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はないちもんめ(5)京香さん、危機一髪
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普通に掃除をして母屋に戻ると、京香さんが血相を変えて飛びついて来た。
「何かあったんですか」
「大変なの。どうしよう」
「落ち着いて」
2人がかりでなだめて、何とか聞き出す。
「奈津さんが具合が悪そうだから寝ていた方がいいって言って、部屋に一緒に行って、上手い事浄化できたのは良かったのよね。でも、とにかく寝ていて、後は任せてって言っちゃったの。食事の支度」
「……もしかして、大変というのは……」
「決まってるでしょう!?」
僕と直は、心配して損したとか思いながら、
「はいはい。やりますよ」
と、キッチンに行った。
直に報告を任せて、材料からメニューを推測する。
「あく抜きしてある山菜があるから、これは使う予定だったんだろう。天ぷらにしては他に揚げる材料が冷蔵庫にないから、山菜ごはんかな。
日竜頭はあるけど大根とかじゃがいもとかこんにゃくとかが少ない。これは、日竜頭だけを炊くつもりだな。
ブリの切り身が人数分か。脂の乗りからして、照り焼きだな。
ちぎったレタス、冷めかけたお湯に浸かったささ身、パプリカ……人参の千切りを足してチキンサラダだな。
味噌汁の具は何かな。ああ、あさりが砂だししてある。これかな。いや、えびとすり鉢があるぞ……わかったぞ。えびしんじょうとこのねぎのすまし汁か。あさりは酒蒸しあたりだな」
それに従って、料理を進めた。
聞いていた直と京香さんは、
「クイズみたい」
と唸る。
そして、直から聞いた京香さんは、ホッと胸を撫で下ろした。
「もうひと安心ね。
昨日の夜、はないちもんめの歌を聞いたんだけど。あれ、その子供達だったのねえ」
「あの歌は、人身売買を歌った歌とも言われているしねえ。あそこの人達が歌っていたんだろうねえ」
「できましたよ。時間もちょうどいいかな。運びますか?」
「そうね。ああ、助かったわ。もうどうしようかと」
いつかそれで、本当に困った事にならなければいいが……。
不安を感じながら、料理をお盆で運ぶ。すぐに奈津さんも出て来たが、随分顔色が良くなっていた。悪い気配もきれいになっている。
「まあ。京香さんが?お上手なのね、料理」
奈津さんからいきさつを聞いた皆は驚き、富紀さんは、フッと柔らかく笑った。
疑わしそうな顔の先生と康二さんの足をソッと突いて黙らせ、京香さんが作った事にしてしまう。
食卓が、明るくなったようだった。
無事に式も終わり、戻って来てしばらくした頃。新婚旅行のお土産を持って改めて挨拶に来てくれた京香さんと康二さんだったが、あの後、富紀さんはやたらと元気になって、旅行だグルメだと飛び回っているらしい。それと奈津さんが、妊娠したらしい。邪魔する霊がいなくなって、家はいい方向へ向かい始めたようだ。
そう報告して家を出た2人だったが、1分後、血相を変えてドアを開けた。
「大変よ!今電話を受けたんだけど、今度の日曜日にお母さんたちが泊まりで来るって!助けて、怜君!」
ああ、また、面倒臭い……。
いや、富紀さんの事だ。これもバレてたりして……いや、まさかな……。
「何かあったんですか」
「大変なの。どうしよう」
「落ち着いて」
2人がかりでなだめて、何とか聞き出す。
「奈津さんが具合が悪そうだから寝ていた方がいいって言って、部屋に一緒に行って、上手い事浄化できたのは良かったのよね。でも、とにかく寝ていて、後は任せてって言っちゃったの。食事の支度」
「……もしかして、大変というのは……」
「決まってるでしょう!?」
僕と直は、心配して損したとか思いながら、
「はいはい。やりますよ」
と、キッチンに行った。
直に報告を任せて、材料からメニューを推測する。
「あく抜きしてある山菜があるから、これは使う予定だったんだろう。天ぷらにしては他に揚げる材料が冷蔵庫にないから、山菜ごはんかな。
日竜頭はあるけど大根とかじゃがいもとかこんにゃくとかが少ない。これは、日竜頭だけを炊くつもりだな。
ブリの切り身が人数分か。脂の乗りからして、照り焼きだな。
ちぎったレタス、冷めかけたお湯に浸かったささ身、パプリカ……人参の千切りを足してチキンサラダだな。
味噌汁の具は何かな。ああ、あさりが砂だししてある。これかな。いや、えびとすり鉢があるぞ……わかったぞ。えびしんじょうとこのねぎのすまし汁か。あさりは酒蒸しあたりだな」
それに従って、料理を進めた。
聞いていた直と京香さんは、
「クイズみたい」
と唸る。
そして、直から聞いた京香さんは、ホッと胸を撫で下ろした。
「もうひと安心ね。
昨日の夜、はないちもんめの歌を聞いたんだけど。あれ、その子供達だったのねえ」
「あの歌は、人身売買を歌った歌とも言われているしねえ。あそこの人達が歌っていたんだろうねえ」
「できましたよ。時間もちょうどいいかな。運びますか?」
「そうね。ああ、助かったわ。もうどうしようかと」
いつかそれで、本当に困った事にならなければいいが……。
不安を感じながら、料理をお盆で運ぶ。すぐに奈津さんも出て来たが、随分顔色が良くなっていた。悪い気配もきれいになっている。
「まあ。京香さんが?お上手なのね、料理」
奈津さんからいきさつを聞いた皆は驚き、富紀さんは、フッと柔らかく笑った。
疑わしそうな顔の先生と康二さんの足をソッと突いて黙らせ、京香さんが作った事にしてしまう。
食卓が、明るくなったようだった。
無事に式も終わり、戻って来てしばらくした頃。新婚旅行のお土産を持って改めて挨拶に来てくれた京香さんと康二さんだったが、あの後、富紀さんはやたらと元気になって、旅行だグルメだと飛び回っているらしい。それと奈津さんが、妊娠したらしい。邪魔する霊がいなくなって、家はいい方向へ向かい始めたようだ。
そう報告して家を出た2人だったが、1分後、血相を変えてドアを開けた。
「大変よ!今電話を受けたんだけど、今度の日曜日にお母さんたちが泊まりで来るって!助けて、怜君!」
ああ、また、面倒臭い……。
いや、富紀さんの事だ。これもバレてたりして……いや、まさかな……。
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