体質が変わったので

JUN

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死の森(2)死者の声

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 樹海中の気配が濃くなっているようだ。その中を、田中さんを探して歩く。
 その途中で遺体を見つけた時は、位置を記した札を飛ばして、先へ進む。
「夕方が近いにしても、この気配は何だろうねえ。樹海はいつもこんな感じなのかねえ」
「まずい事態になってないといいんだが……あ、いた!」
 先の方で、木々の間に見え隠れしながら何かしている人影があった。田中さんのようだ。手に、何かを持っているように見える。
「田中さん!」
 声をかけながら近付き、ゾッとした。
 手にしているのは、古い、一本の太いロープだった。それを、頭より少し高い枝にかけていたのだ。
「田中さん!」
 呼んだが、反応はない。表情の抜けた顔つきで、黙々と、枝にロープを引っかけて、輪にしている。そう、頭が入るくらいの大きさの輪だ。
「追い出すぞ」
「はいよ」
 田中さんの背に手を当て、強引に浄力を叩きつけて憑りついているものを出す。そして直は、無防備になっている田中さんを結界で包んで守る。
「田中さん!田中さん!」
 直が呼んでいるうちに、田中さんは自我を取り戻したらしい。ハッとしたように辺りを見廻し、霊がひしめいているといってもいい状況に、ヒッと短く声を上げる。
「霊に憑りつかれていましたよ。それで、首を吊るところだったんですねえ」
「霊に……あ、ロープを踏んで、それから何かぼんやりと……」
 田中さんは思い当たるフシがあったようだ。
「強引に仲間に引きずり込もうとするのはいただけませんね」
 辺りを漂う霊は数を増やし、グルリと取り囲むようにして、

     オマエラモ シネ

と繰り返す。
 そしてそれに、何か外部からの力が加わった。
「ん?」
 何か、術のようだとはわかる。だが、それが何かはわからない。
 しかし見ていると、霊が次々に合わさり、力が増し、1つになると、実体化していく。
「実体化を促す術?そんなものがあるのか。あっても、外法だろうがな」
 直は札を飛ばして式にし、班長へ事態を知らせた。
「斬らないとなあ」
 刀を出し、対峙する。
 先に動いたのはどちらか。
 3メートルはあるそれの足を斬り、地面に這わせる。ついで、腕を肩口から斬って攻撃を封じる。
「材料はあるってわけか」
 失くした分を、後から後から集まって来る霊で補い、再生していく。
「根競べか」
 斬る、斬る、斬る。再生、再生、再生。
 そうこうしている内に、班長と先輩が直からの知らせを受け取って駆けつけて来た。
「おう!やってるな!」
「田中さんをお願いしますねえ」
 田中さんを班長達に任せ、直が、定位置に着く。
「広範囲に祓うのがいいと思うので、無線で連絡してもらえますか」
 ここだけ祓うと、真空状態になった所へ空気が一気に流れ込むように、辺りの霊がここへ急速に流れ込んで来かねない。ある程度、広範囲に祓う必要がある。
「霊に先導されて、遺体の所へ向かっている人がいるかも知れないからねえ」
「わかった」
 班長はすぐに無線で連絡を取り、すぐに、
「OKだ」
と言った。
「え?広範囲って、そんなの」
「いいから、まあ見てろ」
 田中が狼狽えるのを、班長は気楽そうに宥める。
「さあ、逝こうか。
 その前に、こいつの始末だな。直」
「いつでも」
 いつものコンビネーションで、飛び出した。

 







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