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うわさ(3)鏡
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園児達にも仲良しグループができて行く。好きな遊びが、グループ分けの基本だろうか。
敬はおっとりとした男の子のグループにおり、ブランコやジャングルジムで遊んだり、図鑑を広げたり、園内を探索したりして楽しんでいた。鳥に詳しいという智也とは親友というくらいに馬が合うらしい。
ひと回りして教室に戻って来た時、女の子がショボンとしているのに気付いた。
「どうしたの?ええっと……」
「西田舞花。昨日まで仲良くしてたのに、美麗ちゃん達が意地悪するの。舞花、何もしてないのに」
敬達はあっさりと言った。
「じゃあ、一緒に遊ぼうよ」
「舞花ちゃんは何が好き?」
「ピアノ!」
「オルガン弾ける?」
それで、敬達はオルガンの周りに集まって、歌ったりし始めた。
飛川はそれを見ながら、ほっと頬を緩ませた。
母親達の噂は、保育士の耳にも入っていた。舞花の母親がグループのメンバーから悪く言われていて、それに気付いた舞花の母親が、ノイローゼになりかかっているようだ。
子供達も母親の力関係を察しており、舞花を仲間外れにし出している。
先程も、舞花が見付けた何かを美麗に取り上げられたらしく、それで舞花はメソメソしていたのだ。
彼らは、鍵盤を押さえると違う音が出て来る事に気づき、試し、聞いた事のあるメロディーにならないかと試行錯誤してはまた笑っていた。
お迎えの母親達がやって来る。
「お母さん!あのね、今日ね、オルガンで遊んだの!舞花ちゃん上手だったんだよ」
「敬、明日は陰陽ジャーに挑戦しような」
「うん、智也!」
「俺、家で少し姉ちゃんに聞いて来るな!」
「頼むな、勝!」
「私もやってみるね!」
「がんばろうね、舞花ちゃん!」
子供達は、陰陽ジャーのテーマを次の課題にしているらしい。その母親達は、何となく子供達のしている遊びに気付いて、笑った。
舞花の母親は、子供達の笑顔の会話に虚を突かれたような顔をして、肩の力を抜いた。
「流行ってますねえ、陰陽ジャー。私達が子供の頃から、何とかレンジャーとかいうのってずうっとありますもんねえ」
冴子が話しかける。
「あった、あった!やっぱり人気は赤だったけど、私は緑が大体好きだったわ。優しい人が多かったでしょ、緑」
「そうそう。青は冷静沈着」
冴子達おやも、笑顔で話し始めた。
それを苦々しく眺めるグループがいた。中村グループだ。
「敬君に、智也君に、勝君ね。智也君のお父さんは高校の生物の先生らしいわね。勝君のお父さんは元Jリーガーで、どこかのチームの2軍だったらしいわよ」
中の1人が報告する。
「思い出したわ。河上さんって愛人?旦那さんいないでしょ」
中村が言い出す。
河上というのは、今ここにいない1人だ。大抵黙って話を聞いているだけの人だった。
「何か暗いわよね、あの人」
「不倫の子で、父親がいないんじゃ暗くもなるわよ、そりゃあ」
「持ち物は特売品ばっかりでね。安物買いの銭失いね」
「娘の趣味も趣味よね。この前、ミミズをほじくり返してたのよ」
「うわあ、気持ち悪いぃ」
こちらはこちらで、盛り上始める。
そこへ、河上が来て娘の由布子の所に行き、手を引いて中村グループに合流する。
「遅かったのね」
にっこりと1人が笑う。
「出かける時に宅配便が来て」
「ああ、あるある」
宅配便がどうの、お取り寄せがどうのと話が始まった。
美麗は、そっとそれを眺めた。舞花に貰った鏡の欠片だ。
この前の手鏡と合わせて、家の周りに埋めてみるつもりだ。今日手に入れたこれで、一周する。前に見た陰陽ジャーで、鏡をグルリと周りに置くと、守る力が強まって、強力な結界になっていた。
「これで美麗のお家は大丈夫」
言いながら、欠片を庭に埋めていく。
ふと、オルガンを楽しそうに弾いていた舞花を思い出す。母親達が舞花や舞花の母親の悪口を言っているのを聞いて、舞花はこれから友達じゃないと思った。それで子分にしたが、舞花は最初悲しそうだったのに、今日は他の子と楽しそうにしていた。本当は自分も行きたかったのに、何だか行きにくくて、羨ましかった。
敬はおっとりとした男の子のグループにおり、ブランコやジャングルジムで遊んだり、図鑑を広げたり、園内を探索したりして楽しんでいた。鳥に詳しいという智也とは親友というくらいに馬が合うらしい。
ひと回りして教室に戻って来た時、女の子がショボンとしているのに気付いた。
「どうしたの?ええっと……」
「西田舞花。昨日まで仲良くしてたのに、美麗ちゃん達が意地悪するの。舞花、何もしてないのに」
敬達はあっさりと言った。
「じゃあ、一緒に遊ぼうよ」
「舞花ちゃんは何が好き?」
「ピアノ!」
「オルガン弾ける?」
それで、敬達はオルガンの周りに集まって、歌ったりし始めた。
飛川はそれを見ながら、ほっと頬を緩ませた。
母親達の噂は、保育士の耳にも入っていた。舞花の母親がグループのメンバーから悪く言われていて、それに気付いた舞花の母親が、ノイローゼになりかかっているようだ。
子供達も母親の力関係を察しており、舞花を仲間外れにし出している。
先程も、舞花が見付けた何かを美麗に取り上げられたらしく、それで舞花はメソメソしていたのだ。
彼らは、鍵盤を押さえると違う音が出て来る事に気づき、試し、聞いた事のあるメロディーにならないかと試行錯誤してはまた笑っていた。
お迎えの母親達がやって来る。
「お母さん!あのね、今日ね、オルガンで遊んだの!舞花ちゃん上手だったんだよ」
「敬、明日は陰陽ジャーに挑戦しような」
「うん、智也!」
「俺、家で少し姉ちゃんに聞いて来るな!」
「頼むな、勝!」
「私もやってみるね!」
「がんばろうね、舞花ちゃん!」
子供達は、陰陽ジャーのテーマを次の課題にしているらしい。その母親達は、何となく子供達のしている遊びに気付いて、笑った。
舞花の母親は、子供達の笑顔の会話に虚を突かれたような顔をして、肩の力を抜いた。
「流行ってますねえ、陰陽ジャー。私達が子供の頃から、何とかレンジャーとかいうのってずうっとありますもんねえ」
冴子が話しかける。
「あった、あった!やっぱり人気は赤だったけど、私は緑が大体好きだったわ。優しい人が多かったでしょ、緑」
「そうそう。青は冷静沈着」
冴子達おやも、笑顔で話し始めた。
それを苦々しく眺めるグループがいた。中村グループだ。
「敬君に、智也君に、勝君ね。智也君のお父さんは高校の生物の先生らしいわね。勝君のお父さんは元Jリーガーで、どこかのチームの2軍だったらしいわよ」
中の1人が報告する。
「思い出したわ。河上さんって愛人?旦那さんいないでしょ」
中村が言い出す。
河上というのは、今ここにいない1人だ。大抵黙って話を聞いているだけの人だった。
「何か暗いわよね、あの人」
「不倫の子で、父親がいないんじゃ暗くもなるわよ、そりゃあ」
「持ち物は特売品ばっかりでね。安物買いの銭失いね」
「娘の趣味も趣味よね。この前、ミミズをほじくり返してたのよ」
「うわあ、気持ち悪いぃ」
こちらはこちらで、盛り上始める。
そこへ、河上が来て娘の由布子の所に行き、手を引いて中村グループに合流する。
「遅かったのね」
にっこりと1人が笑う。
「出かける時に宅配便が来て」
「ああ、あるある」
宅配便がどうの、お取り寄せがどうのと話が始まった。
美麗は、そっとそれを眺めた。舞花に貰った鏡の欠片だ。
この前の手鏡と合わせて、家の周りに埋めてみるつもりだ。今日手に入れたこれで、一周する。前に見た陰陽ジャーで、鏡をグルリと周りに置くと、守る力が強まって、強力な結界になっていた。
「これで美麗のお家は大丈夫」
言いながら、欠片を庭に埋めていく。
ふと、オルガンを楽しそうに弾いていた舞花を思い出す。母親達が舞花や舞花の母親の悪口を言っているのを聞いて、舞花はこれから友達じゃないと思った。それで子分にしたが、舞花は最初悲しそうだったのに、今日は他の子と楽しそうにしていた。本当は自分も行きたかったのに、何だか行きにくくて、羨ましかった。
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