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サイン(1)律儀な勧誘員
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断っても、断っても、まだしつこく勧誘に来るサークルがある。なのでいい加減、断るのも逃げ回るのも面倒臭くなってきた。
御崎 怜、大学1年生。高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった、霊能師である。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「入らないって、言ってるのに」
溜め息をつく僕に、直は、
「これはやっぱり、あれかねえ。もう、作った方がマシかも」
と言う。
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いでもある。
「作るとしたら、何部にするん」
郷田智史。いつも髪をキレイにセットし、モテたい、彼女が欲しいと言っている。実家は滋賀でホテルを経営しており、兄は経営面、智史は法律面からそれをサポートしつつ弁護士をしようと、法学部へ進学したらしい。
「何だろうな。無さそうなやつ?」
「いや、珍しがって人が来るかもしれないねえ」
「しょうむなさそうなやつか?何があるやろ」
などと、真剣に考えだした時、声がかかった。
「やっと見つけた」
見ると、知らない人だ。勧誘ならお断りだが。
「霊能師の御崎君と町田君だよね」
仕事らしい。
「はい、そうですが」
「ちょっと、相談に乗って欲しくて。協会に依頼してもいいんだけど、大事にもしたくなくて」
言いながら、教室に入って来たその人は、空いた席に座った。
「ぼくは法学部2年の南雲 真。うちに来るお爺さんの事なんだ。いいかな」
「あ、オレ、席外しますわ」
「いいよ、いいよ。
うちに、毎日決まって同じお爺さんの幽霊が来るんだ。新聞の勧誘に。それで毎日断ってるんだけど、何か、このままでいいのかなあと思ってね」
「間違いなく幽霊なんですか?しつこいだけとか、認知症だとか」
「いや、幽霊だよ。先の階段で消えるから」
幽霊だな。
それにしても、落ち着いてるな。
「わかりました。1度、本人にも会ってみたいのですが」
「うん、ありがとう。うちはこの近所だよ。ぼくはいつでもいいけど。
あ、お爺さんが来るのは、夕方6時だね」
「じゃあ早速、今日でもいいですか」
「お願いするよ」
南雲先輩はホッとしたように笑った。
小綺麗なマンションだった。荷物は大して無くスッキリとしている。
「コーヒーでいいかな。エスプレッソマシン、買ったんだ」
「あ、好きです、エスプレッソ」
「ボクは、ミルク多めがいいですねえ」
「りょうかーい」
楽しそうに、南雲先輩はコーヒーを淹れる。
「さあ、どうぞ」
「いただきます。
はあ。美味しい」
「全くだねえ。
智史が聞いたら、羨ましがるねえ」
智史は霊関係の仕事なので遠慮したのだ。ただ、興味はありそうだった。
「もう少しありますね」
時計の針は、5時を指している。
「先輩、怪談とか好きなんですか?」
本棚に、それ方面の本やDVDがあるのを見て直が訊く。
「うん、そうなんだ。それで、オカルト研究部にも去年行ってみたんだけど、何か違うんだよね。あそこは、何て言うか、オカルトで騒ぎながら、人脈を作っておくサークル、みたいなね」
「ああ。わかります」
「そういう風な事、言ってましたねえ」
1度行った新人歓迎コンパを思い出す。
「そういうんじゃないんだ。ただ、本を読んだり、DVDを観たりでいいから、1人でいいかなってね。
2人共、今サークルの勧誘が凄いみたいだね」
「はあ。面倒臭いから入る気はないんですがね。断るのも面倒臭い」
「困ったもんですよう。
まあ、サークルに入ったら、先輩に色々と教えてもらえるというのは魅力ですけどねえ」
「じゃあ、ぼくで良かったら何でも聞いて。同じ学部の1年上だからさ」
「あてにさせてもらいます」
雑談をしているうちに、いつの間にか6時になった。
ピーンポーン。
ドアチャイムが鳴る。
「はあーい」
南雲先輩が、玄関に出て行く。
ドアを開けると、お爺さんが立っていた。確かに、生者ではない。
「私、聖東新聞の者ですが、新聞はお決まりでしょうか」
「はい、すみません」
「とりあえず、1週間だけでもお試しでお読みいただくというわけにはいかないでしょうか」
「ああ、申し訳ありませんが……」
「そうですか。いや、失礼しました」
頭を下げ、歩き去り、階段の手前でフッと消える。
「なるほど。霊ですね」
「毎日勧誘ですかあ」
「そうなんだよ」
ドアを閉めて、部屋へ戻る。
「段々申し訳なくもなってくるしね、毎日断るのも」
そういう問題か?
「わかりました。調べてみましょう」
「お願いします」
こうして僕達は、勧誘員のお爺さんについて調べる事になったのである。
御崎 怜、大学1年生。高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった、霊能師である。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「入らないって、言ってるのに」
溜め息をつく僕に、直は、
「これはやっぱり、あれかねえ。もう、作った方がマシかも」
と言う。
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いでもある。
「作るとしたら、何部にするん」
郷田智史。いつも髪をキレイにセットし、モテたい、彼女が欲しいと言っている。実家は滋賀でホテルを経営しており、兄は経営面、智史は法律面からそれをサポートしつつ弁護士をしようと、法学部へ進学したらしい。
「何だろうな。無さそうなやつ?」
「いや、珍しがって人が来るかもしれないねえ」
「しょうむなさそうなやつか?何があるやろ」
などと、真剣に考えだした時、声がかかった。
「やっと見つけた」
見ると、知らない人だ。勧誘ならお断りだが。
「霊能師の御崎君と町田君だよね」
仕事らしい。
「はい、そうですが」
「ちょっと、相談に乗って欲しくて。協会に依頼してもいいんだけど、大事にもしたくなくて」
言いながら、教室に入って来たその人は、空いた席に座った。
「ぼくは法学部2年の南雲 真。うちに来るお爺さんの事なんだ。いいかな」
「あ、オレ、席外しますわ」
「いいよ、いいよ。
うちに、毎日決まって同じお爺さんの幽霊が来るんだ。新聞の勧誘に。それで毎日断ってるんだけど、何か、このままでいいのかなあと思ってね」
「間違いなく幽霊なんですか?しつこいだけとか、認知症だとか」
「いや、幽霊だよ。先の階段で消えるから」
幽霊だな。
それにしても、落ち着いてるな。
「わかりました。1度、本人にも会ってみたいのですが」
「うん、ありがとう。うちはこの近所だよ。ぼくはいつでもいいけど。
あ、お爺さんが来るのは、夕方6時だね」
「じゃあ早速、今日でもいいですか」
「お願いするよ」
南雲先輩はホッとしたように笑った。
小綺麗なマンションだった。荷物は大して無くスッキリとしている。
「コーヒーでいいかな。エスプレッソマシン、買ったんだ」
「あ、好きです、エスプレッソ」
「ボクは、ミルク多めがいいですねえ」
「りょうかーい」
楽しそうに、南雲先輩はコーヒーを淹れる。
「さあ、どうぞ」
「いただきます。
はあ。美味しい」
「全くだねえ。
智史が聞いたら、羨ましがるねえ」
智史は霊関係の仕事なので遠慮したのだ。ただ、興味はありそうだった。
「もう少しありますね」
時計の針は、5時を指している。
「先輩、怪談とか好きなんですか?」
本棚に、それ方面の本やDVDがあるのを見て直が訊く。
「うん、そうなんだ。それで、オカルト研究部にも去年行ってみたんだけど、何か違うんだよね。あそこは、何て言うか、オカルトで騒ぎながら、人脈を作っておくサークル、みたいなね」
「ああ。わかります」
「そういう風な事、言ってましたねえ」
1度行った新人歓迎コンパを思い出す。
「そういうんじゃないんだ。ただ、本を読んだり、DVDを観たりでいいから、1人でいいかなってね。
2人共、今サークルの勧誘が凄いみたいだね」
「はあ。面倒臭いから入る気はないんですがね。断るのも面倒臭い」
「困ったもんですよう。
まあ、サークルに入ったら、先輩に色々と教えてもらえるというのは魅力ですけどねえ」
「じゃあ、ぼくで良かったら何でも聞いて。同じ学部の1年上だからさ」
「あてにさせてもらいます」
雑談をしているうちに、いつの間にか6時になった。
ピーンポーン。
ドアチャイムが鳴る。
「はあーい」
南雲先輩が、玄関に出て行く。
ドアを開けると、お爺さんが立っていた。確かに、生者ではない。
「私、聖東新聞の者ですが、新聞はお決まりでしょうか」
「はい、すみません」
「とりあえず、1週間だけでもお試しでお読みいただくというわけにはいかないでしょうか」
「ああ、申し訳ありませんが……」
「そうですか。いや、失礼しました」
頭を下げ、歩き去り、階段の手前でフッと消える。
「なるほど。霊ですね」
「毎日勧誘ですかあ」
「そうなんだよ」
ドアを閉めて、部屋へ戻る。
「段々申し訳なくもなってくるしね、毎日断るのも」
そういう問題か?
「わかりました。調べてみましょう」
「お願いします」
こうして僕達は、勧誘員のお爺さんについて調べる事になったのである。
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