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紅鬼(4)浄化
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膝がガクガクして、歯の根が合わない。
ただただ、近付いて来る紅鬼から目を逸らす事もできずに、ジッと見つめる。
お願いなんてできる相手じゃなかった。そう、理解する。
オイシソウナ コドモ
生臭い息がかかる距離まで近付いて来て、充とヒロは、覚悟した。
札が2人と紅鬼の間に割り込んで壁を作る。それと同時に、棒立ちになった2人を小脇に抱えてその場から後退し、石動さんと直の所へ戻る。
「え、わああ!」
我に返って泣き出す子供達に、
「山を下りてから泣け」
と言い置いて、右手に刀を出す。
「石動さん、子供達を連れて下山して下さい」
返事がない。
「石動さん?」
チラリと見ると、石動さんは目を見開いて震えていた。
「こんなの、知らない。見た事ない。おばあちゃん」
冗談だろ!?叫びたい。
「石動さん、しっかりして下さい。石動さん」
直が呼びかけるが、声が耳に届いていない。
「再度変更だ。直、3人を守る事を優先させて、ここから離れてくれ」
「怜は」
「何とかする」
結界に、ひびが入る。
「頼んだ、直」
「任せろ」
結界が割れる。それと同時に、突っ込んで右手を薙ぎ払う。
直は何とかして3人を立たせようとしているが、石動さんは震えているだけだし、充とヒロは泣いてへたり込んでいる。
紅鬼も薙刀を出してふるって来ながら、隙あらば、3人を喰おうとしている。
「石動さん!」
直の焦ったような声が、本当に切羽詰まっている。
と、足元が落ち葉で滑った。その脇を、異様に延びた紅鬼の腕が通り過ぎる。
抜かれた!
思った時には後方に跳んでその腕の先に立ち、延びた紅鬼の右腕を斬り飛ばす代わりに、左腕にこちらも左腕を斬られていた。
「ヒイッ!?」
「怜!?」
いよいよ子供達が泣きわめき、直は、3人をズルズルと引きずって離れるしかないと、引きずり始めていた。
紅鬼の腕が再生する前に、体を低くして突っ込み、薙ぎ払う。薙刀を握る手首から先を斬り飛ばし、畳みかけるように刃を浴びせて行く。
ようやく小さく弱体化させ、地面の上に這わせる事に成功すると、浄力を浴びせる。
角が消え、真っ赤な衣が、緑色に変わる。
ああ、どうして来て下さらない
若い女が憎い
妾も 子供が欲しかった
ああ、寂しい
さめざめと泣き伏している。
このまま斬るのは、後味が悪い。
「何をしたか、覚えていますか」
ああ、なんという罪深い事を
申し訳ない
「あなたの寂しさには、同情します。しかし、このままでは仕方が無いでしょう。新しくやり直した方がいいと思うんだが、どうします。逝く手伝いなら、しますが」
いいのだろうか
妾が 逝っても
「構わないと思います」
では、お願いする
浄力を、当てる。それで紅鬼であった姫は光となり、はらはらと立ち昇るように消えて行った。
「次は、男を選べ」
嘆息し、直達の方を見る。直はホッとしつつも、3人を放り出してこっちにケガの具合を見に来た。3人は呆けたように光の消えて行った辺りを見上げている。
「思ったよりも浅かったんだねえ。良かったよう」
直が言いながらも、辺りに目をやる。浅いケガとは思えない量の血痕が散っている。
「もしかして、あれかねえ。希少一族の」
「ああ。またあれで、体質変化したらしい」
小声で会話し、嘆息する。
「良かったよう。でも、服は破れたし、たぶん貧血じゃないかねえ」
「そう言えば、そんな感じがするな」
言いながら、3人に近付く。
「歩けますか」
ハッとしたように、3人はこっちを見た。
「あ、あの――!」
「暗くなってきたし、皆が心配して待っています。とにかく下山しましょう。熊も心配だし」
「話は、皆と合流してからだねえ」
僕達は、揃って山を下りて行った。
ただただ、近付いて来る紅鬼から目を逸らす事もできずに、ジッと見つめる。
お願いなんてできる相手じゃなかった。そう、理解する。
オイシソウナ コドモ
生臭い息がかかる距離まで近付いて来て、充とヒロは、覚悟した。
札が2人と紅鬼の間に割り込んで壁を作る。それと同時に、棒立ちになった2人を小脇に抱えてその場から後退し、石動さんと直の所へ戻る。
「え、わああ!」
我に返って泣き出す子供達に、
「山を下りてから泣け」
と言い置いて、右手に刀を出す。
「石動さん、子供達を連れて下山して下さい」
返事がない。
「石動さん?」
チラリと見ると、石動さんは目を見開いて震えていた。
「こんなの、知らない。見た事ない。おばあちゃん」
冗談だろ!?叫びたい。
「石動さん、しっかりして下さい。石動さん」
直が呼びかけるが、声が耳に届いていない。
「再度変更だ。直、3人を守る事を優先させて、ここから離れてくれ」
「怜は」
「何とかする」
結界に、ひびが入る。
「頼んだ、直」
「任せろ」
結界が割れる。それと同時に、突っ込んで右手を薙ぎ払う。
直は何とかして3人を立たせようとしているが、石動さんは震えているだけだし、充とヒロは泣いてへたり込んでいる。
紅鬼も薙刀を出してふるって来ながら、隙あらば、3人を喰おうとしている。
「石動さん!」
直の焦ったような声が、本当に切羽詰まっている。
と、足元が落ち葉で滑った。その脇を、異様に延びた紅鬼の腕が通り過ぎる。
抜かれた!
思った時には後方に跳んでその腕の先に立ち、延びた紅鬼の右腕を斬り飛ばす代わりに、左腕にこちらも左腕を斬られていた。
「ヒイッ!?」
「怜!?」
いよいよ子供達が泣きわめき、直は、3人をズルズルと引きずって離れるしかないと、引きずり始めていた。
紅鬼の腕が再生する前に、体を低くして突っ込み、薙ぎ払う。薙刀を握る手首から先を斬り飛ばし、畳みかけるように刃を浴びせて行く。
ようやく小さく弱体化させ、地面の上に這わせる事に成功すると、浄力を浴びせる。
角が消え、真っ赤な衣が、緑色に変わる。
ああ、どうして来て下さらない
若い女が憎い
妾も 子供が欲しかった
ああ、寂しい
さめざめと泣き伏している。
このまま斬るのは、後味が悪い。
「何をしたか、覚えていますか」
ああ、なんという罪深い事を
申し訳ない
「あなたの寂しさには、同情します。しかし、このままでは仕方が無いでしょう。新しくやり直した方がいいと思うんだが、どうします。逝く手伝いなら、しますが」
いいのだろうか
妾が 逝っても
「構わないと思います」
では、お願いする
浄力を、当てる。それで紅鬼であった姫は光となり、はらはらと立ち昇るように消えて行った。
「次は、男を選べ」
嘆息し、直達の方を見る。直はホッとしつつも、3人を放り出してこっちにケガの具合を見に来た。3人は呆けたように光の消えて行った辺りを見上げている。
「思ったよりも浅かったんだねえ。良かったよう」
直が言いながらも、辺りに目をやる。浅いケガとは思えない量の血痕が散っている。
「もしかして、あれかねえ。希少一族の」
「ああ。またあれで、体質変化したらしい」
小声で会話し、嘆息する。
「良かったよう。でも、服は破れたし、たぶん貧血じゃないかねえ」
「そう言えば、そんな感じがするな」
言いながら、3人に近付く。
「歩けますか」
ハッとしたように、3人はこっちを見た。
「あ、あの――!」
「暗くなってきたし、皆が心配して待っています。とにかく下山しましょう。熊も心配だし」
「話は、皆と合流してからだねえ」
僕達は、揃って山を下りて行った。
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