体質が変わったので

JUN

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誕生日(4)祝福と祈りを

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 泣きながら、怒りながら、怖がりながら、それは手を振り下ろし、足をばたつかせる。その姿は、ダダをこねる子供そのものだ。
 可哀そうだとは思う。
 しかし、中にはどうしようもない理由を抱え、泣く泣く子供を諦める母親だっている。
「それは、見過ごせない事だ」

     イヤダア
     オマエモ ナノカ
     マタ コロスノカ

「子供が間違った事をした時、叱るのは大人の役目だからな。
 次は、お父さんやお母さんに、大事にしてもらえ。誕生日を祝ってもらえ。生まれた事に感謝して、笑って生きろ」
 刀を突き立てる。
 そこから広がる浄力で、ほろほろと崩れるようにして、子供達は空へ立ち昇る。

     うわあ……!
     なに、これ!?

 キャッキャと笑い、空を見上げ、やがてすべての子供達は消えて行った。
 土井さんが、溜め息のような声を上げた。
「初めて見たよ。あの子達、生まれ変わるのかな。少子化に歯止めがかかるのかな」
「え?さあ……それは……どうなんだろう……?」
「ボクも、そこまでは……ねえ」
 僕達は、並んで空を見上げていた。

 テーブルに並べた料理をサッと点検する。
 サバそぼろのちらしケーキ、チューリップと四葉のクローバーと星の飾り巻き、赤飯の一口ボール、チーズ入りコロコロコロッケ、唐揚げ、アスパラフライ、ナスとトマトのミニグラタン、エビとカニと水菜と人参の生春巻。それに、生クリームのケーキ。
 サバちらしのちらしケーキは、丸い容器にラップを敷いて、サバそぼろ、錦糸卵、酢飯を入れてまずギュッと押さえ、サバちらし、酢飯を入れて、再び押さえて、ひっくり返して大きなお皿に出す。それからラップを外して、千切りの絹さやをちらし、人数分の甘酢ショウガをバラのように巻いたものを飾り、皆の前で切る。
 チューリップの花部分は魚肉ソーセージ、茎と葉っぱはきゅうりで、巻いた時にチューリップになるように、ご飯を挟みながら巻く。クローバーは、ご飯に青のりを混ぜたもので細巻きを作ってハート型に箸で窪みを付けたものを4本準備して、これを葉にして同様に巻く。星は、カレーパウダーで黄色くしたご飯を巻いて星型になるように箸で窪ませておき、巻いていく。1回やれば、意外と上手くできるようになって楽しい。
 アスパラは、ハンバーグだねをアスパラに巻き付けてパン粉を付け、フライにした。ミニグラタンは豆乳のホワイトソースだ。
 ケーキは、スポンジと生クリームは僕が作って、冴子姉がそれをデコレーションし、兄がクッキーに「お誕生日おめでとう」とチョコレートペンで書いたものを飾った。美里は、そのクッキーを焼いた。
「よし。こんなものか」
「敬が見たら喜ぶわよ。美味しそう」
 まだ敬にも内緒だ。敬は、朝から隣で康介と優維ちゃんといる。
「お誕生会か。怜にもしてやればよかったな」
 兄が言うのに、僕は首を振った。
「いや、兄ちゃんはオムライスを作って『おめでとう』って書いてくれたり、唐揚げとかハンバーグとか、僕の好きなご馳走をいっぱい作ってくれたじゃないか。すごく嬉しかったよ。兄ちゃんと直がお祝いしてくれて、充分だから。ありがとう。
 むしろ、僕が兄ちゃんにろくに何も返せてない」
「ばかだなあ。怜はお小遣いをためて一生懸命してくれただろ。普段から、中学以降は、色々と料理もしてくれたし。俺こそありがとうな」
 兄弟でじんわりと思い出していると、直が言う。
「嬉しそうだったもんねえ。こういう思い出は残るもんだし、子供達にやってあげたいよねえ。
 食器と飲み物はOK?」
「食器OK!」
 千穂さんが声を上げ、冷蔵庫を開けて美里が、
「お茶、オレンジジュース、アイスティー、OK」
と答える。
 プレゼントは、隣の部屋に置いてあるが、僕と美里からは、ドーム型テントとプラネタリウムだ。兄ちゃんと冴子姉からは星座図鑑と四季の星座早見盤。直達や京香さん達からのプレゼントもある。
「よし。皆集まったかな」
 言っていると、ドアチャイムが鳴って、京香さんが顔を出した。
 双龍院京香そうりゅういんきょうか。僕と直の師匠で、隣に住んでいる。大雑把でアルコール好きな残念な美人だが、面倒見のいい、頼れる存在だ。
 準備の間、敬、うちの凜、直の所の優維ちゃんと累を見ながら、招待した敬の友人達が来るのを待ってくれている。その為、敬の友人達には、京香さんの家に行くようにと言ってある。
「どう?今、皆来たわよ」
「ナイスタイミングだねえ」
「じゃあ、入ってもらおうか」
 兄が言って、冴子姉と迎えに行く。
 美里と千穂さんも子供を迎えに行き、僕と直は、ビデオの準備やケーキのろうそくの準備をする。
「何か、楽しいねえ、怜」
「そうだなあ。これからも、子供達の誕生日はこうやって祝おうか」
「豪華だねえ」
「生まれた事を、祝い、感謝する日だからな。いいんだよ」
「そうだねえ。まあ、こんなお誕生会をするのも、いいとこ小学生の間だろうしねえ」
「後は内輪でか」
「うん。内輪になったら、バーベキューとか鍋とかでもいいしねえ」
「いいなあ、それも」
 僕も直も、あの間引かれた子供達の事を思い出していた。
「誕生日を素直に祝えるのは、幸せだな」
 入って来た子供達の、笑顔と歓声が弾けた。



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