体質が変わったので

JUN

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誕生(2)友達

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 シーソー、滑り台、ブランコ。子供達4人は仲良く遊んだ。
 その子も今のところは一緒に遊ぶだけで、悪い事をしそうにはない。
 そうなったら、即、祓うだけだが。
 時計を見ると、1時間程が経っていた。そろそろだろうか。
「そろそろ帰ろうか」
「あと1回滑り台滑ったら!」
「よし、1回だぞ」
 子供達は順番に並んで、滑り台のはしごを登って行く。
「お、感心、感心。康介、お兄ちゃんだな」
 康介は3つ上だけあって、小さい子達が危なくないように、上で、滑るタイミングを指示している。
「えへへ」
 寺から小さく聞こえていた読経の声が途切れ、しばらくすると、家族連れらしきグループが寺の奥から現れた。そして、子供達を見ると、足を止めた。微笑ましくて、というより、怪訝そうな面持ちである。
「そんな……偶然でしょう?」
「でも、赤いワンピースも、靴も、白いレースのソックスも……」
 ヒソヒソと言い合っている。
 僕は康介に、
「ちょっと頼むぞ」
と言い置いて、そのグループに近付き、声をかけた。
「すみません。警視庁陰陽課の御崎と申します。今はプライベートでして、手帳は持っていないのですが。
 失礼ですが、あの女の子に心当たりがありますか?」
 動揺していた彼らの1人が、代表するように言った。
「今、墓参りして来たところなんですが……その……4年前、生まれる前に死んでしまった娘に供えた服と靴と靴下があの子のと全く同じで……ワンピースは手作りなのに……」
 子供達は輪になって、話をしている。
「ああ。あの子は、霊ですよ」
「え!?」
 母親らしき女性は、そろそろと近付いて行った。
「もう、帰るね」
「帰るの?もっと遊びたい。1人だと寂しいもん」
 敬達3人は困ったような顔をした。
「でも、お母さん達が待ってるから」
「どこ?」
「病院よ。お父さんのお友達に赤ちゃんが生まれたから、お祝いに来たのよ」
「そう言えば、名前を聞いてなかったね。ぼく、康介」
「ぼくは敬です!」
「私は舞よ」
「私……ないの。赤ちゃんって呼ばれるの」
 女の子は泣きそうな顔になった。
「お父さんもお母さんもお祖母ちゃんも来てくれるけど、誰も名前を呼んでくれないの。それがとても寂しいの」
 敬達3人は、戸惑ったように顔を見合わせた。
 間違いない。この子は、水子だ。
 そして墓参り帰りの一家は、ハッと口元を押さえた。わかったのだろう。我が子だと。
「いいな。私も欲しい。お父さんやお母さん、それに、名前。
 ねえ、寂しいの。帰らないで。一緒に行こう」
「だめ。怜と滑り台をあと1回って約束したの。ごめんね」
「だめ。帰さない」
 女の子の目が吊り上がり、敬達は1歩下がった。
「だめだな。この子達は家に帰るんだから、もう一緒には遊べない」
 間に入る。
「どうして。ずるい。私だって欲しい。私だけの名前」
 僕は、一家を見た。
「君のお父さん、お母さん、お祖母さんだ。
 名前を」
 母親は泣き、父親は涙ながらに言った。
「風花。つけようと決めてた名前だ。僕達の娘の名前・・・」
「風花!」
 風花と呼ばれた女の子は、一家を見つめ、
「風花……私の名前。風花!」
と言うなり、嬉しそうに笑って、母親に飛びついて行った。
「お母さん!お父さん!」
「風花!」
 子供達3人はしばしポカンとしていたが、それでも、風花が嬉しそうなので、よしとしたらしい。
 僕は、一家に近付いた。
「風花ちゃんは、逝かないといけない。わかりますね」
 お祖母さんと父親は、泣きながらも頷いた。母親は泣いて強く風花ちゃんを抱きしめて頭を振る。
「嫌、嫌、嫌」
「……風花ちゃんのためになりません。送ってあげるのが、生きている者の務めです」
 母親は、父親に肩を抱かれ、風花ちゃんから離れた。
「ありがとう。風花。とっても嬉しい」
「お父さんと呼ばれて、とても嬉しいよ」
「お母さんもよ。産んであげられなくてごめんなさい……!」
「風花。お盆には待ってるからね。それに祖母ちゃんは、近いうちにそっちに行くから。その時は、遊ぼうね」
「うん、お祖母ちゃん!」
「じゃあ、逝こうか」
 そっと浄力を当てると、キラキラと光って崩れ、立ち上って行く。
 それを、一家はじっと見送っていた。
 子供達3人もそれを見上げていたが、敬が僕を見て言った。
「風花ちゃん?どこ行ったの?」
「先に、お家に帰ったのよ」
「おばちゃん、風花ちゃんのお母さん?」
「そう。風花と遊んでくれてありがとうね」
「うん!バイバイって言っておいてね!」
「ええ」
 一家は敬につられたようににっこりと笑った。
「怜、帰ろ?もう1回、優維ちゃん見る!」
 それに、舞ちゃんが慌てる。
「優維ちゃんもかわいいけど、舞もかわいいもん!敬君と結婚するのは舞だもん!」
「う?うん?」
「敬、やるな」
「康君?えっと、よくわかんないけど、ありがと!」
 大人達は、噴き出す寸前だ。
「じゃあ、失礼します」
「バイバーイ」
 僕達は公園を後にした。


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