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チューニング(2)不定愁訴
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今日も、チューニングに挑戦だ。
ザザ・・・ザ・ザザザ・・・ええ・・ザ・・・
しばらく弄っても、その程度だ。
「また、明日だな」
安岡は、布団にもぐり込んだ。
楓太郎は、安岡の顔を見て首を傾げた。
「顔色、悪くない?」
安岡は頭を掻きながらちょっと笑った。
「ああ……何か、疲れが溜まってるのかなあ。食欲が無いし、夜中、何か胸が苦しくてぐっすり寝られないんだよなあ。爺さんは心筋梗塞で死んだし、親父も心臓肥大だし、心配だから、病院行って来ようかな」
「心臓の家系かあ」
たちまち、皆で深刻な顔になる。
「俺は糖尿とコレステロールだよ」
「ウチなんてハゲだぜ。父方も母方も、どっちも皆だから」
「ああ……それは、逃げようがないな……」
同情の視線がそいつの頭に向く。
「今からやっとけよ、効きそうなシャンプーとか」
楓太郎は安岡に、言っておいた。
「もしおかしな事があったらすぐに言えって、うちの先輩が言ってたから。夜でもいいからね」
「ああ。ありがとう」
安岡は、ちょっと笑った。
近くの病院で検査を受けた。
栄養の偏りは自覚しているし、血管年齢が年金年齢だったとしても驚かない。そう、安岡は思っていた。
「健康ですよ。特に異常はありません」
そう医師に言われて、安心もしたが、拍子抜けした。
「そうですか。
じゃあ、苦しいのは……?」
「環境が変わったストレスとか、寝具のせいかな。重いとか、沈み過ぎるとか」
「寝具かあ。わかりました。ちょっと、変えてみます」
安岡はそう言って、診察室を出た。
「寝具か」
確かに、引っ越しを機に、部屋が広くなったのでベッドに変えたのだ。それに伴って寝具も変わった。
「今夜は、前の布団で寝てみよう」
すっかり解決したような気になって、安岡は家に戻った。
夕食は、きつねうどんと巻き寿司。そして、入浴をしてしっかりと温まる。
最近まで使っていた布団をフローリングの上に敷き、枕元にはラベンダーの芳香剤。そして、「お休み前に」といううたい文句のハーブティーをカップに一杯。
ハーブティーを啜りながら、今日も日課になったチューニングにチャレンジする。
ザザザ・・ザ・ザザ・・・ザ・・お・ねえ・・・ザザ・・・
「おねえ?」
昨日よりましになっているが、まだ、だめだ。
「おねえ、なあ」
テレビに出ている色んなおねえタレントを思い浮かべ、安岡は、
「おねえの夢を見そう」
と独り言を呟いて、布団に入った。
夜中の事だった。
「う、うう……」
安岡はいつもの苦しさでボンヤリと目が覚めた。
暗くて寒い部屋で、スッポリと布団をかぶった状態で、目を閉じたまま寝ている。
気道が塞がれるような苦しさだ。
ああ。心臓じゃなくて、気管支かもな。咳はでないから喘息じゃあないのかな。アレルギーとかかな。壁紙とかが原因の。
そう思っているうちに、いつものように何となく苦しさが遠のいて行って、うつらうつらとし始めた。
ザザ・・・ザ・ザザザ・・・ええ・・ザ・・・
しばらく弄っても、その程度だ。
「また、明日だな」
安岡は、布団にもぐり込んだ。
楓太郎は、安岡の顔を見て首を傾げた。
「顔色、悪くない?」
安岡は頭を掻きながらちょっと笑った。
「ああ……何か、疲れが溜まってるのかなあ。食欲が無いし、夜中、何か胸が苦しくてぐっすり寝られないんだよなあ。爺さんは心筋梗塞で死んだし、親父も心臓肥大だし、心配だから、病院行って来ようかな」
「心臓の家系かあ」
たちまち、皆で深刻な顔になる。
「俺は糖尿とコレステロールだよ」
「ウチなんてハゲだぜ。父方も母方も、どっちも皆だから」
「ああ……それは、逃げようがないな……」
同情の視線がそいつの頭に向く。
「今からやっとけよ、効きそうなシャンプーとか」
楓太郎は安岡に、言っておいた。
「もしおかしな事があったらすぐに言えって、うちの先輩が言ってたから。夜でもいいからね」
「ああ。ありがとう」
安岡は、ちょっと笑った。
近くの病院で検査を受けた。
栄養の偏りは自覚しているし、血管年齢が年金年齢だったとしても驚かない。そう、安岡は思っていた。
「健康ですよ。特に異常はありません」
そう医師に言われて、安心もしたが、拍子抜けした。
「そうですか。
じゃあ、苦しいのは……?」
「環境が変わったストレスとか、寝具のせいかな。重いとか、沈み過ぎるとか」
「寝具かあ。わかりました。ちょっと、変えてみます」
安岡はそう言って、診察室を出た。
「寝具か」
確かに、引っ越しを機に、部屋が広くなったのでベッドに変えたのだ。それに伴って寝具も変わった。
「今夜は、前の布団で寝てみよう」
すっかり解決したような気になって、安岡は家に戻った。
夕食は、きつねうどんと巻き寿司。そして、入浴をしてしっかりと温まる。
最近まで使っていた布団をフローリングの上に敷き、枕元にはラベンダーの芳香剤。そして、「お休み前に」といううたい文句のハーブティーをカップに一杯。
ハーブティーを啜りながら、今日も日課になったチューニングにチャレンジする。
ザザザ・・ザ・ザザ・・・ザ・・お・ねえ・・・ザザ・・・
「おねえ?」
昨日よりましになっているが、まだ、だめだ。
「おねえ、なあ」
テレビに出ている色んなおねえタレントを思い浮かべ、安岡は、
「おねえの夢を見そう」
と独り言を呟いて、布団に入った。
夜中の事だった。
「う、うう……」
安岡はいつもの苦しさでボンヤリと目が覚めた。
暗くて寒い部屋で、スッポリと布団をかぶった状態で、目を閉じたまま寝ている。
気道が塞がれるような苦しさだ。
ああ。心臓じゃなくて、気管支かもな。咳はでないから喘息じゃあないのかな。アレルギーとかかな。壁紙とかが原因の。
そう思っているうちに、いつものように何となく苦しさが遠のいて行って、うつらうつらとし始めた。
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