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あ・そ・ぼ(2)助けて!
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ホラー映画は見に行った事があるし、怖いと言われる遊園地のお化け屋敷にも行った。しかしいずれも、中学生のデートレベルで、旅行なんて初めてだ。お互いに付き合った経験もないので――オカルト以外に興味もなかったのだ――、ホテルにチェックインしたら急に意識しだして、カチンコチンもいいところだ。
「シティホテルにしてはいいわね!安いし!シティの割に郊外だからかしら!」
「そうだね!そうだ、今度はディズニーランドに行かないか?ホーンテッドマンションとか、本物が出るらしいしね!」
「いいわね!」
「あはははは!」
初々しいと言っておこう。
それでも慣れて来たのか、カメラ映像を見始めてからは普通通りになり、「顔に見える」「何か聞こえる」などと仲良くチェックしていた。一緒に当の子供達も鑑賞しているとは知らず。
どのくらいした頃か、室内の温度が異様に高くなっているのに気付いた。暖房などつけていないのに。
「おかしいな」
言いながら冷房をつけた方がいいのかと立ち上がると、誰もいないバスルームから、シャワーの音がし始めた。
「え?」
期待と少しの恐怖に、2人共半笑いになった。
「これは、あれ?」
「あれかな?」
ビデオを急いで手に取る。
と、テレビが勝手にチャンネルを変えて行き、子供向けのアニメになった。そして、電気が消え、ベッドの上で撥ねるような音がして、布団が動き、枕が飛び交う。
「ええっ!?」
「こ、これはあれだけど、思ってたよりあれだな」
「どうする?」
冷蔵庫が開き、持って来たお菓子の袋が浮く。
「やばいかも」
流石の2人も、SOSの決断をした。
その電話が入って来たのは、そろそろ帰ろうかと席を立った瞬間だった。
「はい、御崎――」
『助けて助けて助けて!!』
エリカの声に、耳がキーンとした。
「どうかしたのかねえ?エリカの声がここまでしたようだけど」
「エリカが助けてって……耳が……」
「代わったよう。エリカ?」
『助けて下さい!出ましたあ!!』
向こうも美保さんに代わっていた。
どうにか美保さんから現状を聞き出し、僕と直は、すぐにホテルに向かう事になった。
沢井さんも来るというので、車に乗って3人で向かう。
「聞いた事はあるねえ。子供7人が亡くなった養護施設」
「出るのか?」
「子供の笑い声とか、『あそぼ』って誘って来る声がしたり、走り回る子供の影が見えたりするらしいねえ」
直が言う。
「そこ、その前はハンセン病の隔離施設になっていた時期もあったらしいな。美保が行くとか言うから、どんな所かと思ってちょっと調べたら出てたよ」
沢井さんも言う。
「面倒臭い予感が大当たりだな」
溜め息が3つ重なった。
ホテルに飛び込んだら、もう霊はおらず、2人が青い顔で座り込んでいた。
「今はいないねえ」
「子供だからな。門限とか、寝る時間が決まっているんだろ」
「御崎係長、冗談じゃなくてですね」
「ああ。冗談じゃないぞ。
エリカ。さんざん言ったよな。面白半分で肝試しをしてたらいつか痛い目に遭うぞって」
「う、そうね」
「美保さん。嬉々として何してるんですか」
「す、すみません。ちょっと、その、自主トレ?」
「ほお。熱心な事で。だったら調査依頼が来てるので、1週間ほど泊まり込んでレポートまとめてもらおうかな。死にそうになったらその前に何とか急いで助けには向かうから」
「済みませんでした!ただの肝試しです!」
「ごめんなさい!うかつでした!」
2人は深々と頭を下げた。
「しょうがないなあ。今後は気を付けて。美保さん、せめて塩くらいは持って行きましょうよ」
「はい」
「お札も、持たせてあげるからねえ?」
「はい。本当に、すみませんでした」
2人はひとしきり反省した様子だったので良しとして、今後の事に話は移った。
「そこ、どうにかした方がいいのかな」
沢井さんが訊く。
「そうですね。今後もこういう事が起こったらまずいですし、エスカレートしたらもっとまずいし」
「まずは視に行くかねえ」
早速、現場へ行く事にした。
「シティホテルにしてはいいわね!安いし!シティの割に郊外だからかしら!」
「そうだね!そうだ、今度はディズニーランドに行かないか?ホーンテッドマンションとか、本物が出るらしいしね!」
「いいわね!」
「あはははは!」
初々しいと言っておこう。
それでも慣れて来たのか、カメラ映像を見始めてからは普通通りになり、「顔に見える」「何か聞こえる」などと仲良くチェックしていた。一緒に当の子供達も鑑賞しているとは知らず。
どのくらいした頃か、室内の温度が異様に高くなっているのに気付いた。暖房などつけていないのに。
「おかしいな」
言いながら冷房をつけた方がいいのかと立ち上がると、誰もいないバスルームから、シャワーの音がし始めた。
「え?」
期待と少しの恐怖に、2人共半笑いになった。
「これは、あれ?」
「あれかな?」
ビデオを急いで手に取る。
と、テレビが勝手にチャンネルを変えて行き、子供向けのアニメになった。そして、電気が消え、ベッドの上で撥ねるような音がして、布団が動き、枕が飛び交う。
「ええっ!?」
「こ、これはあれだけど、思ってたよりあれだな」
「どうする?」
冷蔵庫が開き、持って来たお菓子の袋が浮く。
「やばいかも」
流石の2人も、SOSの決断をした。
その電話が入って来たのは、そろそろ帰ろうかと席を立った瞬間だった。
「はい、御崎――」
『助けて助けて助けて!!』
エリカの声に、耳がキーンとした。
「どうかしたのかねえ?エリカの声がここまでしたようだけど」
「エリカが助けてって……耳が……」
「代わったよう。エリカ?」
『助けて下さい!出ましたあ!!』
向こうも美保さんに代わっていた。
どうにか美保さんから現状を聞き出し、僕と直は、すぐにホテルに向かう事になった。
沢井さんも来るというので、車に乗って3人で向かう。
「聞いた事はあるねえ。子供7人が亡くなった養護施設」
「出るのか?」
「子供の笑い声とか、『あそぼ』って誘って来る声がしたり、走り回る子供の影が見えたりするらしいねえ」
直が言う。
「そこ、その前はハンセン病の隔離施設になっていた時期もあったらしいな。美保が行くとか言うから、どんな所かと思ってちょっと調べたら出てたよ」
沢井さんも言う。
「面倒臭い予感が大当たりだな」
溜め息が3つ重なった。
ホテルに飛び込んだら、もう霊はおらず、2人が青い顔で座り込んでいた。
「今はいないねえ」
「子供だからな。門限とか、寝る時間が決まっているんだろ」
「御崎係長、冗談じゃなくてですね」
「ああ。冗談じゃないぞ。
エリカ。さんざん言ったよな。面白半分で肝試しをしてたらいつか痛い目に遭うぞって」
「う、そうね」
「美保さん。嬉々として何してるんですか」
「す、すみません。ちょっと、その、自主トレ?」
「ほお。熱心な事で。だったら調査依頼が来てるので、1週間ほど泊まり込んでレポートまとめてもらおうかな。死にそうになったらその前に何とか急いで助けには向かうから」
「済みませんでした!ただの肝試しです!」
「ごめんなさい!うかつでした!」
2人は深々と頭を下げた。
「しょうがないなあ。今後は気を付けて。美保さん、せめて塩くらいは持って行きましょうよ」
「はい」
「お札も、持たせてあげるからねえ?」
「はい。本当に、すみませんでした」
2人はひとしきり反省した様子だったので良しとして、今後の事に話は移った。
「そこ、どうにかした方がいいのかな」
沢井さんが訊く。
「そうですね。今後もこういう事が起こったらまずいですし、エスカレートしたらもっとまずいし」
「まずは視に行くかねえ」
早速、現場へ行く事にした。
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