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被殺人計画(2)結婚御呪
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神様は前日に自宅に呼んで報告とお祝いの宴会をし、家族、京香さん一家、津山先生、蜂谷、美里の家族、事務所の人、エリカ達や智史達、僕の仕事関係の同僚や同期など、絞り込んだのに凄い人数になった。どこから知ったのか、祝電や花も、首相や芸能人達などから届いた。
レストランを借り切ったのだが、ここからどうやって持って帰ればいいのか、今から僕は悩んでいる。
予想通りにエリカと美保さんは意気投合して、どうやら付き合う様子だし、倉阪は20年後の娘を想像して泣き出すし、なかなか愉快な集まりになって来た。
そんな中、また新たな花が届いた。
「誰からかねえ」
戸惑ったような、面白そうな顔の店員が持って来た花束に、気付いた人が怪訝な顔をした。
小ぶりな花束には白と黒のリボンが巻かれ、添えられたカードには
結婚御呪
仁川久雄
と書かれていた。
「誤字かしら?嫌がらせならわかりにくいわね、中途半端で」
美里は鼻でフンと笑った。
「これはどんな人が注文を?」
訊くと、店員はオドオドとしながら答えた。
「サラリーマンみたいな方です。昨日の夕方、フラッとした感じで来店して来られて。カードはその場で書かれて、お支払いは現金で」
沢井さんはカードをハンカチで包んで内ポケットに入れながら、
「店内にカメラはありますか」
と訊いた。
「え、はい。3日で頭に戻りますけど」
「では、消さないように残しておいて下さい。捜査員を向かわせますので。
怜君。これは預かって行くね。指紋を採取するから」
笑顔で怒っている。
「幽霊からのメッセージカードとは。流石怜だねえ」
「お祝返し、どこに送ればいいのかな」
冗談を言っていると、楓太郎がポツリと言った。
「実は、怜先輩。その人の加入してた保険会社ってうちで、ぼくがそれを事務処理したんですよ」
高校、大学を通しての後輩だ。
「それで、その後から、変なんです。毎晩寝ている時に重苦しくなるし、残業したら、何かが落ちる音が窓の外からするって皆言うんです」
「バカだなあ、楓太郎。どうしてすぐに言わないんだ?部屋を視に行ってやるから」
「会社も行くからねえ」
「はい。ありがとうございます!」
楓太郎はほっとしたように僕と直に笑いかけた。
「遺族の嫌がらせじゃなく、本人?」
エリカと美保さんが嬉しそうだ。
「その可能性があるな」
「でも、余裕やん。流石やなあ」
智史が笑う。大学の時の友人で、今は実家のある滋賀県で弁護士をしている。
「まあ、力的には大したことがないしねえ」
「愉快ではないから、このままでは終わらせないがな。ちゃあんと、お返しはしないとな」
「そうよ。祝い返しは2倍返しよね」
「……怖え。ドSトリオってホンマやん」
居合わせた皆、笑顔で静かにやる気をみなぎらせていた。
しかし、それだけでは終わらなかったのだ。
自殺を結論付ける目撃証言をした人達が次々と、幽霊が出るようになったと訴えて来たのだった。
「全く。面倒臭い事になって来たな」
僕は、その力を別の時に別の方向に向ければ良かったのにと、溜め息をついた。
レストランを借り切ったのだが、ここからどうやって持って帰ればいいのか、今から僕は悩んでいる。
予想通りにエリカと美保さんは意気投合して、どうやら付き合う様子だし、倉阪は20年後の娘を想像して泣き出すし、なかなか愉快な集まりになって来た。
そんな中、また新たな花が届いた。
「誰からかねえ」
戸惑ったような、面白そうな顔の店員が持って来た花束に、気付いた人が怪訝な顔をした。
小ぶりな花束には白と黒のリボンが巻かれ、添えられたカードには
結婚御呪
仁川久雄
と書かれていた。
「誤字かしら?嫌がらせならわかりにくいわね、中途半端で」
美里は鼻でフンと笑った。
「これはどんな人が注文を?」
訊くと、店員はオドオドとしながら答えた。
「サラリーマンみたいな方です。昨日の夕方、フラッとした感じで来店して来られて。カードはその場で書かれて、お支払いは現金で」
沢井さんはカードをハンカチで包んで内ポケットに入れながら、
「店内にカメラはありますか」
と訊いた。
「え、はい。3日で頭に戻りますけど」
「では、消さないように残しておいて下さい。捜査員を向かわせますので。
怜君。これは預かって行くね。指紋を採取するから」
笑顔で怒っている。
「幽霊からのメッセージカードとは。流石怜だねえ」
「お祝返し、どこに送ればいいのかな」
冗談を言っていると、楓太郎がポツリと言った。
「実は、怜先輩。その人の加入してた保険会社ってうちで、ぼくがそれを事務処理したんですよ」
高校、大学を通しての後輩だ。
「それで、その後から、変なんです。毎晩寝ている時に重苦しくなるし、残業したら、何かが落ちる音が窓の外からするって皆言うんです」
「バカだなあ、楓太郎。どうしてすぐに言わないんだ?部屋を視に行ってやるから」
「会社も行くからねえ」
「はい。ありがとうございます!」
楓太郎はほっとしたように僕と直に笑いかけた。
「遺族の嫌がらせじゃなく、本人?」
エリカと美保さんが嬉しそうだ。
「その可能性があるな」
「でも、余裕やん。流石やなあ」
智史が笑う。大学の時の友人で、今は実家のある滋賀県で弁護士をしている。
「まあ、力的には大したことがないしねえ」
「愉快ではないから、このままでは終わらせないがな。ちゃあんと、お返しはしないとな」
「そうよ。祝い返しは2倍返しよね」
「……怖え。ドSトリオってホンマやん」
居合わせた皆、笑顔で静かにやる気をみなぎらせていた。
しかし、それだけでは終わらなかったのだ。
自殺を結論付ける目撃証言をした人達が次々と、幽霊が出るようになったと訴えて来たのだった。
「全く。面倒臭い事になって来たな」
僕は、その力を別の時に別の方向に向ければ良かったのにと、溜め息をついた。
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