131 / 1,046
ほたる(3)夜の神社
しおりを挟む
翌日、宗が夜に神社に行くと、先客がいた。
「怜先輩。こんばんは」
「ん、宗か。こんばんは」
御崎 怜。心霊研究部2年生の先輩で、本物の霊能師だ。これまで色々と助けてもらったし、料理も上手いし、本当に凄い人だとはわかっているのだが、ちょっとそれは、理解できなかった。
「何で1人で、木刀持って転がってるんですか」
「……これは、その……1人じゃなくてだな」
「ああ。いらっしゃるんですね」
「うん。剣術指導をして下さってるんだ。
師匠、後輩の水無瀬宗です」
怜は虚空に向かって話しかけている。
宗はとりあえず、
「水無瀬宗です。よろしくお願いいたします」
とそのあたりに向かって頭を下げておいた。
「宗は写真か?」
「はい。このご神木と月をと思って。
でも、今夜は雲が多いですね」
「ああ。でも、晴れるかもしれないしなあ」
2人で、雲の多い夜空を見上げた。
「折角ですから、写真を1枚撮りましょうか」
「あ、師匠。宗は心霊写真を撮るのが特技なんですよ。宗なら師匠も写真が撮れるから、記念に1枚撮ってもらってもいいですか。
はい!じゃあ、宗、頼む。ええと、師匠はここにいるから」
「はい。撮りますよ」
フレーム中央から少し右に怜をずらして、シャッターをきる。
すぐに再生して確認してみたら、バッチリ、怜と侍姿の霊のツーショットになっていた。
「ありがとうな、宗」
「いえ、このくらい。先輩のパソコンにデータを送っておきます」
「頼む。
宗は毎晩、あちこちに写真を撮りに出かけてるのか」
「毎晩というわけにはいきませんが、まあ、夏休みとか冬休みとかは、出やすいですしね。
あ、そう言えば、昨日の晩、同級生に会ったんです」
宗は、留夏が絡まれていたところから話し始めた。
「という事があったんですが」
「見てないから絶対じゃないけど、それは、その子を守ろうとしたのかもな」
宗は、納得した。
「言われてみれば、それで助かったんだし、そうですね」
深くうなずいた時、騒がしい声が近付いて来た。
「もう。なんでついて来るのよう」
「2人で散歩した方がいいじゃない。危ないでしょ」
「危なくない!」
「危ない!」
石段を登って来たのは、斎藤姉妹だった。
姉妹は怜と宗の周りをグルグルと回りながら、口も忙しく動かしている。
「なんで付きまとうのよ」
「家族でしょ、姉妹だもん」
「そんなの、親の再婚でたまたまなっただけじゃん。他人じゃん」
なぜそうなったのかわからないまま、怜と宗は途方に暮れていた。どっちを見たらいいのだろう。目が回る。口喧嘩するにしても、止まってくれないかな、と願った。
「今から家族なの。わかりあうの」
「勝手な事言わないでよ!そんなの私は望んでない!」
ようやく足を止めた2人だったが、ホッとする前に、怜の顔が真剣になるのに宗は気付いた。
「怜先輩?」
「寄って来てる。元からいた方じゃなく」
「え?」
3人が、聞きとがめた。
急に、それまで風が無かったのに、木々が揺れ、砂が舞い上がる。
「何?」
留夏と梨那は不安そうに身を寄せ、ハッと気付いた留夏が離れる。
「留夏!」
「フ、フン」
「ツンデレか、斎藤」
「だ、誰がよっ!」
プッと噴き出して、怜は表情を引き締めた。
「大したことの無い弱いヤツだな。これなら……」
言ってるそばから、小石がフワリと浮いて梨那に向かって飛んで来る。
「キャッ」
そしてそれは、目に見えない何かに跳ね返されて地面に落ちた。
「はい、どっちもそこまで」
言いながら、怜が腕を払った。
「怜先輩?」
「あ、あの?」
「ああ、見えるようにしようか。その方が説明しやすいしな」
そう言って怜が手を振ると、そこに、4人以外の人物が現れた。
「怜先輩。こんばんは」
「ん、宗か。こんばんは」
御崎 怜。心霊研究部2年生の先輩で、本物の霊能師だ。これまで色々と助けてもらったし、料理も上手いし、本当に凄い人だとはわかっているのだが、ちょっとそれは、理解できなかった。
「何で1人で、木刀持って転がってるんですか」
「……これは、その……1人じゃなくてだな」
「ああ。いらっしゃるんですね」
「うん。剣術指導をして下さってるんだ。
師匠、後輩の水無瀬宗です」
怜は虚空に向かって話しかけている。
宗はとりあえず、
「水無瀬宗です。よろしくお願いいたします」
とそのあたりに向かって頭を下げておいた。
「宗は写真か?」
「はい。このご神木と月をと思って。
でも、今夜は雲が多いですね」
「ああ。でも、晴れるかもしれないしなあ」
2人で、雲の多い夜空を見上げた。
「折角ですから、写真を1枚撮りましょうか」
「あ、師匠。宗は心霊写真を撮るのが特技なんですよ。宗なら師匠も写真が撮れるから、記念に1枚撮ってもらってもいいですか。
はい!じゃあ、宗、頼む。ええと、師匠はここにいるから」
「はい。撮りますよ」
フレーム中央から少し右に怜をずらして、シャッターをきる。
すぐに再生して確認してみたら、バッチリ、怜と侍姿の霊のツーショットになっていた。
「ありがとうな、宗」
「いえ、このくらい。先輩のパソコンにデータを送っておきます」
「頼む。
宗は毎晩、あちこちに写真を撮りに出かけてるのか」
「毎晩というわけにはいきませんが、まあ、夏休みとか冬休みとかは、出やすいですしね。
あ、そう言えば、昨日の晩、同級生に会ったんです」
宗は、留夏が絡まれていたところから話し始めた。
「という事があったんですが」
「見てないから絶対じゃないけど、それは、その子を守ろうとしたのかもな」
宗は、納得した。
「言われてみれば、それで助かったんだし、そうですね」
深くうなずいた時、騒がしい声が近付いて来た。
「もう。なんでついて来るのよう」
「2人で散歩した方がいいじゃない。危ないでしょ」
「危なくない!」
「危ない!」
石段を登って来たのは、斎藤姉妹だった。
姉妹は怜と宗の周りをグルグルと回りながら、口も忙しく動かしている。
「なんで付きまとうのよ」
「家族でしょ、姉妹だもん」
「そんなの、親の再婚でたまたまなっただけじゃん。他人じゃん」
なぜそうなったのかわからないまま、怜と宗は途方に暮れていた。どっちを見たらいいのだろう。目が回る。口喧嘩するにしても、止まってくれないかな、と願った。
「今から家族なの。わかりあうの」
「勝手な事言わないでよ!そんなの私は望んでない!」
ようやく足を止めた2人だったが、ホッとする前に、怜の顔が真剣になるのに宗は気付いた。
「怜先輩?」
「寄って来てる。元からいた方じゃなく」
「え?」
3人が、聞きとがめた。
急に、それまで風が無かったのに、木々が揺れ、砂が舞い上がる。
「何?」
留夏と梨那は不安そうに身を寄せ、ハッと気付いた留夏が離れる。
「留夏!」
「フ、フン」
「ツンデレか、斎藤」
「だ、誰がよっ!」
プッと噴き出して、怜は表情を引き締めた。
「大したことの無い弱いヤツだな。これなら……」
言ってるそばから、小石がフワリと浮いて梨那に向かって飛んで来る。
「キャッ」
そしてそれは、目に見えない何かに跳ね返されて地面に落ちた。
「はい、どっちもそこまで」
言いながら、怜が腕を払った。
「怜先輩?」
「あ、あの?」
「ああ、見えるようにしようか。その方が説明しやすいしな」
そう言って怜が手を振ると、そこに、4人以外の人物が現れた。
10
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる