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迷い(3)足りないパーツ
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夜が更けていく。少年A達は守り袋を持ち、各々、房に入っている。
しかし、態度は様々だ。ガタガタ震える者、高いびきで寝ている者、ウロウロと落ち着きなく歩いたりする者。
「今夜来るんですか」
警官が辺りを見廻しながら訊く。
「そればかりは何とも……いや、来たな」
「え!?」
キョロキョロするが、見えない。霊が真ん中のサークル内に入れば、可視化の札で見えるようになるが。
霊は、主犯格の少年Aを見据えた。
少年Aは寝ていたが、気配を感じたのか、目を覚ました。そして、鉄格子の向こうの2人に目を剥く。
「え!?本当に来やがった」
彼ら全員にも見えるようにさせてもらっているので、皆、言葉も無く、硬直している。
ユビガタリナイ
ハガタリナイ
メガタリナイ
全員、房の奥に張り付いた。
「お、お、おい、なんとかしろよ」
少年Aに向かって、2人はゆっくりと近付く。
ミツカラナイカラ
アナタノヲモラウ
少年Aは余裕を失っていた。
「霊能師!祓えって言ってんだろ!
や、やめろ、おい!」
ヤメテッテイッタワヨネ
「助けろよ!」
タスケテッテイッタワヨネ
「く、来るな!」
ワタシタチガナイテモ
ワラッテタ
ユルサナイ
ユルセナイ
「ひ、ひいぃっ!」
少年Aは腰を抜かして座り込んでいた。
もう、こんなもんか。
「2人共、聞いて下さい。痛かったでしょう。怖かったでしょう。苦しかったでしょう。悔しいでしょう。
でも、それに囚われていたら、ずっとそのまま、苦しいんですよ」
2人は迷うように、少年Aと僕達とを見る。
「苦しくない所に逝きましょう」
2人は迷うようにしていたが、
「そんな事をしたら、こいつらと同じになるんですよ」
と言ったら、手を取り合って泣き出した。
重いものが、晴れていく。
「ケダモノには、なりたくない」
言って、気付く。指が、歯が、目がある事に。
「まあ」
姉妹のように、笑い合う。
それに浄力を当てると、2人は光る粒子のようになって、消えて行った。
しばらく、誰も喋らなかった。が、口火を切ったのは少年Aだった。
「おい、こいつらと同じになるって言ったな」
「言いましたが、何か」
「っざけんなよ、こら」
「同じになるのどこが?それが侮辱に聞こえたなら、そういう行為をしたと認めるって事になりますね」
「――!」
「依頼完了です。お疲れ様でした」
「お疲れ様あ」
警官の笑顔の敬礼に見送られて階段を上がって行った。
翌朝、登校したら、疲れ切った様子の寺崎先生に会った。
「おはようございます。何かあったんですか」
「おはようございます。風邪ですかねえ」
「ああ、おす。いやあ、昨日はカッコつけてただろ、冬華。でも本当はへこんでて、こういう時はいつも、呑んで食べて発散するんだよ。でも昨日はもう遅くてな。夜中に呑むのは、そろそろきつい……」
そうだったのか。剣持さんも、内心では思うところがあるんだなあ。
「今度から、お前ら付き合ってくれよ。アルコールはダメだから、ケーキバイキングとか」
「ええー、面倒臭いから嫌です」
「じゃあ、失礼しますねえ」
「おいいぃぃぃ……」
僕達は、項垂れる寺崎先生を後に、歩き出した。
しかし、態度は様々だ。ガタガタ震える者、高いびきで寝ている者、ウロウロと落ち着きなく歩いたりする者。
「今夜来るんですか」
警官が辺りを見廻しながら訊く。
「そればかりは何とも……いや、来たな」
「え!?」
キョロキョロするが、見えない。霊が真ん中のサークル内に入れば、可視化の札で見えるようになるが。
霊は、主犯格の少年Aを見据えた。
少年Aは寝ていたが、気配を感じたのか、目を覚ました。そして、鉄格子の向こうの2人に目を剥く。
「え!?本当に来やがった」
彼ら全員にも見えるようにさせてもらっているので、皆、言葉も無く、硬直している。
ユビガタリナイ
ハガタリナイ
メガタリナイ
全員、房の奥に張り付いた。
「お、お、おい、なんとかしろよ」
少年Aに向かって、2人はゆっくりと近付く。
ミツカラナイカラ
アナタノヲモラウ
少年Aは余裕を失っていた。
「霊能師!祓えって言ってんだろ!
や、やめろ、おい!」
ヤメテッテイッタワヨネ
「助けろよ!」
タスケテッテイッタワヨネ
「く、来るな!」
ワタシタチガナイテモ
ワラッテタ
ユルサナイ
ユルセナイ
「ひ、ひいぃっ!」
少年Aは腰を抜かして座り込んでいた。
もう、こんなもんか。
「2人共、聞いて下さい。痛かったでしょう。怖かったでしょう。苦しかったでしょう。悔しいでしょう。
でも、それに囚われていたら、ずっとそのまま、苦しいんですよ」
2人は迷うように、少年Aと僕達とを見る。
「苦しくない所に逝きましょう」
2人は迷うようにしていたが、
「そんな事をしたら、こいつらと同じになるんですよ」
と言ったら、手を取り合って泣き出した。
重いものが、晴れていく。
「ケダモノには、なりたくない」
言って、気付く。指が、歯が、目がある事に。
「まあ」
姉妹のように、笑い合う。
それに浄力を当てると、2人は光る粒子のようになって、消えて行った。
しばらく、誰も喋らなかった。が、口火を切ったのは少年Aだった。
「おい、こいつらと同じになるって言ったな」
「言いましたが、何か」
「っざけんなよ、こら」
「同じになるのどこが?それが侮辱に聞こえたなら、そういう行為をしたと認めるって事になりますね」
「――!」
「依頼完了です。お疲れ様でした」
「お疲れ様あ」
警官の笑顔の敬礼に見送られて階段を上がって行った。
翌朝、登校したら、疲れ切った様子の寺崎先生に会った。
「おはようございます。何かあったんですか」
「おはようございます。風邪ですかねえ」
「ああ、おす。いやあ、昨日はカッコつけてただろ、冬華。でも本当はへこんでて、こういう時はいつも、呑んで食べて発散するんだよ。でも昨日はもう遅くてな。夜中に呑むのは、そろそろきつい……」
そうだったのか。剣持さんも、内心では思うところがあるんだなあ。
「今度から、お前ら付き合ってくれよ。アルコールはダメだから、ケーキバイキングとか」
「ええー、面倒臭いから嫌です」
「じゃあ、失礼しますねえ」
「おいいぃぃぃ……」
僕達は、項垂れる寺崎先生を後に、歩き出した。
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