体質が変わったので

JUN

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竜宮城(4)そして振出しに戻る

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 白い砂浜が強い太陽に焼かれているのをチラッと眺め、僕はまた、手元の文庫本に目を落とす。
「怜、泳がない? 明日は帰るんだよ?」
「こんなに暑いのに、面倒くさい」
 直はひょいと肩を竦めて、近くに座った。
 穴はあの岩のそれほど深くない所にあり、僕達は覚悟の割には何という事もなしに外へ出る事ができたのだ。
 翌日もう一度中を調べると、広間になっていた所には何体分もの人骨が並んで寝かされており、骨に、古い布が残っているのもあった。
 それにあのドーム状の所には、流れ着いたと思しきビーチサンダルや空き缶があり、付近の漂流物は、あの岩に流れ着くような潮流になっているらしい。
 すた谷――捨て谷から飛び降りた人は、死んであの岩に漂着し、定期的に入り込んでいた村民によって奥の広間に安置されていたのだろう。そして子や孫は、岩にしめ縄を張って神として拝むと共に、彼らは竜宮城に行ったのだと、言い表していたのだろう。
 岩の穴は外から見ると分かり難い角度になっていたが、念の為、手頃な石で塞いでおいた。もう子孫があそこに入る事もなさそうだし、今から過去を暴き立てる必要もないだろう。
 静かに眠ればいいのだ、死者というものは。
「結局、文化祭の出し物にはできそうもないねえ」
「そこだよなあ、問題は」
 エリカが何か面倒臭い事を言い出すに違いない。
「まあ、部室は便利だし、割と楽しいし、ちょっとくらいなら存続の為に面倒くさいのも我慢しよう」
 何がおかしいのか、直はクスクスと笑い出した。
「明日司さんのお土産買いに行くだろ。何かいいものあるかねえ、こっちの名物」
「海産物とか妖怪のお菓子とかだな。兄ちゃんには、カニとカレイと妖怪サブレにしようかと思ってるんだ。京香さんにはイカ徳利かな」
「あの人、肝臓強いよねえ」
「超合金でできてるんじゃないかな」
「それにもし京香さんが浦島太郎だったら、戻った時に年月が経っているとわかった瞬間、亀を探し出して竜宮城に戻って、乙姫に往復ビンタかまして、慰謝料とか言って残りのお酒を全部飲むに違いないよねえ」
 想像し、うんうんと頷き合う。
「やるな」
「絶対やるよう」
 そこにエリカとユキが、メモ帳を持って現れた。
「結局これ以外で何か活動報告をしなくちゃいけません。
 というわけで、お化け屋敷と言われている廃墟を回るとかどうでしょう?」
「霊感を上げる滝行とかもあるわよ」
「やめてくれよ、面倒くさいのは」
 僕は心から、嘆息した。





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