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黒の陰陽師(3)最強の札使い
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晴明は、洋菓子もお気に召したようだった。
「ほっほう。これは、また」
マドレーヌやクッキーなどの焼き菓子が好みのようだ。
「チチチッ」
疲れ果てた直を気遣うように、アオがテーブルの上でクッキーをくちばしで直の方へ突いて滑らせ、「食べろ」と言う。
「ありがとうねえ、アオぉ」
「チチッ」
そんな心温まるメルヘンな光景に晴明は目を細めた。
「直、糖分補給しとけよ。直の好きな抹茶とココアとシナモンの3種類だぞ」
「うん。ありがとうねえ、怜」
「アオも食べるか。おいで」
「チチッ」
アオは僕のところに寄って来て、クッキーを嬉々として齧り始めた。
「目撃情報ですが、今のところはありません。ただ、雑霊を取り込んだ痕は、少しずつ移動しています。取り込んだ場所から移動して休眠するらしくて、居所はまだ不明との事です」
僕が報告を伝えると、晴明は頷いて、紅茶を啜った。
「隠形の腕は一流か。そこは苦手で良かったものを」
「でも、アメリカを狙ってるにしても、海辺からどうするつもりなんだろうねえ?泳いで?歩く?飛ぶ?まさか飛行機とか船とかかねえ?」
「前に日本に攻めてきたやつは、海上を飛んで来たよな」
「じゃあ、それかねえ」
「そんな事があったのか?」
僕と直は、その件について話した。ちょうど一年前の事だな。
「日本の守りも、考えないといかんなあ」
「神様は、そういう人間の引いた国境とかにはあんまり関与できないようで、その件についても向こうの神は手を貸していたらしいからアウトだと、そっちの世界で吊るし上げたとか言ってましたよ」
ああ。照姉のスッキリした顔が思い出される。
「神ではないような神のような、式神ならだめか」
「グレイゾーンですかね。
あ。十二神将も時々遊びに来るんですよ。今度一緒に飲み会に来ませんか」
「なんとまあ、ありがたくも恐ろしい誘いだなあ」
晴明は愉快そうにあっはっはっはと笑った。
「アオ、アオ。かわいいなあ。それに、直が大好きなのだな」
「チチッ」
晴明が言うと、アオは「当然だ」と言わんばかりに胸を張り、晴明に耳を掻かれて気持ちよさそうに目をつぶった。
「直よ。せっかくの眷属なのだ。目を共有する方が便利だぞ」
それは便利だろう。ただし、慣れるまではちょっと酔うぞ。
「確かにねえ。それは思ってました。あと、ちゃんと会話できたらいいなあって」
直が乗り気だ。
「では、後でその術を教えよう」
「ありがとうございます!」
「チチチッ!!」
揃って嬉しそうだ。
そして、張り切ってまた、訓練を再開したのだった。
事態が動いたのは、翌日の事だった。
「目撃情報が出ました!」
職員が飛び込んで来る。
「山中で探索中の霊能者が、軍服の男と黒い霊体との融合したようなものを発見しました。周りの雑霊を吸収して強化に努めていたそうで、男は『晴明をも超える陰陽師になって、俺がこの国を守らなければ』とブツブツ言っていたそうです」
「今、どこに。それとその霊能者は無事ですか」
「はい。完全に気配を絶って、追跡中です」
「よし。行こうか」
僕達は、そこへ急ぐ事にした。
「ほっほう。これは、また」
マドレーヌやクッキーなどの焼き菓子が好みのようだ。
「チチチッ」
疲れ果てた直を気遣うように、アオがテーブルの上でクッキーをくちばしで直の方へ突いて滑らせ、「食べろ」と言う。
「ありがとうねえ、アオぉ」
「チチッ」
そんな心温まるメルヘンな光景に晴明は目を細めた。
「直、糖分補給しとけよ。直の好きな抹茶とココアとシナモンの3種類だぞ」
「うん。ありがとうねえ、怜」
「アオも食べるか。おいで」
「チチッ」
アオは僕のところに寄って来て、クッキーを嬉々として齧り始めた。
「目撃情報ですが、今のところはありません。ただ、雑霊を取り込んだ痕は、少しずつ移動しています。取り込んだ場所から移動して休眠するらしくて、居所はまだ不明との事です」
僕が報告を伝えると、晴明は頷いて、紅茶を啜った。
「隠形の腕は一流か。そこは苦手で良かったものを」
「でも、アメリカを狙ってるにしても、海辺からどうするつもりなんだろうねえ?泳いで?歩く?飛ぶ?まさか飛行機とか船とかかねえ?」
「前に日本に攻めてきたやつは、海上を飛んで来たよな」
「じゃあ、それかねえ」
「そんな事があったのか?」
僕と直は、その件について話した。ちょうど一年前の事だな。
「日本の守りも、考えないといかんなあ」
「神様は、そういう人間の引いた国境とかにはあんまり関与できないようで、その件についても向こうの神は手を貸していたらしいからアウトだと、そっちの世界で吊るし上げたとか言ってましたよ」
ああ。照姉のスッキリした顔が思い出される。
「神ではないような神のような、式神ならだめか」
「グレイゾーンですかね。
あ。十二神将も時々遊びに来るんですよ。今度一緒に飲み会に来ませんか」
「なんとまあ、ありがたくも恐ろしい誘いだなあ」
晴明は愉快そうにあっはっはっはと笑った。
「アオ、アオ。かわいいなあ。それに、直が大好きなのだな」
「チチッ」
晴明が言うと、アオは「当然だ」と言わんばかりに胸を張り、晴明に耳を掻かれて気持ちよさそうに目をつぶった。
「直よ。せっかくの眷属なのだ。目を共有する方が便利だぞ」
それは便利だろう。ただし、慣れるまではちょっと酔うぞ。
「確かにねえ。それは思ってました。あと、ちゃんと会話できたらいいなあって」
直が乗り気だ。
「では、後でその術を教えよう」
「ありがとうございます!」
「チチチッ!!」
揃って嬉しそうだ。
そして、張り切ってまた、訓練を再開したのだった。
事態が動いたのは、翌日の事だった。
「目撃情報が出ました!」
職員が飛び込んで来る。
「山中で探索中の霊能者が、軍服の男と黒い霊体との融合したようなものを発見しました。周りの雑霊を吸収して強化に努めていたそうで、男は『晴明をも超える陰陽師になって、俺がこの国を守らなければ』とブツブツ言っていたそうです」
「今、どこに。それとその霊能者は無事ですか」
「はい。完全に気配を絶って、追跡中です」
「よし。行こうか」
僕達は、そこへ急ぐ事にした。
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