673 / 1,046
この世の終わり(5)終結と始まり
しおりを挟む
会議から24時間経たず、それは終息した。
うっかり放出した神威はヨーロッパまで衝撃波のようなものとして感知されたらしいが、残っていた霊を浄化したばかりか、中国の暴走していた霊の集合体も浄化し、半島の人に憑りついていた霊も祓ったようだ。
ゲリラを送り込んだ国はわかっているし、陣があるので証拠もあるが、認めようとはしなかった。でも、証拠と捕まった犯人という生き証人、穴から次々と霊を返されて霊能者がダウンしたという事実は、当国がシラを切ったが明らかで、国際的な非難は浴びた。
まあそれでも罠だとか言い張るメンタルは、大したものだ。
そしてヨルムンガンドは、やはり世界の方々で終末の噂を撒き、広めていた事がわかった。
ただ、それ以上の事をする前に混乱となったので、傍迷惑な種をばら撒いただけとなったらしい。
そんな事よりも、僕にとっては、兄達も全員無事で、美里も取り返せた事の方が余程重要だ。
「階級、上がったんですって?」
「うん。来月、警察大学に1ヶ月行く事になるが、警視だって。こういう省庁にまたがって何かする時に、せめて警視くらいでないと、命令とか面子とかがあるみたいだな。面倒臭い」
「また寮でしょ?美里ちゃん。その間、美味しいもの食べにどこか行かない?」
「そうねえ。いいわねえ」
「楽しそうで結構だねえ」
僕と直は苦笑した。美里も千穂さんも、この分なら心配なさそうだ。優維ちゃんに至っては、昼寝から目も覚まさなかったそうだ。大物になりそうだな。
「御崎さん」
呼ばれて、診察室へ入る。
「何の影響もありません。母子共に健康ですよ」
「……は?」
「母子?」
僕と美里は、理解するのに数秒かかった。
「え!?まさか!?」
「あの甘い物ばかり食べたくなったのは!?」
「おめでとうございます」
僕達は、無言でハイタッチを交わした。
「ああ、でも――」
医師が笑顔を引っ込めるのに、ドキッとした。
「はい?」
「甘い物ばかり摂っていると栄養的に問題になります。気を付けて下さい」
「……はい」
僕と美里は、神妙な顔で返事をした。
次に呼ばれた直達は、出て来ると、笑った。
「2人目だってえ。予定は7月だってさあ」
「あら。うちと同じじゃない」
「まあ!」
「お互い同時期か。よろしく、先輩」
僕達は笑い合い、おめでとうを言い合い、歩き出した。
まだ、瓦礫の撤去も終わっていないし、補修の必要な建物や道路もあるし、ケガをした人もいる。でも、どうやら平穏にクリスマスも年越しも迎えられそうだ。
青い空は、高く澄んでいた。
うっかり放出した神威はヨーロッパまで衝撃波のようなものとして感知されたらしいが、残っていた霊を浄化したばかりか、中国の暴走していた霊の集合体も浄化し、半島の人に憑りついていた霊も祓ったようだ。
ゲリラを送り込んだ国はわかっているし、陣があるので証拠もあるが、認めようとはしなかった。でも、証拠と捕まった犯人という生き証人、穴から次々と霊を返されて霊能者がダウンしたという事実は、当国がシラを切ったが明らかで、国際的な非難は浴びた。
まあそれでも罠だとか言い張るメンタルは、大したものだ。
そしてヨルムンガンドは、やはり世界の方々で終末の噂を撒き、広めていた事がわかった。
ただ、それ以上の事をする前に混乱となったので、傍迷惑な種をばら撒いただけとなったらしい。
そんな事よりも、僕にとっては、兄達も全員無事で、美里も取り返せた事の方が余程重要だ。
「階級、上がったんですって?」
「うん。来月、警察大学に1ヶ月行く事になるが、警視だって。こういう省庁にまたがって何かする時に、せめて警視くらいでないと、命令とか面子とかがあるみたいだな。面倒臭い」
「また寮でしょ?美里ちゃん。その間、美味しいもの食べにどこか行かない?」
「そうねえ。いいわねえ」
「楽しそうで結構だねえ」
僕と直は苦笑した。美里も千穂さんも、この分なら心配なさそうだ。優維ちゃんに至っては、昼寝から目も覚まさなかったそうだ。大物になりそうだな。
「御崎さん」
呼ばれて、診察室へ入る。
「何の影響もありません。母子共に健康ですよ」
「……は?」
「母子?」
僕と美里は、理解するのに数秒かかった。
「え!?まさか!?」
「あの甘い物ばかり食べたくなったのは!?」
「おめでとうございます」
僕達は、無言でハイタッチを交わした。
「ああ、でも――」
医師が笑顔を引っ込めるのに、ドキッとした。
「はい?」
「甘い物ばかり摂っていると栄養的に問題になります。気を付けて下さい」
「……はい」
僕と美里は、神妙な顔で返事をした。
次に呼ばれた直達は、出て来ると、笑った。
「2人目だってえ。予定は7月だってさあ」
「あら。うちと同じじゃない」
「まあ!」
「お互い同時期か。よろしく、先輩」
僕達は笑い合い、おめでとうを言い合い、歩き出した。
まだ、瓦礫の撤去も終わっていないし、補修の必要な建物や道路もあるし、ケガをした人もいる。でも、どうやら平穏にクリスマスも年越しも迎えられそうだ。
青い空は、高く澄んでいた。
10
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
【R18】やがて犯される病
開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。
女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。
女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。
※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。
内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。
また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。
更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる