柳内警備保障秘書課別室

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見たくなかった(3)3人の恋模様

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 悠花は、待ち合わせの人がひしめく噴水のそばで、待ち合わせの相手を待っていた。
 それを、雅美、涼真、湊が、隠れて見ている。
 雅美は心配でこっそりと付いて来、ハラハラとしながら見ていた。
 涼真は同じくハラハラとしながら、
「何をする気なんだろう。親友に『人の彼氏を取らないで』と言う気かな。それとも彼氏に『どっちを選ぶの』って迫る気かな」
と心配で見ていた。
 湊は涼真に引きずられて来、
「なあ、勝手に付いて来て見るのってどうなんだ?」
と、帰りたくて仕方がなかった。
「しっ!」
 雅美と涼真に「黙れ」と合図され、閉口して湊は口をつぐんだ。
 と、青年が来た。栗原だ。
「待たせた?ごめん、竹内さん」
 それに悠花は、笑って首を振る。
「ううん、今来たところだから」
「じゃあ、まずは食事に行く?」
「待って。今日は話があるの。
 突然だけど、栗原君、英梨の事好きよね」
 栗原はギョッとしたように硬直した。
「え、何を」
「だって、視線でわかるもの」
 悠花も栗原も、両方共が苦しそうに俯いた。
「ごめん。気を付けるよ。ごめん」
「そうじゃない。
 ああ、考えて来たのに、どう言うか忘れちゃったわ。
 英梨は大事な親友なの。英梨も栗原君の事が好きだと思うわ。だから、大事にして」
 悠花は、口元を震わせながら言った。
「30分後に、英梨を呼び出してるの。ご飯に行こうって。だから、栗原君、ちゃんと英梨に言ってね」
「待ってよ、竹内さん。そんな事できないよ」
「どうして」
「だって、付き合ってるのはぼくと竹内さんだし」
「だから英梨と栗原君が好き合ってるんだから、2人が付き合うべきで」
「いや、待ってよ。そんな勝手な事できないよ」
「私がいいって言ってるじゃない」
 見ていた湊達は、いらいらしていた。
「ウジウジグズグズとした男ね」
「バシッと言えよ」
「行って来る」
「は!?」
 歩き出す湊に、驚きながら涼真と雅美も付いていく。
「おい」
「え?あ、湊君?それにみんな?え、何で?」
 キョトンとする悠花と、何事かという顔付きの栗原がこちらを向く。
「悠花さんがここまで言ってるのに、わかるでしょう」
「でも、ぼくは竹内さんと――」
「ふざけるなよ。親友と好き合ってる男と、気付かない振りして付き合い続けられるほど、悠花さんは鈍感な人じゃない。迷って、泣いて、勇気を振り絞って決めたってわかるだろ」
 栗原はそれでも、苦しい顔で、俯いた。
「でも、僕の方から付き合って欲しいって言ったのに。そんな事」
「義理で付き合われて嬉しいか?」
 悠花は、
「冗談でしょ」
と、震えを隠すような声で、無理矢理笑った。
「というわけだ」
 なおも栗原は立ち尽くしていたが、
「英梨を、よろしくね。さよなら」
と悠花が笑い、背を向けると、呆然と悠花と皆を見送った。
 噴水から離れ、悠花は足を止めると、人込みに紛れるようにして木立の中に入り込み、栗原の様子を窺った。
「悠花ちゃん」
「気になって……あ、来た!」
 英梨が駅から来た。
 そして2人は何事か言葉を交わし、英梨は嬉しそうな顔をした後、困ったような顔になり、それから泣き出して栗原に背中を抱かれ、2人で歩き出した。
 それを見て、悠花は声を殺して泣き出した。
「悠花さん、その」
「えへへ。ごめんね。大丈夫よ」
 悠花は笑って、3人に向き直った。
「勝手に来ちゃってごめんね。でも、心配で」
 雅美が申し訳なさそうに言い、湊も謝った。
「突然口を出して申し訳なかった」
「んん!助かりました!あのままだったら、英梨が来てもあの調子だったと思うし」
 それに、涼真も頷く。
「確かにな。ボク達も聞いててイライラして来て。
 それでも、本当に、済みませんでした」
「あはは。いいって。というか、ありがとう。
 失恋しちゃったあ!でも、悲しいよりも嬉しい!」
 悠花は空を見上げながら、まだどこか涙の残った声で言うと、くるりと皆を振り返った。
「お腹空きました!どこか行きませんか?」
 それに、涼真と雅美が即賛成する。
「行きます!喜んで!」
「いいわね」
「湊君もいいでしょ?ね?」
「まあ、いいか」
 そして4人は、栗原と英梨の向かったのとは反対方向に連れだって歩き出した。
 その夜、ひとつの恋が終わった。




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