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消失(2)異次元
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赤い橋、トンネル、お寺。カメラ映像の景色と同じだ。
「ここか」
すると直が、嫌そうに辺りを見回す。
「凄いねえ、ここ」
「ああ。よくもまあ、これだけマイナスのものが集まったなあ」
僕も、今すぐ帰りたい。
ここではないどこかに行きたい、もう嫌、消えたい、あいつが消えればいいのに。そんな思念がいっぱいだ。
「行ってみるか」
「そうだねえ」
ビデオのグループ同様、橋を渡り始める。コンクリート製のもので、幅は3メートル、長さは20メートルほどか。
渡り始めて下を見ると、細い川幅の河原に、たくさんのお墓が並んでいた。供養塔には『無縁仏』と彫ってあるのが見えた。
「うわあ」
「怜、何、ここ」
「無縁仏と、何か武士っぽいのもいるぞ。昔からの、無縁仏を祀る場所だったんだな」
「その割にいい加減だったんだねえ。全然成仏してないよう」
僕と直は、その墓と霊がぎっしりひしめいた河原に、身震いがしてきそうだった。
怨嗟の声は、橋を進めば進むほどに大きくなっていく。正直もう進みたくない。
だが、祓うのは調査が終わってからでないと、手掛かりも消えてしまうかも知れないので、このまま進んでみるしかない。
仕方なく、2人で進んで行く。
橋の半ばまで進んだ頃、トンネルの方で、重く昏い気配がした。同時に、空間の歪みのようなものが発生する。ビデオで陽炎かと彼らが言っていた、それだ。
「出たな。ちょっとした神レベルだな」
「おお。黒くなって来たねえ」
「大きくなってきたぞ」
「近付いて来たよう。どうする?」
「逃げてみるか。その上で、捕まえよう」
「りょうかーい」
「じゃあ、行くか」
くるっと反転し、走り出す。
チラリと振り返ると、黒いそれは、猛然と接近して来ていた。
「来た来た」
「じゃあ、そろそろいくかねえ」
直は札をスタンバイし、タイミングをはかる。
「よっ」
札はピタリとそれを捕まえ、足を留め、そこに縫い付けた。
「次元の穴か。どこにつながってるんだろうな。ちょっと、沖縄の大山貝塚にも似てるな」
僕と直は、気を付けながらしげしげと観察した。
「ううん。これをどうにかするのは、2人じゃ危ないな。応援がいるな」
「協会にも応援を頼まないとだめなくらいだよねえ」
「徳川さんに大至急連絡しよう」
僕はスマホを取り出しながら、湧き上がって来た予感に溜め息をついた。
「どうも、面倒臭い予感がするぞ、新年早々」
「嬉しくない予感だねえ」
直は苦笑を浮かべた。
すぐに辺り一帯は封鎖され、霊能師と陰陽課員が緊急招集されて来た。
「これ……何なの!?」
ベテラン、強い霊能師ほど、顔色を変える。
「沖縄の大山貝塚っていう所にちょっと似てる。どこかの危ない次元につながってるとか言われていて、ユタの修行場だったんだけど、おかしくなる人が続出で、危険すぎて修行に使えなくなった所なんだが」
「何それ!」
京香さんは後ずさりした。
「ヤバイにも程があるだろ。
それにしても、いきなりこんなのができるのか?」
蜂谷は眉を寄せ、ほかのベテランの中には、うずくまる人も、吐く人も出だす有様だ。
「そこのお寺、先月初めに廃寺になったらしいんだよねえ。後継者問題で。それで、下の無縁仏と昔の落ち武者が入り込んで、変に化学変化みたいなのを起こしたのかも知れないって、怜と言ってたんだよねえ」
言うと、皆、ちらりと下を見、目を逸らす。
「全っ然、成仏できてないってどういう事?」
「よっぽど生臭坊主で、無縁仏は金にならないから放って置いたんだろ」
蜂谷が辛辣に言う。
「まあ、そういうわけだから。まずは安定化させて、消えた4人の気配が探れないか探ってみて、見付かったらサルベージ。だめなら、また改めてトライする」
「大丈夫なの?」
「……これでも警察官だからね。救助しないと」
「気を付けなさいよ、全く」
「はい」
師匠である京香さんの言葉だ。素直に返事をして、僕達はそれに取り掛かる事にした。
「さあて、逝こうか」
黒いそれが、ぶるりと震えたように見えた。
「ここか」
すると直が、嫌そうに辺りを見回す。
「凄いねえ、ここ」
「ああ。よくもまあ、これだけマイナスのものが集まったなあ」
僕も、今すぐ帰りたい。
ここではないどこかに行きたい、もう嫌、消えたい、あいつが消えればいいのに。そんな思念がいっぱいだ。
「行ってみるか」
「そうだねえ」
ビデオのグループ同様、橋を渡り始める。コンクリート製のもので、幅は3メートル、長さは20メートルほどか。
渡り始めて下を見ると、細い川幅の河原に、たくさんのお墓が並んでいた。供養塔には『無縁仏』と彫ってあるのが見えた。
「うわあ」
「怜、何、ここ」
「無縁仏と、何か武士っぽいのもいるぞ。昔からの、無縁仏を祀る場所だったんだな」
「その割にいい加減だったんだねえ。全然成仏してないよう」
僕と直は、その墓と霊がぎっしりひしめいた河原に、身震いがしてきそうだった。
怨嗟の声は、橋を進めば進むほどに大きくなっていく。正直もう進みたくない。
だが、祓うのは調査が終わってからでないと、手掛かりも消えてしまうかも知れないので、このまま進んでみるしかない。
仕方なく、2人で進んで行く。
橋の半ばまで進んだ頃、トンネルの方で、重く昏い気配がした。同時に、空間の歪みのようなものが発生する。ビデオで陽炎かと彼らが言っていた、それだ。
「出たな。ちょっとした神レベルだな」
「おお。黒くなって来たねえ」
「大きくなってきたぞ」
「近付いて来たよう。どうする?」
「逃げてみるか。その上で、捕まえよう」
「りょうかーい」
「じゃあ、行くか」
くるっと反転し、走り出す。
チラリと振り返ると、黒いそれは、猛然と接近して来ていた。
「来た来た」
「じゃあ、そろそろいくかねえ」
直は札をスタンバイし、タイミングをはかる。
「よっ」
札はピタリとそれを捕まえ、足を留め、そこに縫い付けた。
「次元の穴か。どこにつながってるんだろうな。ちょっと、沖縄の大山貝塚にも似てるな」
僕と直は、気を付けながらしげしげと観察した。
「ううん。これをどうにかするのは、2人じゃ危ないな。応援がいるな」
「協会にも応援を頼まないとだめなくらいだよねえ」
「徳川さんに大至急連絡しよう」
僕はスマホを取り出しながら、湧き上がって来た予感に溜め息をついた。
「どうも、面倒臭い予感がするぞ、新年早々」
「嬉しくない予感だねえ」
直は苦笑を浮かべた。
すぐに辺り一帯は封鎖され、霊能師と陰陽課員が緊急招集されて来た。
「これ……何なの!?」
ベテラン、強い霊能師ほど、顔色を変える。
「沖縄の大山貝塚っていう所にちょっと似てる。どこかの危ない次元につながってるとか言われていて、ユタの修行場だったんだけど、おかしくなる人が続出で、危険すぎて修行に使えなくなった所なんだが」
「何それ!」
京香さんは後ずさりした。
「ヤバイにも程があるだろ。
それにしても、いきなりこんなのができるのか?」
蜂谷は眉を寄せ、ほかのベテランの中には、うずくまる人も、吐く人も出だす有様だ。
「そこのお寺、先月初めに廃寺になったらしいんだよねえ。後継者問題で。それで、下の無縁仏と昔の落ち武者が入り込んで、変に化学変化みたいなのを起こしたのかも知れないって、怜と言ってたんだよねえ」
言うと、皆、ちらりと下を見、目を逸らす。
「全っ然、成仏できてないってどういう事?」
「よっぽど生臭坊主で、無縁仏は金にならないから放って置いたんだろ」
蜂谷が辛辣に言う。
「まあ、そういうわけだから。まずは安定化させて、消えた4人の気配が探れないか探ってみて、見付かったらサルベージ。だめなら、また改めてトライする」
「大丈夫なの?」
「……これでも警察官だからね。救助しないと」
「気を付けなさいよ、全く」
「はい」
師匠である京香さんの言葉だ。素直に返事をして、僕達はそれに取り掛かる事にした。
「さあて、逝こうか」
黒いそれが、ぶるりと震えたように見えた。
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