656 / 1,046
ナンパと美魔女(1)ナンパ男の受難
しおりを挟む
ラブホテルから、昏睡状態の若い男性を救急搬送。
「昏睡強盗とかじゃないのか」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「臓器を抜き取られてるわけでもないんだよねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「衰弱して、意識が戻らないだけだよ。皆病気とかでもなく、至って元気で、ラブホテルに入ってチェックアウトの時間になっても出て来ないので行ってみたら、倒れているのを発見というわけらしい」
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「無くなったもの、ケガや注射の痕、そういうものはないんですか?」
「無いんだよ。ついでに、ベッドも衣服も乱れが無し」
「飲み物の形で摂取したとかはどうですかねえ?」
「その様子もなし。血液検査では、異常という異常も無いそうだよ。
というわけだから、調査に行って来て欲しい」
「わかりました」
「ラブホテルかあ。行った事ないなあ」
「僕は、事件で3回行ったな。殺人と無理心中と逃走中の被疑者が潜伏したのが分かった時と」
「色気の欠片もない用事だねえ」
「そうだな」
あははと笑って、僕と直は患者が搬送された病院に向かった。
日本一の歓楽街と言われる繁華街の近くにあるその救急指定病院は、急性アルコール中毒、ケンカによる搬送が多い。それに、ひったくりやレイプなどの犯罪時のけが。
ラブホテルから昏睡した患者――と聞いて、まず思ったのは、昏睡強盗。次に薬物中毒、アルコール、自殺か心中未遂。最後に、都市伝説にある臓器を取られているというのが本当に起こったのか、と。
「でも、どれも違うようでしてね。ただただ、衰弱して眠り続けているんですよ」
医師はそう言った。
「何か病気というわけでも無さそうだし、外傷もない。3人の共通点は、若い男性であるという事、同じホテルから搬送されて来たという事」
「同じホテルですか」
「ええ」
医師は、あるホテル名を言い、僕はそれを手帳にメモする。
持ち物を見ても、薬物をはじめ、おかしなものはない。それどころか、至って元気だったようだ。
調書によると、最初の被害者立石信一郎は大学生で、バイト終わりに飲みに来て、別れた後でこうなったらしい。
次の松波ひかるも大学生で、友人達とナンパ目的で来て、友人2人は2人組の女の子と成立してあぶれてしまい、その後、『美女発見!突撃します!』というメールと顔がよくわからない女性の写真が送られて来たのを最後に、こうなったらしい。
スマホにそのメールと写真が残っていた。
「20代――いや、30?」
「どうも、年齢が分かりにくいねえ、遠いし」
その上、間に通行人も入っている。彼女に話を聴きたいものだが。
昨日の被害者は八村 薫という社会人で、仕事終わりに同僚と飲んで、通りの端で別れたという。
「繁華街に、行ってみるか。目撃者がいればいいが」
「そうだねえ」
「見つかるのかなあ。相当かかるかもな。面倒臭い」
見つかる事を、祈った。
「昏睡強盗とかじゃないのか」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「臓器を抜き取られてるわけでもないんだよねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「衰弱して、意識が戻らないだけだよ。皆病気とかでもなく、至って元気で、ラブホテルに入ってチェックアウトの時間になっても出て来ないので行ってみたら、倒れているのを発見というわけらしい」
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「無くなったもの、ケガや注射の痕、そういうものはないんですか?」
「無いんだよ。ついでに、ベッドも衣服も乱れが無し」
「飲み物の形で摂取したとかはどうですかねえ?」
「その様子もなし。血液検査では、異常という異常も無いそうだよ。
というわけだから、調査に行って来て欲しい」
「わかりました」
「ラブホテルかあ。行った事ないなあ」
「僕は、事件で3回行ったな。殺人と無理心中と逃走中の被疑者が潜伏したのが分かった時と」
「色気の欠片もない用事だねえ」
「そうだな」
あははと笑って、僕と直は患者が搬送された病院に向かった。
日本一の歓楽街と言われる繁華街の近くにあるその救急指定病院は、急性アルコール中毒、ケンカによる搬送が多い。それに、ひったくりやレイプなどの犯罪時のけが。
ラブホテルから昏睡した患者――と聞いて、まず思ったのは、昏睡強盗。次に薬物中毒、アルコール、自殺か心中未遂。最後に、都市伝説にある臓器を取られているというのが本当に起こったのか、と。
「でも、どれも違うようでしてね。ただただ、衰弱して眠り続けているんですよ」
医師はそう言った。
「何か病気というわけでも無さそうだし、外傷もない。3人の共通点は、若い男性であるという事、同じホテルから搬送されて来たという事」
「同じホテルですか」
「ええ」
医師は、あるホテル名を言い、僕はそれを手帳にメモする。
持ち物を見ても、薬物をはじめ、おかしなものはない。それどころか、至って元気だったようだ。
調書によると、最初の被害者立石信一郎は大学生で、バイト終わりに飲みに来て、別れた後でこうなったらしい。
次の松波ひかるも大学生で、友人達とナンパ目的で来て、友人2人は2人組の女の子と成立してあぶれてしまい、その後、『美女発見!突撃します!』というメールと顔がよくわからない女性の写真が送られて来たのを最後に、こうなったらしい。
スマホにそのメールと写真が残っていた。
「20代――いや、30?」
「どうも、年齢が分かりにくいねえ、遠いし」
その上、間に通行人も入っている。彼女に話を聴きたいものだが。
昨日の被害者は八村 薫という社会人で、仕事終わりに同僚と飲んで、通りの端で別れたという。
「繁華街に、行ってみるか。目撃者がいればいいが」
「そうだねえ」
「見つかるのかなあ。相当かかるかもな。面倒臭い」
見つかる事を、祈った。
10
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
【R18】やがて犯される病
開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。
女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。
女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。
※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。
内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。
また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。
更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる