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この世の終わり(2)怪事
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主だった宗教の本部が「デマだ」と火消しに走るが、効果はないと言っていいだろう。言えば言うだけ、「何かを隠している」「政府首脳だけ逃げ出すつもりだ」などと言われるのだ。
バチカンの知人、エドとロイも、疲れ切った声でそうグチの電話を寄こして来た。
「まさか、ヨルムンガンドが何か仕掛けて来てるとかじゃないよな」
友人であったはずのシエルの顔が浮かんだ。
「無くも無いかねえ。でも、その後の終息のさせ方はどうなのかねえ?」
「自分達の神をでっちあげて、今残っているたった1柱の神様だと皆を信者に誘導するとか?」
考えてみる。
「上手く行くかなあ」
「やり方次第ってところかねえ」
僕と直は唸った。
「まだ日本は大人しいよ。海外では、暴動やテロも起こってるんだから」
徳川さんが、新聞を放り出して言った。
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「ああ、らしいですよねえ。何で暴動に結び付くのかが、日本人のメンタルではわからないねえ」
「そんな事をしたって、逃げ場なんてないだろうにな、それが本当なら」
「日本人がお行儀のいい優等生と言われるのは、こういう所なんだろうねえ。
とは言え、今回は流石に日本人も慌ててるようだね。石油ショックのパニックみたいなものかな」
「ううーん。社会の教科書には出て来たが、デマに踊ってトイレットペーパーを買いあさった騒動としか……」
「そんな程度って事だよ」
実際、おかしな事象は起こっていた。
霊や怪物のようなものや鬼が出現したり、墓石が倒されたり、海外の土葬の所では墓の下から唸り声のようなものが聞こえたり。後は、真夏並みに暑くなった所や、極地並みに寒くなった所もあるし、雷が鳴り続けた所などもある。
日本でも、墓石が倒れたという所はあるし、雷が落ちまくったところもある。
と、どこからかの電話を受けた徳川さんが、電話を切って僕と直に言った。
「それと、気になる動きがある。これまたどこをどうしたらそういう考えになるのかわからないけど、東アジア情勢がきな臭いらしい。
そこで、怜君と直君は、ぼくと今から会議に出席して欲しい。詳しい話は向こうで」
「わかりました」
僕達は、陰陽課を後にした。
各省庁のお偉方が居並ぶ部屋で、会議に出席した。
「中国で霊を支配しようとして失敗して、暴走させた模様です。党はひた隠しにしていますが。このままいくと、海に出て、日本の方へ近付いて来る恐れがあります」
「朝鮮半島では、朝鮮戦争の時の霊が多数湧いて兵役経験のある国民らに憑りついて、休戦協定を破棄しかかっているばかりか、ドサクサで日本に戦争を仕掛けようとする動きも報告されています」
各々の地域の担当者が言い、皆は呻いた。
「祓って正気に返せないのか?」
「政府の人間に憑りついているようですので、無理かと思われます。勝手に日本が手出しするわけにもいきませんし」
それはそうだ。
「御崎警部、町田警部。それが日本に向かってきた場合、到達前に無力化は可能か」
幕僚長が訊き、注目を集めながら立つ。
「規模が不明なので、現時点ではハッキリと返答しかねます。まあ、前回の『神の鉄槌』の時と同じくらいなら問題はないでしょうが」
ザワザワと声が沸き起こる。
「問題は、憑りつかれたヒトが攻めて来た場合だろう。反撃しても後々大丈夫か?」
「もめそうだな」
そんなざわめきの中、取り敢えず休憩という事になった。
「直、ちょっと電話してくる。美里の具合が心配だ」
「ん、分かったねえ。うちも千穂ちゃんがちょっとおかしいらしいんだよねえ。胃が」
「今年は、胃腸に来る風邪でも流行ってるのかな」
僕と直は、各々電話をかける為に、廊下に出た。
そして戻ってすぐ、その一報が入る。
「霊をばら撒いているグループがいて、現在混乱が起こっています」
バチカンの知人、エドとロイも、疲れ切った声でそうグチの電話を寄こして来た。
「まさか、ヨルムンガンドが何か仕掛けて来てるとかじゃないよな」
友人であったはずのシエルの顔が浮かんだ。
「無くも無いかねえ。でも、その後の終息のさせ方はどうなのかねえ?」
「自分達の神をでっちあげて、今残っているたった1柱の神様だと皆を信者に誘導するとか?」
考えてみる。
「上手く行くかなあ」
「やり方次第ってところかねえ」
僕と直は唸った。
「まだ日本は大人しいよ。海外では、暴動やテロも起こってるんだから」
徳川さんが、新聞を放り出して言った。
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「ああ、らしいですよねえ。何で暴動に結び付くのかが、日本人のメンタルではわからないねえ」
「そんな事をしたって、逃げ場なんてないだろうにな、それが本当なら」
「日本人がお行儀のいい優等生と言われるのは、こういう所なんだろうねえ。
とは言え、今回は流石に日本人も慌ててるようだね。石油ショックのパニックみたいなものかな」
「ううーん。社会の教科書には出て来たが、デマに踊ってトイレットペーパーを買いあさった騒動としか……」
「そんな程度って事だよ」
実際、おかしな事象は起こっていた。
霊や怪物のようなものや鬼が出現したり、墓石が倒されたり、海外の土葬の所では墓の下から唸り声のようなものが聞こえたり。後は、真夏並みに暑くなった所や、極地並みに寒くなった所もあるし、雷が鳴り続けた所などもある。
日本でも、墓石が倒れたという所はあるし、雷が落ちまくったところもある。
と、どこからかの電話を受けた徳川さんが、電話を切って僕と直に言った。
「それと、気になる動きがある。これまたどこをどうしたらそういう考えになるのかわからないけど、東アジア情勢がきな臭いらしい。
そこで、怜君と直君は、ぼくと今から会議に出席して欲しい。詳しい話は向こうで」
「わかりました」
僕達は、陰陽課を後にした。
各省庁のお偉方が居並ぶ部屋で、会議に出席した。
「中国で霊を支配しようとして失敗して、暴走させた模様です。党はひた隠しにしていますが。このままいくと、海に出て、日本の方へ近付いて来る恐れがあります」
「朝鮮半島では、朝鮮戦争の時の霊が多数湧いて兵役経験のある国民らに憑りついて、休戦協定を破棄しかかっているばかりか、ドサクサで日本に戦争を仕掛けようとする動きも報告されています」
各々の地域の担当者が言い、皆は呻いた。
「祓って正気に返せないのか?」
「政府の人間に憑りついているようですので、無理かと思われます。勝手に日本が手出しするわけにもいきませんし」
それはそうだ。
「御崎警部、町田警部。それが日本に向かってきた場合、到達前に無力化は可能か」
幕僚長が訊き、注目を集めながら立つ。
「規模が不明なので、現時点ではハッキリと返答しかねます。まあ、前回の『神の鉄槌』の時と同じくらいなら問題はないでしょうが」
ザワザワと声が沸き起こる。
「問題は、憑りつかれたヒトが攻めて来た場合だろう。反撃しても後々大丈夫か?」
「もめそうだな」
そんなざわめきの中、取り敢えず休憩という事になった。
「直、ちょっと電話してくる。美里の具合が心配だ」
「ん、分かったねえ。うちも千穂ちゃんがちょっとおかしいらしいんだよねえ。胃が」
「今年は、胃腸に来る風邪でも流行ってるのかな」
僕と直は、各々電話をかける為に、廊下に出た。
そして戻ってすぐ、その一報が入る。
「霊をばら撒いているグループがいて、現在混乱が起こっています」
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