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奇蹟(4)嘆きのイエス

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 イエス・キリスト。天照大御神クラスの神だけあって、神威は強い。
 それが現れた途端、外国人勢は犯人も誰もが身を竦ませ、動けなくなっている。平気なのは僕と直、兄。キリスト教徒かどうかの差というわけではないのか。
 僕は直に手の拘束を解いてもらいながら、油断なくイエスを見ていた。
 悪い感じは無い。彼らはそのつもりで降霊を行ったのだろうが、当の本人に、人の肉体を乗っ取る気は無いらしい。
 悲し気ともとれる顔で、立っていた。
 ロイとエドモンドは、膝をついて頭を下げた。
「何という事を……」
「現世に甦る気は、無いんですね」
 僕の問いにイエスは頷き、それを見たリーダーは、愕然として叫んだ。
「なぜです!?我々を、導いて下さい。他の宗教に、キリスト教こそが正しいと、あなただけが神なのだと!」
 イエスは首を横に振った。
「なぜ……!」
 ロイは、静かに口を開いた。
「あなたこそ、なぜそれがわからないのですか」
 リーダーがガックリと首を落とす。
「それに、よく彼に手を出そうと思えましたね」
「何?」
 ロイは溜め息をついた。
「日本霊能師協会の最終兵器、核弾頭、半分人間を辞めた神殺しにして神喰い。レポートは提出してありますし、いくら変装していても、ただの霊力ではないものが洩れているでしょうに」
「……いや、でも……」
「そのくらい、あなたの目は曇っていたんですね」
 悲し気にイエスが目を伏せ、頭を下げて、消えて行った。
 ああ、と、溜め息が満ちる。
「行きましょうか。調書は取らせてもらいますよ」
 6人は項垂れたまま、刑事に連れ出されて行った。
「ああ、奇蹟だ。主がここに……!」
 エドモンドが涙を浮かべている。
「奇蹟申請――は無理ですね」
「ああ。この事件に関しては、完全に秘密にされるだろうからな」
 ロイがアッサリと答えて、エドモンドは肩を落とした。
 が、急に顔を上げる。
「じゃあ、記念写真を撮ろう」
「は?」
「記録に残らなくても、記憶に残る。写真を見れば、夢ではなかったと思えるだろう、レンの女装姿があれば」
「絶対に嫌だからな!」
「頼むよ」
「恥を記録に残してたまるか!
 ああ、もう、早く着替えたい」
「あ、怜。そのままで来てくれって。調書に添える写真とかいるし。それから、色々とバチカンへの説明もしてもらうって」
「やめてくれよ、面倒臭い!」
 スカートだが、知るか!僕は大股で開き直って歩き出した。

 








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