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赤い龍(3)招待
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「有毒ガス!?」
湊の電話に非表示の相手から着信があったのは、開店してから20分経った頃だった。
『ばら撒いたら、何人生き残れるかな』
「目的は」
『屋上にヘリをやるから、それに乗れ。それを確認したら、ガスを撒くのはやめてやる』
「信用できるのか。第一、あんたは誰だ」
『嘘なんてわざわざつかないさ。それと、こっちが誰かなんてわかってるんだろ?赤龍だ。よろしくな。あんたがこっちの指示に従ってくれるのを期待してるぜ』
それで電話は切れた。
湊はすぐ皆に今の電話内容を伝えたが、涼真と悠花は慌てた。
「有毒ガスをばら撒くって、もうここに仕掛けてあるのか?」
「すぐに探しましょう!」
店長に言って、不審物がないか各フロアで点検してもらうように指示する。
その間に、警察と錦織にも連絡し、湊と川口は屋上を目指した。
『湊君、ヘリに乗り込むつもりですか』
「有毒ガスが何か、どうやって撒くのかわからない以上、仕方がないでしょうね」
『発信機を付けて行ってください。どうせ山本君か川口君が持ってるでしょうからね』
伝えると、川口は苦笑して肩を竦めながら、小さな社員バッジをポケットから出して、湊の物と交換した。
『赤龍の狙いがわかりません。オシリスへの挑発に、処刑とかもあり得ます』
「まあ、その時はその時ですね」
言っているうちに、空にポツンとヘリが見えた。そしてそれは、グングン近付いて来る。
「各フロア、駐車場、どこにも不審物はなかったって!」
涼真は焦った様子で報告する。
「湊君、まさか、要求に従うんですか!?」
悠花は悲愴な顔付きだ。
「無視していい根拠が無いからな」
ヘリを見ながら言う湊の横で、山本が、
「ヘリのナンバー照会と、ヘリの位置をレーダーで追ってもらう」
と言う。
「ヘリ、2機いるわね」
雅美が目を凝らして言い、皆それを見た。
その内の1機は満員の駐車場の真上にホバリングし、ドアを開けてガラス瓶を見せた。そしてもう1機が、屋上に着陸態勢に入る。
そこでまた、電話が入る。
『お迎えは着いたな。そいつが持ってるガラスの容器に、ブツが入っている。落としたらどうなるか、子供でもわかるよな』
「なるほどな」
派手に飛び散り、拡散する事だろう。
「湊!本当に行く気か!?あれが本当に有毒ガスっていう証拠もないぞ!?」
「嘘という証拠もないし、それを確認するのは危険すぎるだろ。それに、いたずらにヘリ2機も使うやつもいないだろ」
『どうした?ビビったか?』
漏れた声に、湊が電話に戻った。
「デートにヘリを迎えに寄こすようなやつに知り合いはいないからな」
電話の向こうで、相手は吹き出した。
「約束は信じていいんだな」
『何。心配してるのか?大丈夫。約束は守るぜ』
「ヘリに乗る。それで、手出しはしないんだな」
『ああ』
「というわけらしい。行って来る」
『では、お姫様』
湊はドアを開けて待つヘリに近付いて行って、乗り込んだ。それでヘリはフワッと浮き上がり、もう1機のヘリと飛んで行った。
それで川口と山本はバタバタと慌て出した。
雅美は涼真と悠花に、
「とにかく、ここの警備は3人で続行よ」
と硬い表情で言った。
湊はヘリから、流れる眼下を見た。
(海の方角か。燃料の問題もあるし、大型船でもチャーターしてるのかな)
航空機を飛ばすには、フライトプランを提出しなければならない。
が、どうせ出しているとは思えないし、出していても、見当はずれのニセのものを提出しているのだろう。測量や航空写真などを理由として。
(ま、なるようにしかならないか)
湊は爆音に顔をしかめて、座席にもたれた。
湊の電話に非表示の相手から着信があったのは、開店してから20分経った頃だった。
『ばら撒いたら、何人生き残れるかな』
「目的は」
『屋上にヘリをやるから、それに乗れ。それを確認したら、ガスを撒くのはやめてやる』
「信用できるのか。第一、あんたは誰だ」
『嘘なんてわざわざつかないさ。それと、こっちが誰かなんてわかってるんだろ?赤龍だ。よろしくな。あんたがこっちの指示に従ってくれるのを期待してるぜ』
それで電話は切れた。
湊はすぐ皆に今の電話内容を伝えたが、涼真と悠花は慌てた。
「有毒ガスをばら撒くって、もうここに仕掛けてあるのか?」
「すぐに探しましょう!」
店長に言って、不審物がないか各フロアで点検してもらうように指示する。
その間に、警察と錦織にも連絡し、湊と川口は屋上を目指した。
『湊君、ヘリに乗り込むつもりですか』
「有毒ガスが何か、どうやって撒くのかわからない以上、仕方がないでしょうね」
『発信機を付けて行ってください。どうせ山本君か川口君が持ってるでしょうからね』
伝えると、川口は苦笑して肩を竦めながら、小さな社員バッジをポケットから出して、湊の物と交換した。
『赤龍の狙いがわかりません。オシリスへの挑発に、処刑とかもあり得ます』
「まあ、その時はその時ですね」
言っているうちに、空にポツンとヘリが見えた。そしてそれは、グングン近付いて来る。
「各フロア、駐車場、どこにも不審物はなかったって!」
涼真は焦った様子で報告する。
「湊君、まさか、要求に従うんですか!?」
悠花は悲愴な顔付きだ。
「無視していい根拠が無いからな」
ヘリを見ながら言う湊の横で、山本が、
「ヘリのナンバー照会と、ヘリの位置をレーダーで追ってもらう」
と言う。
「ヘリ、2機いるわね」
雅美が目を凝らして言い、皆それを見た。
その内の1機は満員の駐車場の真上にホバリングし、ドアを開けてガラス瓶を見せた。そしてもう1機が、屋上に着陸態勢に入る。
そこでまた、電話が入る。
『お迎えは着いたな。そいつが持ってるガラスの容器に、ブツが入っている。落としたらどうなるか、子供でもわかるよな』
「なるほどな」
派手に飛び散り、拡散する事だろう。
「湊!本当に行く気か!?あれが本当に有毒ガスっていう証拠もないぞ!?」
「嘘という証拠もないし、それを確認するのは危険すぎるだろ。それに、いたずらにヘリ2機も使うやつもいないだろ」
『どうした?ビビったか?』
漏れた声に、湊が電話に戻った。
「デートにヘリを迎えに寄こすようなやつに知り合いはいないからな」
電話の向こうで、相手は吹き出した。
「約束は信じていいんだな」
『何。心配してるのか?大丈夫。約束は守るぜ』
「ヘリに乗る。それで、手出しはしないんだな」
『ああ』
「というわけらしい。行って来る」
『では、お姫様』
湊はドアを開けて待つヘリに近付いて行って、乗り込んだ。それでヘリはフワッと浮き上がり、もう1機のヘリと飛んで行った。
それで川口と山本はバタバタと慌て出した。
雅美は涼真と悠花に、
「とにかく、ここの警備は3人で続行よ」
と硬い表情で言った。
湊はヘリから、流れる眼下を見た。
(海の方角か。燃料の問題もあるし、大型船でもチャーターしてるのかな)
航空機を飛ばすには、フライトプランを提出しなければならない。
が、どうせ出しているとは思えないし、出していても、見当はずれのニセのものを提出しているのだろう。測量や航空写真などを理由として。
(ま、なるようにしかならないか)
湊は爆音に顔をしかめて、座席にもたれた。
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