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ともだち(2)風呂場で焦る
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新幹線と在来線で、僕と直は美里達と合流した。3人はケロリとしたもので、旅行を満喫していた。
「怜に直。来たの」
「羨ましかったんじゃないの?うふふふふ」
「まあまあ。明日は一緒に回れますね」
気付いてないらしい。
「あのな。送ってもらった写真に、その、写っててな」
一応声を潜めて言うが、3人共即座にスマホを確認した。
「やった!心霊写真よ!」
エリカの反応がおかしい。まあ、想像通りだが。
「まあ、これも記念ね。でも、地味な幽霊だわ」
美里も変だ。まあ、ロケでは散々もっと派手なものを経験してるからな。
「苦しそう。お餅を喉に詰まらせて亡くなった人だったりするんでしょうか」
ユキ、それは別口だから。
「3人共、逞しいねえ」
直が苦笑する。
「そうだな。良くも悪くも、慣れてるからかな。心配して損した気分だな」
「まあまあ。危険なのには変わりないんだしねえ」
「まあな」
僕と直は小声で言い合っていたが、3人は楽しそうに、このお餅が好きだの、こうすれば良かっただのと喋っている。
危機感は全くない。
「慣れって危ないな」
「そうだねえ。ボク達は気を付けないとねえ」
「バス以来、何もないか」
「無いわよ」
「2人共、ホテルは取ったの?」
「いや、今、駅から来たところだから」
「じゃあ、同じホテルにして、夕食一緒にしない?」
「そうですね。空いてるといいんですけど」
言いながら、歩き出す。
「いや、泊まるのはいいんだけど、僕達、霊を祓いに来たんだぞ」
言った途端、3人が驚いたように振り返った。
いや、その反応に驚くよ。
「仕事なの?」
美里が詰まらなさそうに訊く。
「仕事じゃない。写真で見たら危ないかなと思って。な」
「そうだよぉ。バス事故まで起こるしねえ」
なぜか言い訳している気分になりながら僕と直が言うと、3人は笑いながら言った。
「心配してくれたの?ふうん」
「お昼御飯前に合流できてたら、美味しい海鮮丼の店に行けたのに」
「ねえーっ」
3人で仲良くハモっている。
脱力してしまう。もしかして、僕と直は来なくても良かったんじゃないか?直も、半笑いだ。
まあ、バス事故以来何事も無くて良かったよ。
そう思っていると、急に気配が膨れ上がり、写真に写っていたあの霊が現れる。
「あ」
僕と直が同時に見た方向へ、
「まさか!?」
と言うや、エリカがカメラを向ける。
「バス事故も、あなたですね」
仲良し?友達?そんなの信じない。続かない。
霊の若い女は、ぶつぶつと言いながら美里達3人を見ている。
恨みとか、そういうものではなさそうだ。
「何か、言いたいんですか」
友達でいる間に、裏切られる前に終わらせてあげる。
物騒な事を勝手に言って、消えた。
「会話にならないな」
「ねえねえ、何て?」
美里が訊いて来る傍で、エリカが残念そうに声を上げる。
「写ってなあい!」
「残念ね」
ああ。悉く、気が抜ける……。
ホテルは空いていたので部屋が取れ、夕食は、個室でのお食事処で5人一緒に取る事になった。
「札を渡しておくから、持っていてねえ」
直が札をさらさらと書いて、3人に渡す。
「わかったわ。
夕食前に温泉行かない?」
「行こう、行こう!」
「ナトリウム泉ですよねえ、ここ」
女子3人はウキウキと部屋へ入って行く。
「わかってるのかな」
「心配になってくるけど、大丈夫だよ……多分ねえ」
そう信じたい。
「こっちも温泉に行くか」
「せっかくだしねえ」
僕達も部屋に入ると、準備をして大浴場に向かった。
露天風呂は夕日が見え、檜風呂、壺湯、岩風呂がある。内湯は普通の浴槽の他に、ジェット、電気風呂、サウナがある。
「明日は、あの餅つき体験をした所にいってみようか」
「そうだねえ。あそこで憑いたみたいだしねえ」
順に色々と入りながら、今後の予定を相談していた時だった。
近くで、霊の気配が膨れ上がる。
「出たか!?」
急いで行こうとして、ハッと気付いた。
「女風呂か!?」
「ああーっ!?」
想定外だ。困った。どうしよう!?
それでも脱衣所へ駈け込んで手早く浴衣を着、廊下へ飛び出す。
「ど、どうしよう」
「困ったねえ」
ウロウロ、オロオロとする僕達を、通り過ぎる客がジロジロと不審者を見るように見て行く。
気配そのものは消え、待っている内に3人が出て来る。
「大丈夫か!?って、大丈夫そうだな」
3人はケロリとして、
「ああ。途中で何か溺れそうになったんだけど、美里が脱衣所に札を取りに行ってくれて助かったわ」
「素早い対応でしたね」
「ありがとうね、美里」
「ふふふ。友達じゃないの」
ホッと溜め息をつく。気が抜けたからか、くしゃみが出た。
「髪の毛、濡れてるじゃないの。乾かしてらっしゃいよ」
美里が言う。
「もう一回ぬくもって来たら?カゼひくわよ。仕方ないわねえ」
エリカが上から目線だ。
「男の子って、こういうものかも知れませんよ」
ユキまで……。
お前ら。何で飛び出して来たと思ってる――クシュン!
「行って来る」
「ボクも」
女3人に、口で敵うとも思えない。僕と直は、すごすごと脱衣所に戻って行ったのだった。
霊の女に、そこはかとなく怒りを感じながら。
「怜に直。来たの」
「羨ましかったんじゃないの?うふふふふ」
「まあまあ。明日は一緒に回れますね」
気付いてないらしい。
「あのな。送ってもらった写真に、その、写っててな」
一応声を潜めて言うが、3人共即座にスマホを確認した。
「やった!心霊写真よ!」
エリカの反応がおかしい。まあ、想像通りだが。
「まあ、これも記念ね。でも、地味な幽霊だわ」
美里も変だ。まあ、ロケでは散々もっと派手なものを経験してるからな。
「苦しそう。お餅を喉に詰まらせて亡くなった人だったりするんでしょうか」
ユキ、それは別口だから。
「3人共、逞しいねえ」
直が苦笑する。
「そうだな。良くも悪くも、慣れてるからかな。心配して損した気分だな」
「まあまあ。危険なのには変わりないんだしねえ」
「まあな」
僕と直は小声で言い合っていたが、3人は楽しそうに、このお餅が好きだの、こうすれば良かっただのと喋っている。
危機感は全くない。
「慣れって危ないな」
「そうだねえ。ボク達は気を付けないとねえ」
「バス以来、何もないか」
「無いわよ」
「2人共、ホテルは取ったの?」
「いや、今、駅から来たところだから」
「じゃあ、同じホテルにして、夕食一緒にしない?」
「そうですね。空いてるといいんですけど」
言いながら、歩き出す。
「いや、泊まるのはいいんだけど、僕達、霊を祓いに来たんだぞ」
言った途端、3人が驚いたように振り返った。
いや、その反応に驚くよ。
「仕事なの?」
美里が詰まらなさそうに訊く。
「仕事じゃない。写真で見たら危ないかなと思って。な」
「そうだよぉ。バス事故まで起こるしねえ」
なぜか言い訳している気分になりながら僕と直が言うと、3人は笑いながら言った。
「心配してくれたの?ふうん」
「お昼御飯前に合流できてたら、美味しい海鮮丼の店に行けたのに」
「ねえーっ」
3人で仲良くハモっている。
脱力してしまう。もしかして、僕と直は来なくても良かったんじゃないか?直も、半笑いだ。
まあ、バス事故以来何事も無くて良かったよ。
そう思っていると、急に気配が膨れ上がり、写真に写っていたあの霊が現れる。
「あ」
僕と直が同時に見た方向へ、
「まさか!?」
と言うや、エリカがカメラを向ける。
「バス事故も、あなたですね」
仲良し?友達?そんなの信じない。続かない。
霊の若い女は、ぶつぶつと言いながら美里達3人を見ている。
恨みとか、そういうものではなさそうだ。
「何か、言いたいんですか」
友達でいる間に、裏切られる前に終わらせてあげる。
物騒な事を勝手に言って、消えた。
「会話にならないな」
「ねえねえ、何て?」
美里が訊いて来る傍で、エリカが残念そうに声を上げる。
「写ってなあい!」
「残念ね」
ああ。悉く、気が抜ける……。
ホテルは空いていたので部屋が取れ、夕食は、個室でのお食事処で5人一緒に取る事になった。
「札を渡しておくから、持っていてねえ」
直が札をさらさらと書いて、3人に渡す。
「わかったわ。
夕食前に温泉行かない?」
「行こう、行こう!」
「ナトリウム泉ですよねえ、ここ」
女子3人はウキウキと部屋へ入って行く。
「わかってるのかな」
「心配になってくるけど、大丈夫だよ……多分ねえ」
そう信じたい。
「こっちも温泉に行くか」
「せっかくだしねえ」
僕達も部屋に入ると、準備をして大浴場に向かった。
露天風呂は夕日が見え、檜風呂、壺湯、岩風呂がある。内湯は普通の浴槽の他に、ジェット、電気風呂、サウナがある。
「明日は、あの餅つき体験をした所にいってみようか」
「そうだねえ。あそこで憑いたみたいだしねえ」
順に色々と入りながら、今後の予定を相談していた時だった。
近くで、霊の気配が膨れ上がる。
「出たか!?」
急いで行こうとして、ハッと気付いた。
「女風呂か!?」
「ああーっ!?」
想定外だ。困った。どうしよう!?
それでも脱衣所へ駈け込んで手早く浴衣を着、廊下へ飛び出す。
「ど、どうしよう」
「困ったねえ」
ウロウロ、オロオロとする僕達を、通り過ぎる客がジロジロと不審者を見るように見て行く。
気配そのものは消え、待っている内に3人が出て来る。
「大丈夫か!?って、大丈夫そうだな」
3人はケロリとして、
「ああ。途中で何か溺れそうになったんだけど、美里が脱衣所に札を取りに行ってくれて助かったわ」
「素早い対応でしたね」
「ありがとうね、美里」
「ふふふ。友達じゃないの」
ホッと溜め息をつく。気が抜けたからか、くしゃみが出た。
「髪の毛、濡れてるじゃないの。乾かしてらっしゃいよ」
美里が言う。
「もう一回ぬくもって来たら?カゼひくわよ。仕方ないわねえ」
エリカが上から目線だ。
「男の子って、こういうものかも知れませんよ」
ユキまで……。
お前ら。何で飛び出して来たと思ってる――クシュン!
「行って来る」
「ボクも」
女3人に、口で敵うとも思えない。僕と直は、すごすごと脱衣所に戻って行ったのだった。
霊の女に、そこはかとなく怒りを感じながら。
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