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約束(3)植物園、その後
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しばらく、誰も喋らなかった。
今回ユキは見えていたし、エリカには特別に見えるように札を持たせていたから、全部見ていたのだ。
「前半は感動したんだけど、最後のあいつでガッカリね」
エリカが嘆息した。
「それにしても、嫌に詳しかったような……」
仮にも一般人を連れて行くのだから、危険がないか下調べしておくのは当然だ。
「まあまあ、エリカ。初めて幽霊を見た感想はどう」
直が、エリカを上手く誘導した。
「生きてる人みたいだったわ。いつもあんな感じ?」
「だったら楽だよねえ、怜」
「全くだ」
「また――」
「もうないからな。一回だけの約束だろう」
「……ケチ」
「エリカ、無理を言っちゃだめよ。多分これは、特例みたいなものでしょ」
ユキの言う通りだ。これが安全な部類の霊だったので、直の実地訓練込みで今回だけ、津山先生に頼み込んで認めてもらったのだ。特例だ。
「仕方ないわねえ。はあ。
ま、いいわ。これで文化祭も乗り切っていけそうね」
エリカは嬉しそうに、カメラを撫でさすった。
「という事で、無事に終わりました」
僕と直は、津山先生に報告していた。
「ん、ごくろうさんやったなあ。これであの2人も、あの世で一緒にならはったやろ」
良かった、良かったと、ご満悦だ。
「それで、文化祭は上手くいきそうなんか」
「霊が映ってるから、僕達の入っていないのを使えそうです。後は、トリック写真の解説をやれば、そこそこの分量になりそうですよ」
「そうか。文化祭、楽しみやな。メイド喫茶とかいうんもあるんかの」
「津山先生、来るの?」
「おう、行くとも。徳川君とも行こうって約束しとるしの」
「……あの人、暇なのかな」
「はははっ」
まあいいか。
面倒臭いだけだと思っていた文化祭だが、案外楽しいことになるかも知れない。そう思うと、少し楽しみになった。
まあ、楽しくなかったとは言わない。言わないが、大変だった。
それと、来年はもうこの手は使えない。何とか心霊写真を普段から撮るようにするか?でも、仕事のたびにいちいち写真を撮るって、それもなあ。
考えていると、桜の木が見えて来た。
「本当に、人がいっぱいですね」
本当にこれが展示のせいなのかと思っているが、若い人がたくさんいる。
「聖地とか言うそうですね、今は」
職員が笑う。
文化祭の後、やたらとカップルが来て、ここで愛を誓うようになったという。そして、女の子同士で来た子は、縁結びを願って帰るのだと。それも、市外から。
「おかげさまで、廃園は免れ、以前よりも来園者が増えました。この先のクリスマス辺りにはもっと増える見込みです」
職員は嬉しそうに、そう言った。
植物園から部に連絡があり、一度来てもらえないかと言われたのだ。
「いえ、お役に立てたなら幸いです」
エリカはにこにことして言い、ユキは眩しいものを見るように目を眇めた。
「ま、良かったんじゃない」
直も、あの2人を思い出しているのか、柔らかい顔をしている。
「それでですね、相談なんですが」
市の職員は、ニッコリとした。
「廃館の危機にある郷土資料館がありまして」
「……出るんですか」
手を前にだらんとさせるエリカに、
「はい。出ます」
と、同じポーズをとる市職員。
ああ、そういう……。
もう、面倒臭い話だな。
今回ユキは見えていたし、エリカには特別に見えるように札を持たせていたから、全部見ていたのだ。
「前半は感動したんだけど、最後のあいつでガッカリね」
エリカが嘆息した。
「それにしても、嫌に詳しかったような……」
仮にも一般人を連れて行くのだから、危険がないか下調べしておくのは当然だ。
「まあまあ、エリカ。初めて幽霊を見た感想はどう」
直が、エリカを上手く誘導した。
「生きてる人みたいだったわ。いつもあんな感じ?」
「だったら楽だよねえ、怜」
「全くだ」
「また――」
「もうないからな。一回だけの約束だろう」
「……ケチ」
「エリカ、無理を言っちゃだめよ。多分これは、特例みたいなものでしょ」
ユキの言う通りだ。これが安全な部類の霊だったので、直の実地訓練込みで今回だけ、津山先生に頼み込んで認めてもらったのだ。特例だ。
「仕方ないわねえ。はあ。
ま、いいわ。これで文化祭も乗り切っていけそうね」
エリカは嬉しそうに、カメラを撫でさすった。
「という事で、無事に終わりました」
僕と直は、津山先生に報告していた。
「ん、ごくろうさんやったなあ。これであの2人も、あの世で一緒にならはったやろ」
良かった、良かったと、ご満悦だ。
「それで、文化祭は上手くいきそうなんか」
「霊が映ってるから、僕達の入っていないのを使えそうです。後は、トリック写真の解説をやれば、そこそこの分量になりそうですよ」
「そうか。文化祭、楽しみやな。メイド喫茶とかいうんもあるんかの」
「津山先生、来るの?」
「おう、行くとも。徳川君とも行こうって約束しとるしの」
「……あの人、暇なのかな」
「はははっ」
まあいいか。
面倒臭いだけだと思っていた文化祭だが、案外楽しいことになるかも知れない。そう思うと、少し楽しみになった。
まあ、楽しくなかったとは言わない。言わないが、大変だった。
それと、来年はもうこの手は使えない。何とか心霊写真を普段から撮るようにするか?でも、仕事のたびにいちいち写真を撮るって、それもなあ。
考えていると、桜の木が見えて来た。
「本当に、人がいっぱいですね」
本当にこれが展示のせいなのかと思っているが、若い人がたくさんいる。
「聖地とか言うそうですね、今は」
職員が笑う。
文化祭の後、やたらとカップルが来て、ここで愛を誓うようになったという。そして、女の子同士で来た子は、縁結びを願って帰るのだと。それも、市外から。
「おかげさまで、廃園は免れ、以前よりも来園者が増えました。この先のクリスマス辺りにはもっと増える見込みです」
職員は嬉しそうに、そう言った。
植物園から部に連絡があり、一度来てもらえないかと言われたのだ。
「いえ、お役に立てたなら幸いです」
エリカはにこにことして言い、ユキは眩しいものを見るように目を眇めた。
「ま、良かったんじゃない」
直も、あの2人を思い出しているのか、柔らかい顔をしている。
「それでですね、相談なんですが」
市の職員は、ニッコリとした。
「廃館の危機にある郷土資料館がありまして」
「……出るんですか」
手を前にだらんとさせるエリカに、
「はい。出ます」
と、同じポーズをとる市職員。
ああ、そういう……。
もう、面倒臭い話だな。
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