体質が変わったので

JUN

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たまてばこ(4)中のもの

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 すっかり大人しく魂が抜かれたようになった信川さんの腕を掴み、背後の刑事の方へ押しやる。
「斬ったらまずいかな」
「吸い込んだものはどうなっているんだろうねえ」
「魂をすするとは言え、実際はどうなんだろうな。吸い込んだのは何だ?」
 黒い人型は、ふるふると震えた。笑ったのかも知れない。

     イノチヲヨコセ
     ワレガ カンゼンニ
     チカラヲトリモドスタメニ

「なるほど。衰弱の様子が、魂を啜られたように思えたんだな」
「だねえ。実際は、生気かねえ」
「じゃあ、斬ってもいいな。
 あ。祀りの為に残しておくか?」
「いいんじゃないかねえ?危ないし」
「それもそうだな」
 僕と直は、方針を相談していく。

     ウマソウナ チカラダ
     ヨコセ ヨコセェェェ!

「断る!」
 被さる様に襲い掛かるそれに、刀を一閃させる。
 が、2つに分かれたものの、またくっついて復活し、僕はムッとした。
「面倒臭いやつだな」
「流石は気体だねえ。任せてよう」
 直の札が、黒い人型に貼りつき、ギュッと包んで丸める。それを、斬る。

     ギャアアアア!!

 頭に響くような声を上げて、それは消えた。
「終わったな」
「後は、この箱を神社に返せばいいねえ」
 ぐしゃぐしゃに丸まって2つに両断された札を拾って、単なる黒い箱となったそれに入れる。
「あの、それは?」
「まあ一応、中味は片付けたという印、かねえ?」
「これを祀ればいいんじゃないか?」
「言い伝えには意味があるっていう教訓かねえ。もしくは、好奇心もほどほどに?」
 刑事2人は、引き攣った顔で笑った。

 神社に箱を戻し、神主に全てを説明し、事件は終わった。
 落ち着いたら、元気を取り戻した村民で、祭りを行う事になるそうだ。
「魂餟箱か。まあ確かに、浦島太郎は開けてはいけない箱を開けて、中から出て来た煙のせいでお爺さんになったんだしな。箱に封印されていたアレに生気を吸い取られて、おじいさんになるほど衰弱したという話が、口伝から物語に転じたとも考えられるな」
「それにしても、中味のアレは何なんだろうねえ」
 僕と直は、考えた。
「生気を啜るもやか」
「霊体の集合体とかかねえ」
「もしくは、意識の塊か。
 どっちにしても、斬れないし、形は変わるし、面倒臭いやつだった。直だから札で拘束できたけど、もたもたしていたら、するりと札の間から抜け出るぞ」
「本当に、面倒臭いやつだねえ」
 僕と直は、揃って大きな溜め息をついた。
「あれ?浦島神社とか浦島伝説って全国にあるよねえ?」
「うん。うん?もしかして……」
「他にも魂餟箱がまだあるんじゃないかねえ?」
「……」
 想像して、ゾッとする。
「冗談じゃない。もう面倒臭いのはごめんだ」
「ボクもそれに賛成するねえ」
 協会を通して全国に魂餟箱の件と封印の再確認をしてもらおうと、僕は思った。




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