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陰陽課ブートキャンプ(1)新体制
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警視庁陰陽課。それは今年から増員もなされて新体制で活動する事になっており、部屋も広い部屋に変わった。仕事の内容が事件絡みや取り締まりが多くなることから警察庁が切り離しを断固拒んだが、陰陽庁創設という意見もあったくらいで、省庁の壁を超えて仕事が持ち込まれる事もあるというので、上階の静かな一角に部屋はある。
幹部の激励の言葉を受け取り、新しい部屋に飛び込んだ。
「うわあ。広くなったんですね、今度の部屋。
冷蔵庫にレンジに簡易キッチンがある!よし!」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった、霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「これは快適に過ごせそうだねえ。
あ。アオの鳥かごまであるよぉ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
直はアオをポケットから出して、机のそばの鳥かごへ移してやった。アオも止まり木に止まり、羽をブルッとさせて整えた。
「日の光も良く入るから、アオも気に入ってくれたかな」
徳川さんがアオに問いかけるように言うと、アオは「チッ!」と返事をして、上機嫌で羽をパタパタとさせた。
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。そして今日からは、僕と直の上司だ。
徳川さんを課長とし、課を3つの係に分け、1係の係長は僕、2係の係の係長は直が務める。そして3係の係長は、高校時代から顔見知りの沢井さんだ。
1係は自力で祓える人という事で、霊能師資格のある警察官が僕の他にあと2人いる。
2係は札などを使って補助・封印をしたり、調査に出掛けたりするので、直の他に霊能師資格のある警察官が4人いる。
3係は霊能関係の取り締まりなどを行うので、普通の警察官ばかりが沢井さんの他に4人いる。
補習は、何と言う事もなく無事に終わり、こうして仕事が始まったわけである。
「よろしく頼むよ」
「はい!」
僕達は新しい机の並ぶ部屋を見渡した。
他の課員は、各々の机周りやロッカーの整理をしていた。僕達も、それに加わる。
「さあ、皆。手早く片付けてくれよ。合宿に出発だからね」
ウキウキと徳川さんが言い、ある者はウキウキと、ある者は沈んだ顔で、返事をしたのだった。
時間をさかのぼる事10日。警察大学校を訪ねて来た徳川さんと沢井さん、僕と直は、陰陽課員となる人員の人事データを見ていた。
「霊能者でない人が半分か。全員、霊能師協会へ研修や見学は行ったんですよね」
訊くと、徳川さんが答えた。
「行った事は行ったよ。1係と2係については、最低ラインの合格はもらった」
「でも、どの程度かは気になるし、把握しておかないとなあ」
「そうだよねえ。ボクも、補助の仕方や程度を考えないと」
「うん。それで、組む相手を考えないとな。相性もあるし」
僕と直が言い合うと、徳川さんと沢井さんは頷いた。
「なるほどなあ」
「それに、取り締まる方でも、騙されないようにちゃんと見ておかないと心配です」
それで、徳川さんが決めた。
「よし。課を挙げて、合宿をしよう。どこか適当な所はないかな」
「大山貝塚はユタの修行場だったけど、凄すぎて今はユタも避けてるし、危なすぎる」
「樹海は手頃ではあるけど、ここも危ないと言えば危ないよねえ」
「ああ。おかしくなったやつもいたからなあ」
「廃墟とかは?」
沢井さんの提案に、手頃な霊のいる廃墟はあったかと考えてみる。
「あ、昨日テレビでやってたねえ。温泉地にある廃ホテル群。ネットでは、いろいろと心霊現象が起こるって言われてたよお?」
「そこにしよう。早速、調べて、協会にも相談して手続きをしておくよ。
楽しみだなあ」
徳川さんと沢井さんは心なしか遠足を前にしたような顔付きで、陰陽課ブートキャンプは決定したのだった。
幹部の激励の言葉を受け取り、新しい部屋に飛び込んだ。
「うわあ。広くなったんですね、今度の部屋。
冷蔵庫にレンジに簡易キッチンがある!よし!」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった、霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「これは快適に過ごせそうだねえ。
あ。アオの鳥かごまであるよぉ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
直はアオをポケットから出して、机のそばの鳥かごへ移してやった。アオも止まり木に止まり、羽をブルッとさせて整えた。
「日の光も良く入るから、アオも気に入ってくれたかな」
徳川さんがアオに問いかけるように言うと、アオは「チッ!」と返事をして、上機嫌で羽をパタパタとさせた。
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。そして今日からは、僕と直の上司だ。
徳川さんを課長とし、課を3つの係に分け、1係の係長は僕、2係の係の係長は直が務める。そして3係の係長は、高校時代から顔見知りの沢井さんだ。
1係は自力で祓える人という事で、霊能師資格のある警察官が僕の他にあと2人いる。
2係は札などを使って補助・封印をしたり、調査に出掛けたりするので、直の他に霊能師資格のある警察官が4人いる。
3係は霊能関係の取り締まりなどを行うので、普通の警察官ばかりが沢井さんの他に4人いる。
補習は、何と言う事もなく無事に終わり、こうして仕事が始まったわけである。
「よろしく頼むよ」
「はい!」
僕達は新しい机の並ぶ部屋を見渡した。
他の課員は、各々の机周りやロッカーの整理をしていた。僕達も、それに加わる。
「さあ、皆。手早く片付けてくれよ。合宿に出発だからね」
ウキウキと徳川さんが言い、ある者はウキウキと、ある者は沈んだ顔で、返事をしたのだった。
時間をさかのぼる事10日。警察大学校を訪ねて来た徳川さんと沢井さん、僕と直は、陰陽課員となる人員の人事データを見ていた。
「霊能者でない人が半分か。全員、霊能師協会へ研修や見学は行ったんですよね」
訊くと、徳川さんが答えた。
「行った事は行ったよ。1係と2係については、最低ラインの合格はもらった」
「でも、どの程度かは気になるし、把握しておかないとなあ」
「そうだよねえ。ボクも、補助の仕方や程度を考えないと」
「うん。それで、組む相手を考えないとな。相性もあるし」
僕と直が言い合うと、徳川さんと沢井さんは頷いた。
「なるほどなあ」
「それに、取り締まる方でも、騙されないようにちゃんと見ておかないと心配です」
それで、徳川さんが決めた。
「よし。課を挙げて、合宿をしよう。どこか適当な所はないかな」
「大山貝塚はユタの修行場だったけど、凄すぎて今はユタも避けてるし、危なすぎる」
「樹海は手頃ではあるけど、ここも危ないと言えば危ないよねえ」
「ああ。おかしくなったやつもいたからなあ」
「廃墟とかは?」
沢井さんの提案に、手頃な霊のいる廃墟はあったかと考えてみる。
「あ、昨日テレビでやってたねえ。温泉地にある廃ホテル群。ネットでは、いろいろと心霊現象が起こるって言われてたよお?」
「そこにしよう。早速、調べて、協会にも相談して手続きをしておくよ。
楽しみだなあ」
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