柳内警備保障秘書課別室

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再来の熱砂(4)襲撃

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 日中は40度を超すのに、夜には0度、時にはマイナスにもなる。なので、活動しやすい夜に動き、昼間は休憩するという事も少なくない。
 また、昼間には休んでいる危険な動物が夜に活動する。
(ここは昼間に活動するようにしているみたいだけど、夜に逃げ出すなら、足と武器は絶対に必要だな)
 湊は彼らの生活サイクルを見ながら考えていた。
 外に出た際に見ると、車の鍵は挿しっぱなしだ。小銃は個人で保管し、テントへ持ち込んでいるらしいが、それ以外はもう1つのコンテナを武器庫として使用し、テントで覆っていた。鍵はシェンが1つ、幹部の集まるテントにあるキイケースに1つ、備品責任者の男が1つ持っている。
 この男こそ、酔えば子供を殴って爆睡するという男だった。
(鍵を奪うならこいつだが、それで誰かを殴らせるのは気が引けるな)
 踏み切れないのはそのせいだ。
 カシムとザイードは、水や食料の差し入れ、掃除の時に話をして、色々と聞き出していた。
 カシム達のように連れて来られた子で生きているのは全部で10人いるらしく、その中の3人は戦闘組だという。
 購入しなければならない物資は、時々来るキャラバンから買うのが普通らしい。
(どうしたものか)
 考えているうちに、そのキャラバンが来た。要は、移動販売車だ。
 ワッと皆が集まって、生活必需品やし好品を選んで買う。そして幹部は、別の場所で、武器弾薬の商談をする。
「カシム」
 湊は、つまらなさそうな、羨ましそうな顔でそれを眺めるカシムを手招いた。

 キャラバンが村を去った夜、湊は血相を変えてシェンを呼んだ。
「おい、シェン。ここが狙われているぞ。嫌な予感がする」
「何?国連軍か、政府軍か。
 わかった、すぐに移動しよう」
 それに、一緒に聞いていた幹部が目を剥く。
「シェン!?信じるのか!?」
「こいつの死を避ける力は説明しただろ」
「でも……」
「ダメだ、来る!」
 湊が言った時、村の端の方で爆発が起こった。
「うわっ!」
 続いて、ジープが数台吹き飛ぶ。
「どこからだ!?」
 村中が浮足立つ。
「夜はとにかく真っ暗だからなあ」
「どうやってここの位置を掴んだんだ!?」
「ここには、出入りしているやつらがいるだろ、仲間以外に」
 彼らはそれで、誰を想像したのだろう。
「俺だったら、マーカーを武器に混ぜておいて、一気に吹き飛ばすのにな」
 ボソリと湊が言うと、部下の1人が、
「悪魔め」
と呟く。
「今日搬入したものを運び出させろ!それと、戦闘員は周囲に出せ!非戦闘員は待避所に入れろ!」
 シェンが生き生きとした顔で命令を出し、彼らはそれに従って動き出す。
「湊、時間切れだ。これが済んで生き残っていたら、オシリスへの処刑ライブに主演してもらう。いいな」
 湊は肩を竦め、シェンも立ち去った。
 喧騒が村を支配する。
 その中で、コンテナの鍵を開ける音がした。
「湊!」
 押し殺した声で呼ぶのは、カシムだ。すぐに湊は外へ出た。
 爆発音が忘れた頃に上がり、村の皆が走り回る中、湊はそこらに放り出してあった誰かの上着を引っかけた。
 みっちりと仕込まれた湊だ。生活用品をカシムにちょろまかせてもらい、爆弾を作り上げるくらいは難しくない。それをカシム達に仕掛けさせたのだ。
 ラクダなどの家畜が、カシムの仲間の手で放り出され、それがまた混乱を呼ぶ。
「おい」
 不意に迷彩服の少年兵が呼び止める。
「こっちだ」
 カシム達の仲間の、戦闘組に回された子だった。
 暗がりの向こうに、子供達がかたまって待っていた。
「行くぞ」
 湊は乗り込み、子供達10人と、ジープ2台で走り出した。

 数十分後、シェンは何かおかしいと感じ始めた。
「どうしてどこの班からも、敵発見の知らせが無い?たまたま包囲の穴を抜けたのか?全部が?あり得ない」
 すると今度は、幹部が血相を変えて走り込んで来た。
「爆発したところから、手製の爆弾が出て来た。それと、ガキどもとあの日本人がいない」
 シェンは数瞬真顔になり、次に爆発するように笑って、虚空を睨みつけた。
「なめやがって、あの野郎。
 おい、探せ!必ず俺がこの手でぶっ殺してやる!」
 武器庫に引火したのか、もの凄い爆発音がして火柱が立ち上ったのはその時だった。






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