体質が変わったので

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呪殺師・魅華(3)人形遊び

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 インコが直の方に飛び移った。
「お前チュンコか?」
 チッ?
「チュンキチ?」
 チッ?
「直、名付けは後にしろよ。それと、ネーミングセンスないなあ、お前」
 ガックリくる。
「そうかあ?じゃあ、ピーコ、ピーすけ、インちゃん」
 なおもブツブツいう直に、まあ、いつも通りだから大丈夫そうだと思い、僕はそいつらに向き直った。
「ちょっと、早い……」
 ぜえぜえ言いながら、京香さんがひびから入って来る。
「だから、運動した方がいいですよ」
「うん……ど……」
「いいです。とりあえず、息を整えておいて下さい」
 言っておいて、浄力を放つ。スッと一瞬で、そいつらが消えた。
 だが、まだある。この結界の中に、まだ仕掛けが残っている。そういう気がする。
「なんか、嫌な感じがするけど、とりあえず直君、大丈夫ね」
「はい、ご心配をおかけしちゃいました」
 京香さんが直に手を貸して立たせる。
 てっぺんの穴が閉じ、ひびが修復される。結界が、この時完成した。
「僕達が来るのも計算通り、なのか」
「正確には、御崎君が、だけど」
 どこからか現れたのは、僕のコピーみたいなヤツだった。
「コピー人間だ!」
 直が指さす。
「私は御崎 怜を基に、髪から作られた。お前では勝てない」
 コピー人間はそういって、こちらに向かって刀を振り上げ、下ろした。それを避けはしたものの、やり難さを感じる。
「京香さん」
「あれは人形に依り代となる核を埋め込んだもので、別に霊体ではないわ。物理でやる以外ないわよ」
 ケンカとかした事もないし、こっちは武器がない。
「思い出したわ!人形師の魅華。何年か前に仕事中行方不明になって。まさか、呪殺者に落ちてたの!?」
 京香さんが思い出して、愕然となる。
「フッ、落ちる、ね」
 コピー人形よ、僕と同じ顔で、悪そうに笑うなっ。
「魅華の人形は完璧よ。見た通りに能力まで全てをコピーできる」
 京香さんが緊張も露わに言い、コピー人形は勝利を確信した笑みを浮かべた。
「私は完成してから、剣術を学んだぞ」
「……ずるくないか」
「知るか」
 斬りかかって来た。避けるが、どう避けるか傾向でもつかんでいるのか、直撃を避けるのが精一杯で、細かい傷がついて行く。面倒臭いヤツだ。
 さて、困ったな。兄ちゃんは危ないだろうと外で待ってもらってるが、一緒に来てもらえば良かった。
 という判断も、織り込み済みってわけか。やり難い。
「呪殺者なら、依頼人がいるんだよな」
「……」
「無視かよ」
 いきなり懐に飛び込んで蹴り――は読まれていた。
「危ない、危ない」
 間一髪で飛び退って避ける。
 ううむ、どうしたものか。
 京香さんと直からは少し距離を置いた位置で、見た目は双子みたいな僕達が向かい合い、スキを窺いあう。意表を突くというのが難しいのは知っているが、自分相手に意表を突くなんてもっと難しい。
 見たものを再現……見たもの?知っているだけでは無理か?
「私の方がバージョンアップ版で、お前より上だ。お前よりも優れている」
「……お前、僕になりたいのか?」
 言った途端、コピー人間は怒りを露わにして、刀を振るってくる。
 それに対し、
「これは、お前、見た事ないだろう」
神殺しの力を集め、固め、振るう。
「何だ……これは……」
「神殺し」
「マスター、バージョン……アップ……」
「面倒臭いよ、もう来るな」
 コピー人間の上半身がずれ、ズルリと落下して、人形に戻って壊れる。
 と、その奥の空間が揺らめいて、胸を押さえた女が姿を見せた。術が破られて、返しを受けたのだ。
「魅華!」
 京香さんが、札を投げつけて捕縛する。
 毒々しい女を想像していたが、どちらかと言えば、無個性で平凡な女だ。
「地味だと、思ってるでしょう」
「え……あ……いや……」
 どうしよう。本当の事を言ってもいいのだろうか。
 魅華は苦笑した。
「神殺しは、もし見ていても再現不可能だわ」
 まあ、だろうなあ。
「どうしてボクらを……いや、ボクはもしかして怜を釣り出すエサかな」
「いいえ。2人共ターゲットよ」
「どうして」
「知らないわ」
「誰が依頼したんですか」
「言うわけないでしょ?」
「まあ、そうだろうねえ」
 直が苦笑し、京香さんが
「喋らせる方法はあるわ。ご心配なく」
と冷たく言う。
 だが、魅華は突然大量の血を吐き、
「ざまあ、み……」
と言って息を引き取った。
 凍り付いたような沈黙が解けたのは、魅華の結界が解け、兄がこちらに走って来たのを見た後だ。
「依頼人を突き止めないと、安心できないわよ」
「はあ。面倒臭い」
 こちらに気付いた一般人が、甲高い悲鳴を上げた。 



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