスレチックのない辺りに1本だけ生えていた。
「あれだな」
「ここだったのかあ」
 近付いて行くと、ただの木ではない事がわかる。たくさんの人が囚われていた。
「結界を張って隠すねえ」
「頼む。
 さあ、逝こうか」
 僕と直は、ねむの木に近付いた。





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