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JUN

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おにぎりじぞう(3)生霊と恩返し

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 道の端、崖のようになった所で、若い女性が1人落ちそうになっており、それをもう1人が震えて見ていた。
「動かないで!」
 言いながら近付き、兄と片方ずつ手首を掴んで引き上げる。
 青い顔をしていたが、ケガなどはなさそうだ。
 が、それがいた。足首に掴まるようにして、女性を崖下に引きずり落とそうとする、女性の生霊だ。
「いきなり、足元がすべったというか」
 言っていると、またグイッと生霊が足を引っ張る。
「きゃああ!」
 女性は悲鳴を上げて両手を大きく振り回した。
 その手から1眼レフの重そうなカメラがすっ飛ぶ。
「敬!!」
 カメラは敬目掛けて飛んで行った。
 間に合わない!風を――!
 だが、敬をスッと抱え込んで、カメラを叩き落としたモノがいた。さっきの、お地蔵様の所の霊だった。
「敬!?」
 冴子姉がすっ飛んで行く。
 僕は生霊に浄力を遠慮なく叩き込んだ。
「敬、大丈夫か!?」
 兄と僕も、敬の所にとんで行く。
 敬はキョトンとしながら、辺りをキョロキョロと見廻していた。
「あのね、今、誰かいたみたい。ギュッとして、カメラが横に飛んだの。それでね、ギュッの時、おにぎりの匂いがしたの。お地蔵様にあげた、じゃこのおにぎり」
 皆、僕に訊きたそうな顔を向ける。
「おにぎりのお礼だって、敬。
 ありがとうございました」
 僕は、霊に頭を下げた。兄も冴子姉も、僕の下げる先に向かって頭を下げる。
 霊は照れくさそうにしながら、笑って、広場へ戻って行った。
 僕は、女性達に向き直った。
「僕は霊能師の御崎と申します。今、あなたに生霊が憑いていました」
「――!?」
「祓いましたが、また、繰り返すと思います。あなたと同じくらいの年齢の女性です。早く、霊能師協会に相談に行く事をお勧めします。今日中にでも」
 2人はガタガタと震えながら、カメラを拾った。
「ぼく、大丈夫?ごめんね?怖かったね」
「ううん、大丈夫」
 敬はにこにことしている。
「あの、ありがとうございました。すぐに下山して、相談に行く事にします」
 そしてそう言って頭を下げながら、急ぎ足でロープウェイの駅を目指して行った。
「はああ。面倒臭い目に遭ったなあ」
 僕は溜め息をついた。
「怜、あの2人は大丈夫か?」
「今から行くって言ってたから、大丈夫だよ。弾き飛ばしたから、生霊もすぐには戻れないよ。ダメージが大きくて」
「そうか。それならいいが」
「行こう、ねえ」
 敬が言って、僕達は、ハイキングを再開したのだった。

 





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