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花壇(3)土の下
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その電話をかけて来た馬場さんは、どこか戸惑ったような声をしていた。
猫の声がどこからかするとマンション中で噂になっているらしく、霊能師に相談してみようかという話が持ち上がったそうだ。
『その声なんですが、何種類もあるらしくって』
「わかりました。とにかくそちらへ伺います」
僕と直はそう返事をして、すぐにマンションへ行った。
住民が数名、エントランスに立っていた。
「あ、御崎さん、町田さん」
馬場さんが声を上げ、ホッとした顔をする。
「猫の声が複数するとか」
「はい。野良猫かと思って探したりしたんですが、姿は全くで」
「この辺、猫がいなくなってるんですよ。それと関係してるんじゃないかって……ねえ」
「何か猫の祟りとか?」
ブルッと主婦達が体を震わせた。
「どのへんで聞こえたんですか」
「だいたい、花壇の近くです」
皆、花壇に注目した。
今日の不毛花壇は何も無く、そばのビニール袋に、抜かれたばかりの枯れたパセリが入っていた。
「パセリ?花壇に?」
「きっと、強ければとにかく何でもいいと思ったんじゃないかねえ」
「成程な」
その不毛花壇に猫が近付いて、土の上で丸くなったり、なあごおお、などと鳴いている。
しかも1匹や2匹じゃない。7匹もいる。
「……何ですかねえ、あれ」
「え、さあ……」
「何か、気持ち悪いわ……」
「マタタビでも誰かまいたのか?それで猫が集まって、苗も枯れるのか?」
言いながら、皆で花壇に近寄って行く。
「あ、管理人さん」
誰かが言ってそちらを向くと、中年の男が、じょうろ片手に立っていた。
「皆さん……」
「猫が急に集まって来てね。何かと思って。ねえ」
「本当にねえ」
住人達は言いながら、上手く僕、直、馬場さん、管理人さんの背後に回り、肩越しに花壇を覗き込む。
「ちょっと、ごめんねえ」
「ああ。もふもふ……」
抵抗しない猫達を、花壇から退ける。
「あ、マタタビだ」
馬場さんが、6センチ程の木の棒のような物を見付けた。
「それがマタタビですか」
しげしげと、僕と直はそれを眺めた。
管理人さんは固い表情で、言う。
「それを花壇に撒いたと……?」
「それで苗が全滅したんですかね」
住人が言い、別の住人は、
「猫の声も、これじゃない?マタタビで動けなくて、却って見つからなかったのよ」
と言う。
それに馬場さんは、首を傾げた。
「ん?マタタビに酔った猫の声は独特で、この前からの声とは違うような……」
管理人さんは笑った。
「誰がこんなイタズラをしたんだか。
皆さん、お騒がせしました。すぐに、対策をしますので」
安心したような顔の者も、おかしいんじゃないかという顔をした馬場さんのような者もいる。
が、僕と直は、それに気付いた。
「念のために、全員下がって下さい」
「え?」
馴染みのあるそれ――気配が強くなる。
住人は訝しみながらも花壇から距離を置き、ひとかたまりになった。
「来ます」
花壇の土が、下からぼこりと、持ち上げられた。
猫の声がどこからかするとマンション中で噂になっているらしく、霊能師に相談してみようかという話が持ち上がったそうだ。
『その声なんですが、何種類もあるらしくって』
「わかりました。とにかくそちらへ伺います」
僕と直はそう返事をして、すぐにマンションへ行った。
住民が数名、エントランスに立っていた。
「あ、御崎さん、町田さん」
馬場さんが声を上げ、ホッとした顔をする。
「猫の声が複数するとか」
「はい。野良猫かと思って探したりしたんですが、姿は全くで」
「この辺、猫がいなくなってるんですよ。それと関係してるんじゃないかって……ねえ」
「何か猫の祟りとか?」
ブルッと主婦達が体を震わせた。
「どのへんで聞こえたんですか」
「だいたい、花壇の近くです」
皆、花壇に注目した。
今日の不毛花壇は何も無く、そばのビニール袋に、抜かれたばかりの枯れたパセリが入っていた。
「パセリ?花壇に?」
「きっと、強ければとにかく何でもいいと思ったんじゃないかねえ」
「成程な」
その不毛花壇に猫が近付いて、土の上で丸くなったり、なあごおお、などと鳴いている。
しかも1匹や2匹じゃない。7匹もいる。
「……何ですかねえ、あれ」
「え、さあ……」
「何か、気持ち悪いわ……」
「マタタビでも誰かまいたのか?それで猫が集まって、苗も枯れるのか?」
言いながら、皆で花壇に近寄って行く。
「あ、管理人さん」
誰かが言ってそちらを向くと、中年の男が、じょうろ片手に立っていた。
「皆さん……」
「猫が急に集まって来てね。何かと思って。ねえ」
「本当にねえ」
住人達は言いながら、上手く僕、直、馬場さん、管理人さんの背後に回り、肩越しに花壇を覗き込む。
「ちょっと、ごめんねえ」
「ああ。もふもふ……」
抵抗しない猫達を、花壇から退ける。
「あ、マタタビだ」
馬場さんが、6センチ程の木の棒のような物を見付けた。
「それがマタタビですか」
しげしげと、僕と直はそれを眺めた。
管理人さんは固い表情で、言う。
「それを花壇に撒いたと……?」
「それで苗が全滅したんですかね」
住人が言い、別の住人は、
「猫の声も、これじゃない?マタタビで動けなくて、却って見つからなかったのよ」
と言う。
それに馬場さんは、首を傾げた。
「ん?マタタビに酔った猫の声は独特で、この前からの声とは違うような……」
管理人さんは笑った。
「誰がこんなイタズラをしたんだか。
皆さん、お騒がせしました。すぐに、対策をしますので」
安心したような顔の者も、おかしいんじゃないかという顔をした馬場さんのような者もいる。
が、僕と直は、それに気付いた。
「念のために、全員下がって下さい」
「え?」
馴染みのあるそれ――気配が強くなる。
住人は訝しみながらも花壇から距離を置き、ひとかたまりになった。
「来ます」
花壇の土が、下からぼこりと、持ち上げられた。
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