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ほたる(4)忘れ得ぬ月
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固まって立つ、生者4人。少し離れて、侍。そして、睨み合うように立つ、中年の男が2人。
「お父さん!?」
留夏が、片方を見て声を上げた。
「大丈夫か、留夏。それに、梨那さん」
「は、はい。あの……?」
戸惑ったような2人に、留夏の父親の方が説明する。
「こいつは、梨那さんに怪我をさせて、留夏の帰る場所を奪おうとしたんだ」
「ちょっと待って。この人誰?」
「……さあ」
「通りすがりの霊だ。留夏さんの弱った心につけ込んで、憑りつこうとしたんだな」
なんでも無さそうに怜が言って、留夏、梨那、宗がギョッとする。
「それを、留夏さんをずっと守って来たお父さんが、防いだんだ」
「お、お父さん……」
留夏が呆然とし、
「おじさん、あの、初めまして。それとありがとうございます」
と、梨那は頭を下げてあいさつした。
「いやいや、こちらこそ。
って、こいつは、梨那さんが怪我をしたら、留夏が孤立してますます弱って行くと思ったんだろう」
もう片方の中年は、悔しそうにうう、うう、と唸るだけだ。
「普段なら大丈夫でも、弱っていると、こんな弱いやつにでもつけ込まれる。
お前の居場所はここじゃない。早く成仏して、次の人生に踏み出せ」
軽く浄力を浴びせると、そいつは光って、ふわあと消えて行った。
そこで、中年2人を縛っていた戒めを解く。
「お父さん!」
「留夏ァ。またこうして話ができるなんてなあ」
父親は、涙ぐんでいた。
「ごめんなあ、留夏。自分達の事に手いっぱいで、留夏の気持ちを考えてやれなくて。
ああっと、じゃあ」
「えっ!?」
消える父親に、全員が慌てた。
「宗!」
「はい!」
シャッターがきられ、直後に怜が腕を振ると、しまったぁという顔の父親が再び現れる。
「ちゃんと話さないと、後悔しますよ」
「すみません。でも――」
「違う!そうじゃない!私、酷い事言った。どっちか選べなんて困るし、怖くて、悲しくて……死んじゃえなんて。そんな事、思ってもなかったのに。本当に死んじゃうなんて思わなかったのに」
「お父さん、間が悪いんだ。まさかあの後、事故に遭うなんてなあ」
聞いていた皆は朧気に事情がわかり、本当に間が悪い人だなあ、と思って嘆息した。
「留夏、新しい家族はいい人達じゃないか。お前だってそれがわかっているんだろう。だから苦しくて、出歩くんだろう」
「だって、私が幸せになんてなったらだめだもん。お父さんにあんな事言ったのに」
「バカだなあ。娘の幸せを願わない父親がいるもんか。あれが留夏の本心で無い事も、わかっているし」
留夏はもう、メイクが悲惨なことになるくらい泣いている。
「梨那さん、留夏をよろしくお願いいたします。それと、斎藤さんにもよろしくと」
「はい、わかりました!」
「留夏、お父さんのことはたまに思い出してくれたら十分だから。な」
「う、うええええん」
「また娘と話せるなんて夢のようでした。ありがとうございました。もう、斎藤さんもいるし、大丈夫です。そろそろ、逝こうと思います」
父親は、怜と宗に丁寧に頭を下げた。
「わかりました。では、お送りします」
浄力を浴びせると、父親は光になって、空に立ち上って消えて行った。
「お、お父さん」
「……ホタルみたいにきれいだったわねえ」
「うん。うん。グスッ」
雲が晴れて、八日月が顔を出した。
宗はデータを確認して、
「ああ。斎藤とお父さんのツーショット、撮れてるぞ。新学期にでも渡そうか。それとも、データで送ろうか」
と訊いた。
「そうね。データでもらおうかな。
それと、いろいろありがとう。
あの、御崎先輩も、ありがとうございます」
「ありがとうございました」
姉妹揃って、頭を下げた。
「いいえ」
「それと、2学期から、心霊研究部に入れて下さい」
「私も!」
「いいけど、無理に入らなくても別にいいよ」
「幽霊ってこれまでは怖かったんです。お父さんが、怒ってるんじゃないかとか考えて。でも、そうじゃないってわかったから。あの。べ、別に、幽霊が好きなわけじゃないからっ」
「……ツンデレか」
プッと、宗が吹き出した。
「今夜は、いい月夜だなあ」
侍が言って、皆で、夜空を見上げた。
この夜空を一生忘れないだろうと、留夏は思った。
「お父さん!?」
留夏が、片方を見て声を上げた。
「大丈夫か、留夏。それに、梨那さん」
「は、はい。あの……?」
戸惑ったような2人に、留夏の父親の方が説明する。
「こいつは、梨那さんに怪我をさせて、留夏の帰る場所を奪おうとしたんだ」
「ちょっと待って。この人誰?」
「……さあ」
「通りすがりの霊だ。留夏さんの弱った心につけ込んで、憑りつこうとしたんだな」
なんでも無さそうに怜が言って、留夏、梨那、宗がギョッとする。
「それを、留夏さんをずっと守って来たお父さんが、防いだんだ」
「お、お父さん……」
留夏が呆然とし、
「おじさん、あの、初めまして。それとありがとうございます」
と、梨那は頭を下げてあいさつした。
「いやいや、こちらこそ。
って、こいつは、梨那さんが怪我をしたら、留夏が孤立してますます弱って行くと思ったんだろう」
もう片方の中年は、悔しそうにうう、うう、と唸るだけだ。
「普段なら大丈夫でも、弱っていると、こんな弱いやつにでもつけ込まれる。
お前の居場所はここじゃない。早く成仏して、次の人生に踏み出せ」
軽く浄力を浴びせると、そいつは光って、ふわあと消えて行った。
そこで、中年2人を縛っていた戒めを解く。
「お父さん!」
「留夏ァ。またこうして話ができるなんてなあ」
父親は、涙ぐんでいた。
「ごめんなあ、留夏。自分達の事に手いっぱいで、留夏の気持ちを考えてやれなくて。
ああっと、じゃあ」
「えっ!?」
消える父親に、全員が慌てた。
「宗!」
「はい!」
シャッターがきられ、直後に怜が腕を振ると、しまったぁという顔の父親が再び現れる。
「ちゃんと話さないと、後悔しますよ」
「すみません。でも――」
「違う!そうじゃない!私、酷い事言った。どっちか選べなんて困るし、怖くて、悲しくて……死んじゃえなんて。そんな事、思ってもなかったのに。本当に死んじゃうなんて思わなかったのに」
「お父さん、間が悪いんだ。まさかあの後、事故に遭うなんてなあ」
聞いていた皆は朧気に事情がわかり、本当に間が悪い人だなあ、と思って嘆息した。
「留夏、新しい家族はいい人達じゃないか。お前だってそれがわかっているんだろう。だから苦しくて、出歩くんだろう」
「だって、私が幸せになんてなったらだめだもん。お父さんにあんな事言ったのに」
「バカだなあ。娘の幸せを願わない父親がいるもんか。あれが留夏の本心で無い事も、わかっているし」
留夏はもう、メイクが悲惨なことになるくらい泣いている。
「梨那さん、留夏をよろしくお願いいたします。それと、斎藤さんにもよろしくと」
「はい、わかりました!」
「留夏、お父さんのことはたまに思い出してくれたら十分だから。な」
「う、うええええん」
「また娘と話せるなんて夢のようでした。ありがとうございました。もう、斎藤さんもいるし、大丈夫です。そろそろ、逝こうと思います」
父親は、怜と宗に丁寧に頭を下げた。
「わかりました。では、お送りします」
浄力を浴びせると、父親は光になって、空に立ち上って消えて行った。
「お、お父さん」
「……ホタルみたいにきれいだったわねえ」
「うん。うん。グスッ」
雲が晴れて、八日月が顔を出した。
宗はデータを確認して、
「ああ。斎藤とお父さんのツーショット、撮れてるぞ。新学期にでも渡そうか。それとも、データで送ろうか」
と訊いた。
「そうね。データでもらおうかな。
それと、いろいろありがとう。
あの、御崎先輩も、ありがとうございます」
「ありがとうございました」
姉妹揃って、頭を下げた。
「いいえ」
「それと、2学期から、心霊研究部に入れて下さい」
「私も!」
「いいけど、無理に入らなくても別にいいよ」
「幽霊ってこれまでは怖かったんです。お父さんが、怒ってるんじゃないかとか考えて。でも、そうじゃないってわかったから。あの。べ、別に、幽霊が好きなわけじゃないからっ」
「……ツンデレか」
プッと、宗が吹き出した。
「今夜は、いい月夜だなあ」
侍が言って、皆で、夜空を見上げた。
この夜空を一生忘れないだろうと、留夏は思った。
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