528 / 1,046
110番(2)過去の事件
しおりを挟む
課長は、重い溜め息をついてから口を開いた。
「あのショッピングセンターは、地域の市場が集まったものでねえ。小売りの商店と開業医が1つのビルに入ってスーパーに対抗しようとしたものだったんですよ。
それでも閉店したのは客離れと駐車場の無い事が原因だけど、その客離れも、値段だけでなく、あの事件があったせいだろうなあ。
閉店の1年半ほど前ですが、凄く流行した『大迷宮の悪魔』っていうゲームが発売されたのをご存知ですか」
「名前だけは。発売初日の何時間も前から店の前に並んでまでゲームを買う人がいたとか、ニュースで見ました」
「確か、3まであったんじゃなかったですかねえ」
「はい。ここのホビーショップでもやっぱり近くの中高生が並びましてね。ここで事件が起きたんですよ。
前日の夕方から並んだ中学生、賀西拓也がゲームを買えたんですがね、センター内の階段で買えなかった子、東条基樹にゲームを奪われそうになったんですよ。それでもみ合った末に、賀西は階段から落ちて頭を打って死亡。東条は慌てて逃げ出して、やっぱり階段から落ちて死亡。被害者も被疑者もどちらも中学生で、どちらも死亡という事件でして。
それから、閉店後に走るような足音が聞こえるとか、階段で足を引っ張られるとか、逃げる人影が見えるとかいう噂が出始めたようで、ショッピングセンターの客足が徐々に遠のきましてね。閉店に追い込まれたというわけです。
何を隠そう、その頃私もあそこを担当区域にしていた交番にいましてね。現場に行きましたよ。たかがゲームで中学生が2人もと、やりきれない思いでしたねえ」
課長は再び、嘆息した。
「その子が、110番通報してるのかな。だとしても、警官が行方不明になるのはどうしてだろうな」
「その2人についても知りたいですねえ」
「今、資料を持って来させています」
課長が言った時、ダンボール箱を抱えた警官が近付いて来た。
賀西と東条は、同じ中学の同級生だった。取り立てて接点があったわけでもない。ただ、2人共ゲームが好きだったと友人達が証言していた。
そして問題のゲームだが、迷路を進んで行きながら、悪魔を倒し、仲間を増やして連携していく物語らしく、それ自体はよくあるゲームだと思うのだが、当時としては画期的な美しいアニメーションと人気声優を起用していた事が人気につながったのか、発売日前に店の前に並ぶ姿がニュースになったほどだ。3では、3日前から列ができたという。
「次の通報の時は僕達も行くとしても、1度は、外から視ておこうか」
「そうだねえ」
僕達は、そのショッピングセンターへ行ってみた。
表には看板が残っていて、『朝日町銀座ショッピングセンター』と書かれている。3階建てのビルになっていて、正面の入り口の他、左右には外階段が付いている。
そして店のバックヤードにあたる部分に窓があるが、その窓のガラスがかなり割れていた。
「かなり入り込んでるみたいだな、肝試しとか、集会とか」
「だねえ。でも、今は、霊の感じも無いねえ」
「駅からもそこそこ近いのに、どうして取り壊さないのかな」
「取り壊そうとしたら、請け負った工務店が倒産したり、けが人が出たりで、すっかり心霊スポットになってるらしいねえ」
「えらい典型的だな」
「うん、だよねえ」
話しながら外から視たが、今はただの廃墟だった。
「次の110番通報を待つしかないか。いつか分かればいいのに、面倒臭い」
しかし、次の通報は、意外と早く訪れた。
翌日、家に1歩入った所で連絡が入り、僕は玄関で回れ右をして飛び出す事になったのだった。
「あのショッピングセンターは、地域の市場が集まったものでねえ。小売りの商店と開業医が1つのビルに入ってスーパーに対抗しようとしたものだったんですよ。
それでも閉店したのは客離れと駐車場の無い事が原因だけど、その客離れも、値段だけでなく、あの事件があったせいだろうなあ。
閉店の1年半ほど前ですが、凄く流行した『大迷宮の悪魔』っていうゲームが発売されたのをご存知ですか」
「名前だけは。発売初日の何時間も前から店の前に並んでまでゲームを買う人がいたとか、ニュースで見ました」
「確か、3まであったんじゃなかったですかねえ」
「はい。ここのホビーショップでもやっぱり近くの中高生が並びましてね。ここで事件が起きたんですよ。
前日の夕方から並んだ中学生、賀西拓也がゲームを買えたんですがね、センター内の階段で買えなかった子、東条基樹にゲームを奪われそうになったんですよ。それでもみ合った末に、賀西は階段から落ちて頭を打って死亡。東条は慌てて逃げ出して、やっぱり階段から落ちて死亡。被害者も被疑者もどちらも中学生で、どちらも死亡という事件でして。
それから、閉店後に走るような足音が聞こえるとか、階段で足を引っ張られるとか、逃げる人影が見えるとかいう噂が出始めたようで、ショッピングセンターの客足が徐々に遠のきましてね。閉店に追い込まれたというわけです。
何を隠そう、その頃私もあそこを担当区域にしていた交番にいましてね。現場に行きましたよ。たかがゲームで中学生が2人もと、やりきれない思いでしたねえ」
課長は再び、嘆息した。
「その子が、110番通報してるのかな。だとしても、警官が行方不明になるのはどうしてだろうな」
「その2人についても知りたいですねえ」
「今、資料を持って来させています」
課長が言った時、ダンボール箱を抱えた警官が近付いて来た。
賀西と東条は、同じ中学の同級生だった。取り立てて接点があったわけでもない。ただ、2人共ゲームが好きだったと友人達が証言していた。
そして問題のゲームだが、迷路を進んで行きながら、悪魔を倒し、仲間を増やして連携していく物語らしく、それ自体はよくあるゲームだと思うのだが、当時としては画期的な美しいアニメーションと人気声優を起用していた事が人気につながったのか、発売日前に店の前に並ぶ姿がニュースになったほどだ。3では、3日前から列ができたという。
「次の通報の時は僕達も行くとしても、1度は、外から視ておこうか」
「そうだねえ」
僕達は、そのショッピングセンターへ行ってみた。
表には看板が残っていて、『朝日町銀座ショッピングセンター』と書かれている。3階建てのビルになっていて、正面の入り口の他、左右には外階段が付いている。
そして店のバックヤードにあたる部分に窓があるが、その窓のガラスがかなり割れていた。
「かなり入り込んでるみたいだな、肝試しとか、集会とか」
「だねえ。でも、今は、霊の感じも無いねえ」
「駅からもそこそこ近いのに、どうして取り壊さないのかな」
「取り壊そうとしたら、請け負った工務店が倒産したり、けが人が出たりで、すっかり心霊スポットになってるらしいねえ」
「えらい典型的だな」
「うん、だよねえ」
話しながら外から視たが、今はただの廃墟だった。
「次の110番通報を待つしかないか。いつか分かればいいのに、面倒臭い」
しかし、次の通報は、意外と早く訪れた。
翌日、家に1歩入った所で連絡が入り、僕は玄関で回れ右をして飛び出す事になったのだった。
10
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる