591 / 1,046
一夜の夢(1)客引き
しおりを挟む
繁華街。夜とは思えないほどの人通りの中、僕と直はなるべく目立たないようにして、立っていた。
「陰陽課にも、女性が必要かもな、直」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「でも、能力ありきだからねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「協会に、女性霊能師の協力を頼むべきだったかな」
「これで出なかったらねえ。女装案は却下だよねえ」
「当然だ」
ひそひそと話しながらも、アンテナは張り続けている。
この繁華街で連続して、ぐったりした女性が保護されるという事態が発生した。放っておくと、置き引きやレイプやそれ以上の被害に遭ってしまいかねない。
しかし、目を醒ました女性達は皆、眠り込んでしまう程に泥酔しているわけでもなかったし、薬物を摂取しているという事もなかった。そして一様に、同じ事を言った。
客引きに連れられてホストクラブへ行った。それからはよく覚えていないが、次にハッキリした時には、お巡りさんが顔を覗き込んでいた、と。
無視するには、発生件数も多いし、やはり危険だ。深刻な犯罪を誘発しかねない。
しかし見付かった場所が場所なので、これは陰陽課に相談するべきかと持ち込まれ、調査に出向いたのだった。
だが、ホストクラブの客引きである。ウロチョロしてみても、男に寄っては来ない。客引きしている所を見付けるしかなかった。
歩いても、押し付けられるのはガールズバーなどの割引券ばかりだ。
「割引券なら、スーパーの割引券の方がいい」
「あはは。
あ。ちょっと目を離したら新しいチラシだよぉ」
違法ピンクチラシというやつだ。
いたちごっこだと担当の課は言っていた。
と、フッと気配がした。
「裏だな」
僕と直は、一本隣の道に急いだ。
「いた。あれか」
テカッと光ったような生地のスーツを着たほぼ金髪の若い青年が、若いOLらしき2人組と向かい合っていた。
「店も近いし、是非!」
愛想良く笑っているが、どこか上っ面だけで、目は笑っていない。
「ええー、どうしようかなあ」
「行っちゃう?」
OL2人組は、そこそこの人気ブランドの物に身を固めた、派手でもなく地味でもない、よくいる感じのタイプだった。
「行こうよ。ね?」
青年が再度勧め、OL2人組がその気になったところで、一緒に歩き出した。
「じゃあ、こっちも」
「行こうかねえ」
僕と直も、こっそりと後を付け始めたのだった。
「陰陽課にも、女性が必要かもな、直」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「でも、能力ありきだからねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「協会に、女性霊能師の協力を頼むべきだったかな」
「これで出なかったらねえ。女装案は却下だよねえ」
「当然だ」
ひそひそと話しながらも、アンテナは張り続けている。
この繁華街で連続して、ぐったりした女性が保護されるという事態が発生した。放っておくと、置き引きやレイプやそれ以上の被害に遭ってしまいかねない。
しかし、目を醒ました女性達は皆、眠り込んでしまう程に泥酔しているわけでもなかったし、薬物を摂取しているという事もなかった。そして一様に、同じ事を言った。
客引きに連れられてホストクラブへ行った。それからはよく覚えていないが、次にハッキリした時には、お巡りさんが顔を覗き込んでいた、と。
無視するには、発生件数も多いし、やはり危険だ。深刻な犯罪を誘発しかねない。
しかし見付かった場所が場所なので、これは陰陽課に相談するべきかと持ち込まれ、調査に出向いたのだった。
だが、ホストクラブの客引きである。ウロチョロしてみても、男に寄っては来ない。客引きしている所を見付けるしかなかった。
歩いても、押し付けられるのはガールズバーなどの割引券ばかりだ。
「割引券なら、スーパーの割引券の方がいい」
「あはは。
あ。ちょっと目を離したら新しいチラシだよぉ」
違法ピンクチラシというやつだ。
いたちごっこだと担当の課は言っていた。
と、フッと気配がした。
「裏だな」
僕と直は、一本隣の道に急いだ。
「いた。あれか」
テカッと光ったような生地のスーツを着たほぼ金髪の若い青年が、若いOLらしき2人組と向かい合っていた。
「店も近いし、是非!」
愛想良く笑っているが、どこか上っ面だけで、目は笑っていない。
「ええー、どうしようかなあ」
「行っちゃう?」
OL2人組は、そこそこの人気ブランドの物に身を固めた、派手でもなく地味でもない、よくいる感じのタイプだった。
「行こうよ。ね?」
青年が再度勧め、OL2人組がその気になったところで、一緒に歩き出した。
「じゃあ、こっちも」
「行こうかねえ」
僕と直も、こっそりと後を付け始めたのだった。
10
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる