体質が変わったので

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デスマスク(3)花火大会

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 それが消えた事で境界は消え、僕達はポツンと空き地の真ん中に立っていた。
 兵藤さんはビクビクとしていたが、人形が躍りかかってきた直後に失神したと言いくるめる。兵藤さんも、その方が納得できるのか、すぐに信じた。
 そして戻って写真を確認すると、3人共、普通の証明写真に戻っていた。
「あの空き地だけど、元は大きな家があったらしいねえ。そこの子供は体が弱くて、ほどんど他の子と遊んだりできずに家で寝ていたらしいけど、そのままある日、火事で一家全滅だって」
 直がどこから調べたのか、そんな事情を訊き込んで来た。
「そうか。いつも羨みながら見てたんだろうな」
 僕と直は、しんみりとしながら、あの子の冥福を祈った。

 家に戻ると、よたよたと玄関に出て来た敬が僕の足に取り付いて、
「ええーん、ええーん」
と見上げる。
「ただいま。お出迎えしてくれたのか?」
「ああう」
「花火に行きたいのか?遅くなったかな。ごめんな」
「あう!」
 一緒に待っていた隣の康介も、負けじとくっついてくる。
「怜君!直君も!花火!」
「ん、わかった。皆は準備できてるのか?」
「大丈夫よ」
「行こうか」
 兄と冴子姉が出て来て、皆で会場へ向かった。
 綿菓子、フランクフルト、りんごあめ、チョコバナナ――。たくさんの屋台がずらりと並ぶ。
「おおおう」
 子供2人の目が輝いている。
「敬は食べられないからなあ。かき氷の蜜のかかってない所にしような」
「あう!」
「康介は何がいい?」
「焼き鳥!」
「渋いねえ。流石は京香さんの子。将来が見える様だねえ」
 各々それを食べさせながら敬と康介を見ていると、兄が目を細める。
「兄弟みたいに仲がいいなあ」
 確かに、敬と康介は兄弟みたいに仲が良い。康介も自分がお兄ちゃんと思っているのか、2人で遊んでいる時やおやつの時などに、なにかと面倒を見てやりたがったりするのだ。
 今も、敬は振動で光る腕輪をはめた腕を振って康介に見せ、康介は光る剣を振って敬に見せている。
「仲の良い幼馴染か」
 反射的に、人形で友達を作っていたあの子を思い出す。
 直も同じだったらしく、
「あの子にもこんな相手がいたら良かったのにねえ」
と小さく呟く。
「敬と康介はその点良かったな。それに、僕も。兄ちゃんはいるし、直もいるし」
「えへへ。ボクもだねえ」
 兄はそんな僕達4人を眺めて、口元を緩めている。
 と、ひゅるるるる……と音がして、ドーンと、音と振動が響いて来た。
 花火が上がり始めたらしく、周りの見物人達が一方方向を向く。
 敬と康介も何事かと一瞬身構えたが、すぐに夜空にそれを見付けて、歓声を上げた。
「花火?」
「そう」
「あああ!おん!おん!」
「そうだな、凄いなあ」
 次々に咲いては散っていく。それを、敬と康介は手をつないで、口を開け、目を輝かせて見ていた。
 花火は消えてしまうが、この記憶は残るだろう。それが、いつか寂しい時や苦しい時に、助けになればいい。
「怜君、直君。お家でできる?」
「打ち上げ花火は、資格や届け出や場所が必要だからな。ちょっと無理だな」
「そっかあ」
「だから、特別な花火だから皆で見るんだよ」
「そうかあ!皆で見たら楽しいね!それと、美味しいね!」
 これには笑ってしまったが、間違ってはいない。
「お、連発だねえ」
 ドドドドドドーン、バリバリバリバリ。
「僕はしだれが好きだなあ」
「ボクは大きいのかねえ」
「兄ちゃんと冴子姉は?」
「3重のやつかな」
「私はドーンと一発大きいやつよ」
 ううむ、個性が出るな。
「ぼく、ロケット!ロケットのが好き!」
 康介が目を輝かせる。絵の出る、あれだ。子供はやっぱり、こういうのだろうな。
「ロケットか。成程」
「ええーん、ええーん!」
 敬も、笑顔で主張して手を伸ばして抱けと言って来る。
「丸いやつか?ニコちゃんマークかな」
 膝に抱き上げて座らせてやりながら、話しかける。
 元々、花火は、鎮魂の為に上げられたものだそうだ。随分と騒がしい鎮魂だが、それも悪くない。
 僕達は並んで、花火を見上げていた。




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