371 / 1,046
幽霊屋敷(3)封印せしもの
しおりを挟む
開けた途端、金本さんはギャッと言って放り出した。
そして、それを見た途端、皆も後ずさる。平気でしゃがみ込んだのは僕と直だけだった。
「封印されてたから、まあ、こんなもんだな」
「そうだねえ。よくもったほうだよね、この程度で」
頭蓋骨だ。埋められた時は生首だったのだろうが、今はすっかり白骨化している。
「何時代くらいかな」
「古そうだよねえ」
僕と直はのんびりと話しながら、それを観察していた。
壺の中には、頭蓋骨と一緒に、その人物の霊も封じられていた。
封印を破ったのか
「子孫の方が」
金田さんと谷本さんを指す。
「かなり前の方ですよね」
平将門が敗死したとこの前聞いたが
「940年だから、平安時代か。
あなたはこの家を守る為にここに?差し向けらたあれをわが身で封印して」
そうだ。一族を代表して、その任を受けていた
そして、周りを見回した。
我は、失敗したのか
「子孫が謂れを知らずに掘り起こしたんですよねえ。あなたは完璧でしたよう。ねえ」
「そうです」
頭蓋骨に向けて喋り出した僕と直に慣れていない村木さん達4人は、落ち着かなさげにしていたが、今の言葉で皆が金田さんと谷本さんに注目した。
「え?」
「後は僕達が引き受けますので、ご心配なく。お疲れ様でした」
頼む
それは頭を下げると、姿を薄くして消えて行った。
それと反対に、気配を濃くしていくものもある。
「さて」
「重しが外れた途端だねえ」
僕と直のそばに、慣れた皆はすぐに集まる。そして村木さん達4人も、何事が始まるのかと慌てて寄って来た。
「ここにいて下さいねえ」
直が結界を張って皆を覆う。
「6体か」
熊、犬、猪、蛇、ヒト。それらが家の敷地の外でゆらゆらと地面から沸き上がるように出て来ると、実体化を始める。
「この家は、他の有力者からか、刺客を差し向けられたりするのが常態化していたようです。それで、それを封じ込めるための呪術的結界を、一族を代表してこの方が引き受けて来られたんです。
それを掘り起こしたから結界が切れて、押さえていた刺客も現れたんですよ」
村木さん達4人は、目を剥いて言い争いを始める。
「お前らのせいか、あの化け物は!」
「そんな事知らないわよ、書いてなかったんだから!」
「どうにかしなさいよ!」
「どうにかって、どう──」
そこで、バッとこちらを見る。
「除霊、承りますよお」
「料金はですね──」
説明責任を果たそうとする僕と直に、彼らは一斉に騒ぎ出した。
「いいからやって!」
「払うから、お金は!」
「では、契約書を」
「いやあああ!!来る!!」
まあ、このくらいにしておくか。部の皆は、苦笑している。
「じゃあ、逝こうか」
僕は刀を出して近付き、直は札を準備する。
「よりどりみどりだねえ」
「先着順でいいかな」
犬が体を低くしながら走り、飛び掛かって来る。それを一刀で斬ると、突っ込んで来ていた猪の首を落とす。そのまま足を進め、前足を振り上げて威嚇する熊に斬りつけて、片付ける。そして、跳びかかって来た蛇を半分に斬ると、後は、ヒトが2人残った。
2人は警戒していたようだが、いきなり飛び掛かりかけたところを、札で足止めされて硬直する。そこを、悠々と斬る。
単純にこの一族の人間を狙うだけのもので、数の割には単純で雑魚だ。大して苦労することなく、刺客6体を屠る。
「はああ。助かった」
金田さんと谷本さんはホッと息をつき、そして、肩を落とした。
「大切な物、か」
「確かに、大切な物ね」
真先輩は、静かに村木さん夫妻に言う。
「事故物件では無かったと、お分かりいただけたと思いますが」
「はい。どうもありがとうございました」
「申し訳ありませんでした」
訴えるだのなんだのと、色々と言っていたらしい。
「浄霊の費用ですが」
「あちらのお2人でしょう?」
「そちらも折半で」
「どうしてですか。そちらの先祖のものなのに」
「おたくが今の地権者ですし」
金目のものでないと分かった途端、押し付け合いだ。
「さっき、払うって言いましたよねぇ?」
うんざりとしながら言うが、4人は、互いに、相手を差す。
「サインもらうまで、祓うんじゃなかったかな。これ、何て報告しよう。面倒臭い」
「見苦しいねえ」
心から、溜め息が出た。
そして、それを見た途端、皆も後ずさる。平気でしゃがみ込んだのは僕と直だけだった。
「封印されてたから、まあ、こんなもんだな」
「そうだねえ。よくもったほうだよね、この程度で」
頭蓋骨だ。埋められた時は生首だったのだろうが、今はすっかり白骨化している。
「何時代くらいかな」
「古そうだよねえ」
僕と直はのんびりと話しながら、それを観察していた。
壺の中には、頭蓋骨と一緒に、その人物の霊も封じられていた。
封印を破ったのか
「子孫の方が」
金田さんと谷本さんを指す。
「かなり前の方ですよね」
平将門が敗死したとこの前聞いたが
「940年だから、平安時代か。
あなたはこの家を守る為にここに?差し向けらたあれをわが身で封印して」
そうだ。一族を代表して、その任を受けていた
そして、周りを見回した。
我は、失敗したのか
「子孫が謂れを知らずに掘り起こしたんですよねえ。あなたは完璧でしたよう。ねえ」
「そうです」
頭蓋骨に向けて喋り出した僕と直に慣れていない村木さん達4人は、落ち着かなさげにしていたが、今の言葉で皆が金田さんと谷本さんに注目した。
「え?」
「後は僕達が引き受けますので、ご心配なく。お疲れ様でした」
頼む
それは頭を下げると、姿を薄くして消えて行った。
それと反対に、気配を濃くしていくものもある。
「さて」
「重しが外れた途端だねえ」
僕と直のそばに、慣れた皆はすぐに集まる。そして村木さん達4人も、何事が始まるのかと慌てて寄って来た。
「ここにいて下さいねえ」
直が結界を張って皆を覆う。
「6体か」
熊、犬、猪、蛇、ヒト。それらが家の敷地の外でゆらゆらと地面から沸き上がるように出て来ると、実体化を始める。
「この家は、他の有力者からか、刺客を差し向けられたりするのが常態化していたようです。それで、それを封じ込めるための呪術的結界を、一族を代表してこの方が引き受けて来られたんです。
それを掘り起こしたから結界が切れて、押さえていた刺客も現れたんですよ」
村木さん達4人は、目を剥いて言い争いを始める。
「お前らのせいか、あの化け物は!」
「そんな事知らないわよ、書いてなかったんだから!」
「どうにかしなさいよ!」
「どうにかって、どう──」
そこで、バッとこちらを見る。
「除霊、承りますよお」
「料金はですね──」
説明責任を果たそうとする僕と直に、彼らは一斉に騒ぎ出した。
「いいからやって!」
「払うから、お金は!」
「では、契約書を」
「いやあああ!!来る!!」
まあ、このくらいにしておくか。部の皆は、苦笑している。
「じゃあ、逝こうか」
僕は刀を出して近付き、直は札を準備する。
「よりどりみどりだねえ」
「先着順でいいかな」
犬が体を低くしながら走り、飛び掛かって来る。それを一刀で斬ると、突っ込んで来ていた猪の首を落とす。そのまま足を進め、前足を振り上げて威嚇する熊に斬りつけて、片付ける。そして、跳びかかって来た蛇を半分に斬ると、後は、ヒトが2人残った。
2人は警戒していたようだが、いきなり飛び掛かりかけたところを、札で足止めされて硬直する。そこを、悠々と斬る。
単純にこの一族の人間を狙うだけのもので、数の割には単純で雑魚だ。大して苦労することなく、刺客6体を屠る。
「はああ。助かった」
金田さんと谷本さんはホッと息をつき、そして、肩を落とした。
「大切な物、か」
「確かに、大切な物ね」
真先輩は、静かに村木さん夫妻に言う。
「事故物件では無かったと、お分かりいただけたと思いますが」
「はい。どうもありがとうございました」
「申し訳ありませんでした」
訴えるだのなんだのと、色々と言っていたらしい。
「浄霊の費用ですが」
「あちらのお2人でしょう?」
「そちらも折半で」
「どうしてですか。そちらの先祖のものなのに」
「おたくが今の地権者ですし」
金目のものでないと分かった途端、押し付け合いだ。
「さっき、払うって言いましたよねぇ?」
うんざりとしながら言うが、4人は、互いに、相手を差す。
「サインもらうまで、祓うんじゃなかったかな。これ、何て報告しよう。面倒臭い」
「見苦しいねえ」
心から、溜め息が出た。
10
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
【R18】やがて犯される病
開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。
女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。
女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。
※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。
内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。
また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。
更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる