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てるてる坊主(2)天気予報
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またもお天気キャスターが首を切られて亡くなったというニュースが日本中を駆け巡る。
しかしそれよりも、彼ら小学生にとっては、明日の天気が重要だった。なぜなら、明日は遠足だからだ。雨になれば延期だが、延期はもう既に2回しているので、明日雨になれば中止、今年の春の遠足は無しということになるらしかった。
「明日晴れるかなあ。牧場、行きたいなあ。牛の乳しぼりやりたい」
「8チャンネルのお天気お姉さんは、曇りだって言ってたよ」
「てるてる坊主も皆で作ったし、祈るしかないよ」
誰からともなく、『てるてる坊主』の歌を歌い始める。
と、1人が言い出した。
「なあ、歌詞、3番まで知ってる?お姉ちゃんがネットで見てたんだ」
「どんなの?」
「ええっとね」
てるてる坊主 てる坊主 明日天気にしておくれ
いつかの夢の空のよに 晴れたら金の鈴あげよ
てるてる坊主 てる坊主 明日天気にしておくれ
わたしの願いを聞いたなら あまいお酒をたんと飲ましょ
てるてる坊主 てる坊主 明日天気にしておくれ
それでも曇って泣いてたら そなたの首をチョン切るぞ
「ええー、チョン切るの?」
「でもその方が、必死に晴にしようとしそう」
それで子供達は、3番までを大声で歌いながら歩き出した。
翌日は、残念ながら雨がしとしと降っていた。
そしてまたも、天気予報士、8チャンネルのお天気お姉さんこと有田省子が、首を切られて死んでいるのが見付かった。
「もしかして、予報を外したら殺されるんじゃないか」
そんな噂が広まっている。
「予報を外したら、というよりも、外して雨になったら、とか言われてるねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いでもある。
「なるほど。いつも雨だもんな」
「よっぽど、予報を信じて傘を持たずに家を出て雨に濡れたのが腹立たしかったのか、犯人は?」
僕と直は話しながら、歩いていた。
と、車が1台、横に停まる。後部座席の窓が開いて、美里様が顔を出した。
若手で1番の人気女優、霜月美里さんだ。美人で実力派だが、キツくて有名で、「女王様」「美里様」と呼ばれている。少し前に仕事を通じて知り合った。
「久しぶりね」
「ああ、こんにちは」
「お久しぶりですねえ」
「仕事?」
「終わったところです」
「そう。送ってあげるから乗りなさいよ。
ああ、今から番宣の仕事があるの。ちょっと見て行きなさい」
僕達が乗ってからそんな事を付け足す。
「え?だったら悪いし」
「いいから来なさいよ。
今度のドラマ、天気予報士の役でね。番宣の一環として、ワイドショーで天気予報を言って回ってるのよ。朝からずーっと。
天気予報を外して雨になったら殺される。そんな噂のせいで、天気予報、見た?どこも皆、『所によっては一時的に雨が降るかも知れません』よ。天気予報の役に立たないじゃない」
嫌な予感がして来た。
「なあ、もしかして美里様?」
「原稿通りに読むんだよねえ?」
美里様は綺麗な笑顔を浮かべて、
「だから、いらっしゃいって」
と言った。
「待て待て待て!明日の天気が雨なのは、素人の僕だって天気図からわかるぞ」
「やめときなって、危なすぎるよぅ」
「フフン」
ハンドルを握るマネージャーの五月さんは、苦笑を浮かべて、
「聞きゃあしないよ」
と言うのみだ。
だめだ、これこそ役に立たない。
「考え直せ、な。霊関係なら守ってやる。でも殺人鬼なら、自信はない」
「美里様、頼むよう」
「あてにしてるわよ」
「ああ、もう、面倒臭い!」
僕は頭を抱えた。
しかしそれよりも、彼ら小学生にとっては、明日の天気が重要だった。なぜなら、明日は遠足だからだ。雨になれば延期だが、延期はもう既に2回しているので、明日雨になれば中止、今年の春の遠足は無しということになるらしかった。
「明日晴れるかなあ。牧場、行きたいなあ。牛の乳しぼりやりたい」
「8チャンネルのお天気お姉さんは、曇りだって言ってたよ」
「てるてる坊主も皆で作ったし、祈るしかないよ」
誰からともなく、『てるてる坊主』の歌を歌い始める。
と、1人が言い出した。
「なあ、歌詞、3番まで知ってる?お姉ちゃんがネットで見てたんだ」
「どんなの?」
「ええっとね」
てるてる坊主 てる坊主 明日天気にしておくれ
いつかの夢の空のよに 晴れたら金の鈴あげよ
てるてる坊主 てる坊主 明日天気にしておくれ
わたしの願いを聞いたなら あまいお酒をたんと飲ましょ
てるてる坊主 てる坊主 明日天気にしておくれ
それでも曇って泣いてたら そなたの首をチョン切るぞ
「ええー、チョン切るの?」
「でもその方が、必死に晴にしようとしそう」
それで子供達は、3番までを大声で歌いながら歩き出した。
翌日は、残念ながら雨がしとしと降っていた。
そしてまたも、天気予報士、8チャンネルのお天気お姉さんこと有田省子が、首を切られて死んでいるのが見付かった。
「もしかして、予報を外したら殺されるんじゃないか」
そんな噂が広まっている。
「予報を外したら、というよりも、外して雨になったら、とか言われてるねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いでもある。
「なるほど。いつも雨だもんな」
「よっぽど、予報を信じて傘を持たずに家を出て雨に濡れたのが腹立たしかったのか、犯人は?」
僕と直は話しながら、歩いていた。
と、車が1台、横に停まる。後部座席の窓が開いて、美里様が顔を出した。
若手で1番の人気女優、霜月美里さんだ。美人で実力派だが、キツくて有名で、「女王様」「美里様」と呼ばれている。少し前に仕事を通じて知り合った。
「久しぶりね」
「ああ、こんにちは」
「お久しぶりですねえ」
「仕事?」
「終わったところです」
「そう。送ってあげるから乗りなさいよ。
ああ、今から番宣の仕事があるの。ちょっと見て行きなさい」
僕達が乗ってからそんな事を付け足す。
「え?だったら悪いし」
「いいから来なさいよ。
今度のドラマ、天気予報士の役でね。番宣の一環として、ワイドショーで天気予報を言って回ってるのよ。朝からずーっと。
天気予報を外して雨になったら殺される。そんな噂のせいで、天気予報、見た?どこも皆、『所によっては一時的に雨が降るかも知れません』よ。天気予報の役に立たないじゃない」
嫌な予感がして来た。
「なあ、もしかして美里様?」
「原稿通りに読むんだよねえ?」
美里様は綺麗な笑顔を浮かべて、
「だから、いらっしゃいって」
と言った。
「待て待て待て!明日の天気が雨なのは、素人の僕だって天気図からわかるぞ」
「やめときなって、危なすぎるよぅ」
「フフン」
ハンドルを握るマネージャーの五月さんは、苦笑を浮かべて、
「聞きゃあしないよ」
と言うのみだ。
だめだ、これこそ役に立たない。
「考え直せ、な。霊関係なら守ってやる。でも殺人鬼なら、自信はない」
「美里様、頼むよう」
「あてにしてるわよ」
「ああ、もう、面倒臭い!」
僕は頭を抱えた。
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