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一夜の夢(3)夢のあと
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真っ黒で、人なのかどうかもわからないようなのもいれば、焼けた人もいる。
どうして なんで私が
こんなはずじゃなかった
まだ死にたくない
誰かに渡すくらいなら 一緒にここで
これは夢だ こんなのは嘘だ
色々な呟き、叫びが聞こえる。
彼らの姿は様々でも、僕達生者を羨み、妬む視線は共通だ。
何で俺達が
どうして私達がこんな目に
OL2人組のそばに立って、周りの霊に言う。
「火事の原因はわかりました。巻き込まれた皆さんは気の毒だったと思います。いつまでもここにいても、悲しいだけですよ。もう、逝きませんか」
「終わりにした方がいいねえ」
足を止める者もいれば、変わらない者もいる。
そんな彼らに向けて浄力を放つと、ほとんどの者が光になって、消えて行った。
「残ったか」
真っ黒になった1体だけが、実体化してとどまっていた。
ドコニイッタ
ホクト ワタサナイ
ワタシノモノ
カエセ
姫野と呼ばれていた女らしい。
「もう、彼もあなたも死んでいる。彼はここにはいない」
カエセ ワタシノモノ
ソコノオンナ オマエラカ
「聞いてないねえ」
直が言う。
「仕方ないな」
刀を出し、OL2人組に向かって行こうとする姫野を斬った。
ホクト ホクト ホクト
姫野は嘆きの声を上げながら、切られたところからさらさらと崩れ、消えて行った。
やがて店内には静寂が満ちる。
「嫉妬かあ。怖いなあ」
「まあ、これでもう、ここで眠りこけて発見されるって事件も起きないねえ」
ふと、OL2人組が静かだなあと思って目をやると、2人共、失神していた。
「これまでの人達は入店からの記憶が無いらしいが、この2人はどうかな」
「もしかしたら、襲われた記憶が、残るかもねえ」
「忘れてた方が幸せかもなあ」
「全ては一夜の夢、だねえ」
僕と直は、失神しているOL2人組に、声をかけた。
報告書を書きながら、しみじみと思う。
「姫野も勝手だけど、ホクトってホストの方も、随分だったんだな」
「売上トップというのは、それだけ指名客もあるって事で、愛憎渦巻く中心点だったって事だしねえ」
「さんざん貢がせて、指名させて、利用価値がなくなったら出禁ってなあ。店側も酷いな」
「やり方ってものがあるだろうにねえ」
店長とホクトの嗤い方が思い出される。
OL2人組は、これまでに発見された女性達と同じく、入店以降の記憶が無かった。トラウマになってもいけないし、それはそれでよかったのだろう。
だが。
「ホストの仕事って、僕には無理だな」
「まあ、ねえ。怜が愛想よく笑って機嫌を取ってる所が、全く想像できないねえ」
直が言う。
「面倒臭い」
揃って言って、苦笑した。
どうして なんで私が
こんなはずじゃなかった
まだ死にたくない
誰かに渡すくらいなら 一緒にここで
これは夢だ こんなのは嘘だ
色々な呟き、叫びが聞こえる。
彼らの姿は様々でも、僕達生者を羨み、妬む視線は共通だ。
何で俺達が
どうして私達がこんな目に
OL2人組のそばに立って、周りの霊に言う。
「火事の原因はわかりました。巻き込まれた皆さんは気の毒だったと思います。いつまでもここにいても、悲しいだけですよ。もう、逝きませんか」
「終わりにした方がいいねえ」
足を止める者もいれば、変わらない者もいる。
そんな彼らに向けて浄力を放つと、ほとんどの者が光になって、消えて行った。
「残ったか」
真っ黒になった1体だけが、実体化してとどまっていた。
ドコニイッタ
ホクト ワタサナイ
ワタシノモノ
カエセ
姫野と呼ばれていた女らしい。
「もう、彼もあなたも死んでいる。彼はここにはいない」
カエセ ワタシノモノ
ソコノオンナ オマエラカ
「聞いてないねえ」
直が言う。
「仕方ないな」
刀を出し、OL2人組に向かって行こうとする姫野を斬った。
ホクト ホクト ホクト
姫野は嘆きの声を上げながら、切られたところからさらさらと崩れ、消えて行った。
やがて店内には静寂が満ちる。
「嫉妬かあ。怖いなあ」
「まあ、これでもう、ここで眠りこけて発見されるって事件も起きないねえ」
ふと、OL2人組が静かだなあと思って目をやると、2人共、失神していた。
「これまでの人達は入店からの記憶が無いらしいが、この2人はどうかな」
「もしかしたら、襲われた記憶が、残るかもねえ」
「忘れてた方が幸せかもなあ」
「全ては一夜の夢、だねえ」
僕と直は、失神しているOL2人組に、声をかけた。
報告書を書きながら、しみじみと思う。
「姫野も勝手だけど、ホクトってホストの方も、随分だったんだな」
「売上トップというのは、それだけ指名客もあるって事で、愛憎渦巻く中心点だったって事だしねえ」
「さんざん貢がせて、指名させて、利用価値がなくなったら出禁ってなあ。店側も酷いな」
「やり方ってものがあるだろうにねえ」
店長とホクトの嗤い方が思い出される。
OL2人組は、これまでに発見された女性達と同じく、入店以降の記憶が無かった。トラウマになってもいけないし、それはそれでよかったのだろう。
だが。
「ホストの仕事って、僕には無理だな」
「まあ、ねえ。怜が愛想よく笑って機嫌を取ってる所が、全く想像できないねえ」
直が言う。
「面倒臭い」
揃って言って、苦笑した。
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