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ねがう(1)決戦は2・14
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テレビをつければチョコレート。雑誌の見出しはバレンタイン。校内も、そんな空気が満ちていた。
キャッキャとした浮かれた一派あり。
かと思えば、妙に真剣な一派あり。
そして、期待と諦めの入り混じった男子達。
「必ず告白が叶う方法なんてないな。あるとすれば、既に答えを知っている相手に渡すくらいかな」
僕と直のところには、かつて無いほどの女子が、休み時間の度に相談にやって来た。
大概の女子は残念そうに肩を落として帰って行くのだが、中には「どうしてもライバルを排除したい」という強硬派もいて、殺人の従犯覚悟ならゴルゴ13でも雇えと言いたい。
「はあ。これがバレンタインまで続くのか」
僕は溜め息をついた。御崎 怜、高校1年生。去年の春突然霊が見え、会話ができる体質になった上、夏には神殺し、秋には神喰らいという新体質までもが加わった、新米霊能師である。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、春の体質変化以来、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「ヘタしたら、来月のホワイトデーまでだねえ」
町田 直、幼稚園からの友人だ。要領が良くて人懐っこく、驚異の人脈を持っている。夏以降直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた、大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、新進気鋭の札使いであり、インコ使いでもある。
「えええ……面倒臭い」
直はちょっと笑った。
「それより小耳に挟んだんだけど、夢で会いたい人に会えたり、願いを叶えたりできる社があるらしいよ」
「解釈の仕方で、とかいうものか?」
「詳しくは知らないけど、昔から、旅に出る前とか戦争に行く前とかに参っておいたら、夢で会えたらしいね。
後は、バレエの発表会で、ライバルが急に鬱になって入院して主役が回って来たとか、一度は振られた相手と交際できるようになったとか」
「……胡散臭い話だな」
「うん。外道の術師とか、関わってないかなあ」
「もしそうなら、大変だな。見に行ってみるか」
「そうだねえ。少しでも早いうちがいいかもねえ」
というわけで、男2人、放課後にその社へ行ってみた。広い空き地のような所に小さな社がポツンとあって、横手には「特別祈祷所」という看板の出た小屋があった。
バレンタイン前という時期もあってか、9割以上が女性だった。ハッキリ言って、僕達は浮いている。
「うわあ」
慄きながら、列に並んで順番を待つ。
やっと順番が回って来たので社の中を見ると、奥に女性の石像があり、札に「結女の神」と書いてあった。手前には小さめの像が左右にあり、各々、「不動明王」「茶吉尼天」と書かれた札がでている。
「その鈴を振ってお願いするのよ。心の中で自分の名前を言ってね」
親切に後ろの女子が教えてくれたので、形ばかりでもと、各々鈴を手に取る。その瞬間、ピリッとした静電気のようなものが通った。神気だ。
ふうん。
では、打ち合わせ通り。御崎 怜。直と夢で会えますように。
一応祈って、社の前を離れる。
「弱いけど、神気があったな」
「一応協会に知らせておく?」
「そうだな」
僕達は並んで社を後にした。
僕は週に3時間程しか睡眠を必要としない無眠者という珍しい体質で、ついこの間寝たところなので、眠くなるのはおかしい筈だった。
だがどうしたわけか、今日に限ってはやけに眠い。眠いと思ったら、不自然な感じで眠りに引きずり込まれていた。
それが夢だと、わかっていた。
目の前に直がいる。
「へえ。本当に会えるのかあ」
「これだけなら、まあ、害はないな。ライバル云々とかは特別祈祷かな」
「そっちも検証する、怜」
「誰か、女の人に行ってもらった方が良くないか?目立ちすぎる」
「そうだねええ。何か企んでても、警戒されるかもねえ」
「じゃ、そういう事で」
「ん、じゃあまた明日」
言ったら、目が覚めた。
「うわあ、変なの」
目覚めたら、頭が重かった。
キャッキャとした浮かれた一派あり。
かと思えば、妙に真剣な一派あり。
そして、期待と諦めの入り混じった男子達。
「必ず告白が叶う方法なんてないな。あるとすれば、既に答えを知っている相手に渡すくらいかな」
僕と直のところには、かつて無いほどの女子が、休み時間の度に相談にやって来た。
大概の女子は残念そうに肩を落として帰って行くのだが、中には「どうしてもライバルを排除したい」という強硬派もいて、殺人の従犯覚悟ならゴルゴ13でも雇えと言いたい。
「はあ。これがバレンタインまで続くのか」
僕は溜め息をついた。御崎 怜、高校1年生。去年の春突然霊が見え、会話ができる体質になった上、夏には神殺し、秋には神喰らいという新体質までもが加わった、新米霊能師である。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、春の体質変化以来、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「ヘタしたら、来月のホワイトデーまでだねえ」
町田 直、幼稚園からの友人だ。要領が良くて人懐っこく、驚異の人脈を持っている。夏以降直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた、大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、新進気鋭の札使いであり、インコ使いでもある。
「えええ……面倒臭い」
直はちょっと笑った。
「それより小耳に挟んだんだけど、夢で会いたい人に会えたり、願いを叶えたりできる社があるらしいよ」
「解釈の仕方で、とかいうものか?」
「詳しくは知らないけど、昔から、旅に出る前とか戦争に行く前とかに参っておいたら、夢で会えたらしいね。
後は、バレエの発表会で、ライバルが急に鬱になって入院して主役が回って来たとか、一度は振られた相手と交際できるようになったとか」
「……胡散臭い話だな」
「うん。外道の術師とか、関わってないかなあ」
「もしそうなら、大変だな。見に行ってみるか」
「そうだねえ。少しでも早いうちがいいかもねえ」
というわけで、男2人、放課後にその社へ行ってみた。広い空き地のような所に小さな社がポツンとあって、横手には「特別祈祷所」という看板の出た小屋があった。
バレンタイン前という時期もあってか、9割以上が女性だった。ハッキリ言って、僕達は浮いている。
「うわあ」
慄きながら、列に並んで順番を待つ。
やっと順番が回って来たので社の中を見ると、奥に女性の石像があり、札に「結女の神」と書いてあった。手前には小さめの像が左右にあり、各々、「不動明王」「茶吉尼天」と書かれた札がでている。
「その鈴を振ってお願いするのよ。心の中で自分の名前を言ってね」
親切に後ろの女子が教えてくれたので、形ばかりでもと、各々鈴を手に取る。その瞬間、ピリッとした静電気のようなものが通った。神気だ。
ふうん。
では、打ち合わせ通り。御崎 怜。直と夢で会えますように。
一応祈って、社の前を離れる。
「弱いけど、神気があったな」
「一応協会に知らせておく?」
「そうだな」
僕達は並んで社を後にした。
僕は週に3時間程しか睡眠を必要としない無眠者という珍しい体質で、ついこの間寝たところなので、眠くなるのはおかしい筈だった。
だがどうしたわけか、今日に限ってはやけに眠い。眠いと思ったら、不自然な感じで眠りに引きずり込まれていた。
それが夢だと、わかっていた。
目の前に直がいる。
「へえ。本当に会えるのかあ」
「これだけなら、まあ、害はないな。ライバル云々とかは特別祈祷かな」
「そっちも検証する、怜」
「誰か、女の人に行ってもらった方が良くないか?目立ちすぎる」
「そうだねええ。何か企んでても、警戒されるかもねえ」
「じゃ、そういう事で」
「ん、じゃあまた明日」
言ったら、目が覚めた。
「うわあ、変なの」
目覚めたら、頭が重かった。
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