544 / 1,046
仕事熱心な男(1)真夜中の残業
しおりを挟む
その町工場は住宅街の外れにあり、大きくも無いが、四方を壁で囲んで騒音対策はしていた。
それでも音は洩れるが、隣はコンビニと学校で、裏は別の工場、前は道路なので、そう苦情は出ない。
だが、苦情が入った。それは裏の工場からで、
「自分の所は深夜工場を閉めているのに、音が響いてうるさいと苦情が入った。見に行ってみたら、お宅の工場からだった。深夜の操業はやめてもらいたい」
と。
しかし工場長は、
「そんな筈はない」
の一点張りで、埒が明かない。
そこで、交番の警察官に来てもらって工場を見ていたら、確かに音がしていた。
それでも納得していない工場長を説き伏せて工場に入ってみると、不思議な事にピタリと音は止み、そればかりか、工場の鍵は今の今まで閉まっていたので入れるはずも無いし、機械を動かしていた人も消え失せていたのだという。
そこで彼らは思い出した。
先月プレス機の事故で亡くなった工員がいたが、今聞こえていた音は、まさにプレス機の音ではないのか、と。
そう言って、徳川さんはお茶を飲んだ。
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「ああ、ニュースでやってましたね。プレス機に挟まれて亡くなったとか」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「労働基準法違反の疑いもあるとかワイドショーで言ってたそうですねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「そっちは捜査中らしいけど、難航してるみたいだよ。
そういうわけだから、よろしく頼むね」
「はい、わかりました」
「行ってきますねえ」
僕と直は、早速出掛ける事にした。
それでも音は洩れるが、隣はコンビニと学校で、裏は別の工場、前は道路なので、そう苦情は出ない。
だが、苦情が入った。それは裏の工場からで、
「自分の所は深夜工場を閉めているのに、音が響いてうるさいと苦情が入った。見に行ってみたら、お宅の工場からだった。深夜の操業はやめてもらいたい」
と。
しかし工場長は、
「そんな筈はない」
の一点張りで、埒が明かない。
そこで、交番の警察官に来てもらって工場を見ていたら、確かに音がしていた。
それでも納得していない工場長を説き伏せて工場に入ってみると、不思議な事にピタリと音は止み、そればかりか、工場の鍵は今の今まで閉まっていたので入れるはずも無いし、機械を動かしていた人も消え失せていたのだという。
そこで彼らは思い出した。
先月プレス機の事故で亡くなった工員がいたが、今聞こえていた音は、まさにプレス機の音ではないのか、と。
そう言って、徳川さんはお茶を飲んだ。
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「ああ、ニュースでやってましたね。プレス機に挟まれて亡くなったとか」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「労働基準法違反の疑いもあるとかワイドショーで言ってたそうですねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「そっちは捜査中らしいけど、難航してるみたいだよ。
そういうわけだから、よろしく頼むね」
「はい、わかりました」
「行ってきますねえ」
僕と直は、早速出掛ける事にした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
199
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる