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濡れた手(2)ユーチューバー
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最近は、小学生の将来の夢の上位にユーチューバーがきているらしい。そのくらい、ユーチューブというものは浸透し、ユーチューバーという人達も多いという事だ。
中でも心霊系のものは、心霊スポットに入ったり、廃墟に入り込んだりと無茶もする。
この千葉県の海岸も、そんなユーチューバー達を集める心霊スポットのひとつである。
「ああ、いるな」
直と現地へ行くと、ハンディカメラを持ったグループが、撮影をしていた。
「廃墟なら不法侵入だと言えるんだが、ここは、危ないと注意しかできないからなあ」
「そうだねえ。本当に、わかってるのかねえ、ここがどういう所か」
僕と直は、短く嘆息した。
ここまで僕と直を案内してくれた地元警察署の警察官も、溜め息をつく。
「危ない所だと言えばこういう人達が集まってくるし、言わなければ普通の人達が危ないし。本当にどうしたものか……」
「砂浜の方でも、色々とあるんですよね」
隣にある砂浜は、遊泳禁止にはなっているが、散歩する人などはちらほらといた。
「はい。霊らしきものの目撃例も、足を掴まれたとかいう訴えもあります。足を掴まれて溺れかけたり溺れて亡くなったりが続いたので今は遊泳禁止としていますが」
「ここは潮の関係で、遺体が流れ着く事が多いとか聞いたんですけどねえ」
「はい。昔から、この辺りはそう言われています。戦時中は、沖で沈められた船に乗っていた人の遺体が流れ着いて、浜と岩場が遺体で埋め尽くされた事もあったそうで」
想像を絶する光景だろう。
話しながら岩場に向かって歩いていると、ザワリと気配が湧き上がった。
「来た」
僕と直が走り出すのに少し遅れて、岩場の彼らが声を上げる。
「うわあ!何か足を掴んだぁ!濡れた手!」
1人が海に落ちそうになりながら、岩にしがみついている。それを、カメラはそのままに、他のメンバーが引き上げようとしながらも、腰の引けた様子で、
「何かいる!!」
などと言っていた。
「助けろよお前ら!」
落ちそうな1人は、必死の形相だ。
「どいて」
僕と直は近付いて行き、その彼にしがみついて海に引きずり込もうとしている霊達に、浄力を浴びせた。
それで、ぱあっと霊は消えて行く。
「早く、引き上げた方がいいねえ」
言われて、彼らは慌てて仲間を引き上げる。
「あの」
「気を付けて。心霊スポットを甘く見てたら、死ぬぞ」
僕と直は踵を返して案内役の警察官の所に戻り、砂浜の方へ移動した。
「で、出たんですか」
「はい。一応は、祓いました」
「とは言え、また寄って来るかもですねえ」
彼はゴクリと唾を飲み込み、岩場を振り返った。
ユーチューバーらしきグループは、カメラをこちらに向けて、そこに突っ立っていた。
砂浜は、一見静かだった。
散歩する地元の人、歩くカップル、走る運動部員らしき中高生。
「今は何も無いな。また夜になってからだな、直」
「そうだねえ。夜に出直そうかねえ」
「じゃあ、一旦引き上げましょうか」
僕達3人は、車の方へと歩き始めた。
その背中を窺うように見ている目がある事は、僕も直も気づいていた。
中でも心霊系のものは、心霊スポットに入ったり、廃墟に入り込んだりと無茶もする。
この千葉県の海岸も、そんなユーチューバー達を集める心霊スポットのひとつである。
「ああ、いるな」
直と現地へ行くと、ハンディカメラを持ったグループが、撮影をしていた。
「廃墟なら不法侵入だと言えるんだが、ここは、危ないと注意しかできないからなあ」
「そうだねえ。本当に、わかってるのかねえ、ここがどういう所か」
僕と直は、短く嘆息した。
ここまで僕と直を案内してくれた地元警察署の警察官も、溜め息をつく。
「危ない所だと言えばこういう人達が集まってくるし、言わなければ普通の人達が危ないし。本当にどうしたものか……」
「砂浜の方でも、色々とあるんですよね」
隣にある砂浜は、遊泳禁止にはなっているが、散歩する人などはちらほらといた。
「はい。霊らしきものの目撃例も、足を掴まれたとかいう訴えもあります。足を掴まれて溺れかけたり溺れて亡くなったりが続いたので今は遊泳禁止としていますが」
「ここは潮の関係で、遺体が流れ着く事が多いとか聞いたんですけどねえ」
「はい。昔から、この辺りはそう言われています。戦時中は、沖で沈められた船に乗っていた人の遺体が流れ着いて、浜と岩場が遺体で埋め尽くされた事もあったそうで」
想像を絶する光景だろう。
話しながら岩場に向かって歩いていると、ザワリと気配が湧き上がった。
「来た」
僕と直が走り出すのに少し遅れて、岩場の彼らが声を上げる。
「うわあ!何か足を掴んだぁ!濡れた手!」
1人が海に落ちそうになりながら、岩にしがみついている。それを、カメラはそのままに、他のメンバーが引き上げようとしながらも、腰の引けた様子で、
「何かいる!!」
などと言っていた。
「助けろよお前ら!」
落ちそうな1人は、必死の形相だ。
「どいて」
僕と直は近付いて行き、その彼にしがみついて海に引きずり込もうとしている霊達に、浄力を浴びせた。
それで、ぱあっと霊は消えて行く。
「早く、引き上げた方がいいねえ」
言われて、彼らは慌てて仲間を引き上げる。
「あの」
「気を付けて。心霊スポットを甘く見てたら、死ぬぞ」
僕と直は踵を返して案内役の警察官の所に戻り、砂浜の方へ移動した。
「で、出たんですか」
「はい。一応は、祓いました」
「とは言え、また寄って来るかもですねえ」
彼はゴクリと唾を飲み込み、岩場を振り返った。
ユーチューバーらしきグループは、カメラをこちらに向けて、そこに突っ立っていた。
砂浜は、一見静かだった。
散歩する地元の人、歩くカップル、走る運動部員らしき中高生。
「今は何も無いな。また夜になってからだな、直」
「そうだねえ。夜に出直そうかねえ」
「じゃあ、一旦引き上げましょうか」
僕達3人は、車の方へと歩き始めた。
その背中を窺うように見ている目がある事は、僕も直も気づいていた。
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