39 / 72
見たくなかった(3)3人の恋模様
しおりを挟む
悠花は、待ち合わせの人がひしめく噴水のそばで、待ち合わせの相手を待っていた。
それを、雅美、涼真、湊が、隠れて見ている。
雅美は心配でこっそりと付いて来、ハラハラとしながら見ていた。
涼真は同じくハラハラとしながら、
「何をする気なんだろう。親友に『人の彼氏を取らないで』と言う気かな。それとも彼氏に『どっちを選ぶの』って迫る気かな」
と心配で見ていた。
湊は涼真に引きずられて来、
「なあ、勝手に付いて来て見るのってどうなんだ?」
と、帰りたくて仕方がなかった。
「しっ!」
雅美と涼真に「黙れ」と合図され、閉口して湊は口をつぐんだ。
と、青年が来た。栗原だ。
「待たせた?ごめん、竹内さん」
それに悠花は、笑って首を振る。
「ううん、今来たところだから」
「じゃあ、まずは食事に行く?」
「待って。今日は話があるの。
突然だけど、栗原君、英梨の事好きよね」
栗原はギョッとしたように硬直した。
「え、何を」
「だって、視線でわかるもの」
悠花も栗原も、両方共が苦しそうに俯いた。
「ごめん。気を付けるよ。ごめん」
「そうじゃない。
ああ、考えて来たのに、どう言うか忘れちゃったわ。
英梨は大事な親友なの。英梨も栗原君の事が好きだと思うわ。だから、大事にして」
悠花は、口元を震わせながら言った。
「30分後に、英梨を呼び出してるの。ご飯に行こうって。だから、栗原君、ちゃんと英梨に言ってね」
「待ってよ、竹内さん。そんな事できないよ」
「どうして」
「だって、付き合ってるのはぼくと竹内さんだし」
「だから英梨と栗原君が好き合ってるんだから、2人が付き合うべきで」
「いや、待ってよ。そんな勝手な事できないよ」
「私がいいって言ってるじゃない」
見ていた湊達は、いらいらしていた。
「ウジウジグズグズとした男ね」
「バシッと言えよ」
「行って来る」
「は!?」
歩き出す湊に、驚きながら涼真と雅美も付いていく。
「おい」
「え?あ、湊君?それにみんな?え、何で?」
キョトンとする悠花と、何事かという顔付きの栗原がこちらを向く。
「悠花さんがここまで言ってるのに、わかるでしょう」
「でも、ぼくは竹内さんと――」
「ふざけるなよ。親友と好き合ってる男と、気付かない振りして付き合い続けられるほど、悠花さんは鈍感な人じゃない。迷って、泣いて、勇気を振り絞って決めたってわかるだろ」
栗原はそれでも、苦しい顔で、俯いた。
「でも、僕の方から付き合って欲しいって言ったのに。そんな事」
「義理で付き合われて嬉しいか?」
悠花は、
「冗談でしょ」
と、震えを隠すような声で、無理矢理笑った。
「というわけだ」
なおも栗原は立ち尽くしていたが、
「英梨を、よろしくね。さよなら」
と悠花が笑い、背を向けると、呆然と悠花と皆を見送った。
噴水から離れ、悠花は足を止めると、人込みに紛れるようにして木立の中に入り込み、栗原の様子を窺った。
「悠花ちゃん」
「気になって……あ、来た!」
英梨が駅から来た。
そして2人は何事か言葉を交わし、英梨は嬉しそうな顔をした後、困ったような顔になり、それから泣き出して栗原に背中を抱かれ、2人で歩き出した。
それを見て、悠花は声を殺して泣き出した。
「悠花さん、その」
「えへへ。ごめんね。大丈夫よ」
悠花は笑って、3人に向き直った。
「勝手に来ちゃってごめんね。でも、心配で」
雅美が申し訳なさそうに言い、湊も謝った。
「突然口を出して申し訳なかった」
「んん!助かりました!あのままだったら、英梨が来てもあの調子だったと思うし」
それに、涼真も頷く。
「確かにな。ボク達も聞いててイライラして来て。
それでも、本当に、済みませんでした」
「あはは。いいって。というか、ありがとう。
失恋しちゃったあ!でも、悲しいよりも嬉しい!」
悠花は空を見上げながら、まだどこか涙の残った声で言うと、くるりと皆を振り返った。
「お腹空きました!どこか行きませんか?」
それに、涼真と雅美が即賛成する。
「行きます!喜んで!」
「いいわね」
「湊君もいいでしょ?ね?」
「まあ、いいか」
そして4人は、栗原と英梨の向かったのとは反対方向に連れだって歩き出した。
その夜、ひとつの恋が終わった。
それを、雅美、涼真、湊が、隠れて見ている。
雅美は心配でこっそりと付いて来、ハラハラとしながら見ていた。
涼真は同じくハラハラとしながら、
「何をする気なんだろう。親友に『人の彼氏を取らないで』と言う気かな。それとも彼氏に『どっちを選ぶの』って迫る気かな」
と心配で見ていた。
湊は涼真に引きずられて来、
「なあ、勝手に付いて来て見るのってどうなんだ?」
と、帰りたくて仕方がなかった。
「しっ!」
雅美と涼真に「黙れ」と合図され、閉口して湊は口をつぐんだ。
と、青年が来た。栗原だ。
「待たせた?ごめん、竹内さん」
それに悠花は、笑って首を振る。
「ううん、今来たところだから」
「じゃあ、まずは食事に行く?」
「待って。今日は話があるの。
突然だけど、栗原君、英梨の事好きよね」
栗原はギョッとしたように硬直した。
「え、何を」
「だって、視線でわかるもの」
悠花も栗原も、両方共が苦しそうに俯いた。
「ごめん。気を付けるよ。ごめん」
「そうじゃない。
ああ、考えて来たのに、どう言うか忘れちゃったわ。
英梨は大事な親友なの。英梨も栗原君の事が好きだと思うわ。だから、大事にして」
悠花は、口元を震わせながら言った。
「30分後に、英梨を呼び出してるの。ご飯に行こうって。だから、栗原君、ちゃんと英梨に言ってね」
「待ってよ、竹内さん。そんな事できないよ」
「どうして」
「だって、付き合ってるのはぼくと竹内さんだし」
「だから英梨と栗原君が好き合ってるんだから、2人が付き合うべきで」
「いや、待ってよ。そんな勝手な事できないよ」
「私がいいって言ってるじゃない」
見ていた湊達は、いらいらしていた。
「ウジウジグズグズとした男ね」
「バシッと言えよ」
「行って来る」
「は!?」
歩き出す湊に、驚きながら涼真と雅美も付いていく。
「おい」
「え?あ、湊君?それにみんな?え、何で?」
キョトンとする悠花と、何事かという顔付きの栗原がこちらを向く。
「悠花さんがここまで言ってるのに、わかるでしょう」
「でも、ぼくは竹内さんと――」
「ふざけるなよ。親友と好き合ってる男と、気付かない振りして付き合い続けられるほど、悠花さんは鈍感な人じゃない。迷って、泣いて、勇気を振り絞って決めたってわかるだろ」
栗原はそれでも、苦しい顔で、俯いた。
「でも、僕の方から付き合って欲しいって言ったのに。そんな事」
「義理で付き合われて嬉しいか?」
悠花は、
「冗談でしょ」
と、震えを隠すような声で、無理矢理笑った。
「というわけだ」
なおも栗原は立ち尽くしていたが、
「英梨を、よろしくね。さよなら」
と悠花が笑い、背を向けると、呆然と悠花と皆を見送った。
噴水から離れ、悠花は足を止めると、人込みに紛れるようにして木立の中に入り込み、栗原の様子を窺った。
「悠花ちゃん」
「気になって……あ、来た!」
英梨が駅から来た。
そして2人は何事か言葉を交わし、英梨は嬉しそうな顔をした後、困ったような顔になり、それから泣き出して栗原に背中を抱かれ、2人で歩き出した。
それを見て、悠花は声を殺して泣き出した。
「悠花さん、その」
「えへへ。ごめんね。大丈夫よ」
悠花は笑って、3人に向き直った。
「勝手に来ちゃってごめんね。でも、心配で」
雅美が申し訳なさそうに言い、湊も謝った。
「突然口を出して申し訳なかった」
「んん!助かりました!あのままだったら、英梨が来てもあの調子だったと思うし」
それに、涼真も頷く。
「確かにな。ボク達も聞いててイライラして来て。
それでも、本当に、済みませんでした」
「あはは。いいって。というか、ありがとう。
失恋しちゃったあ!でも、悲しいよりも嬉しい!」
悠花は空を見上げながら、まだどこか涙の残った声で言うと、くるりと皆を振り返った。
「お腹空きました!どこか行きませんか?」
それに、涼真と雅美が即賛成する。
「行きます!喜んで!」
「いいわね」
「湊君もいいでしょ?ね?」
「まあ、いいか」
そして4人は、栗原と英梨の向かったのとは反対方向に連れだって歩き出した。
その夜、ひとつの恋が終わった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
こっち向いてニャン!
鹿嶋 雲丹
キャラ文芸
林家で飼われている三匹のにゃんこ、キジトラのキジタロー、サバトラのサバオ、茶トラのチャーコ。
ひょんなことから、三匹の猫が人間に!
でも、その姿でいられるのは、ごく短い時間だけ。
それぞれ慕う飼い主さんへ、人の言葉で伝えたい事がある三匹は、どう行動するのか。
にゃんこと飼い主さんの、ほのぼのストーリー。
愛の裏では、屠所之羊の声がする。
清水雑音
キャラ文芸
父の仕事の都合で引っ越すことになった神酒 秋真(みき しゅうま)は、町で起こっていく殺人事件に怯えながらも一人の女性を愛す。
しかしその女性の恋愛対象は骨にしかなく、それでも彼女に尽くしていく。
非道徳的(インモラル)で美しい、行き交う二人の愛の裏……
生命の樹
プラ
キャラ文芸
ある部族に生まれた突然変異によって、エネルギー源となった人。
時間をかけ、その部族にその特性は行き渡り、その部族、ガベト族はエネルギー源となった。
そのエネルギーを生命活動に利用する植物の誕生。植物は人間から得られるエネルギーを最大化するため、より人の近くにいることが繁栄に直結した。
その結果、植物は進化の中で人間に便利なように、極端な進化をした。
その中で、『生命の樹』という自身の細胞を変化させ、他の植物や、動物の一部になれる植物の誕生。『生命の樹』が新たな進化を誘発し、また生物としての根底を変えてしまいつつある世界。
『生命の樹』で作られた主人公ルティ、エネルギー源になれるガベト族の生き残り少女グラシア。
彼らは地上の生態系を大きく変化させていく。
※毎週土曜日投稿
フォギーシティ
淺木 朝咲
キャラ文芸
どの地図にも載らず、常に霧に覆われた街、通称フォギーシティは世界中のどの街よりも変わっていた。人間と"明らかにそうでないもの"──すなわち怪物がひとつの街で生活していたのだから。
毎週土曜日13:30に更新してます
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~
トベ・イツキ
キャラ文芸
三国志×学園群像劇!
平凡な少年・リュービは高校に入学する。
彼が入学したのは、一万人もの生徒が通うマンモス校・後漢学園。そして、その生徒会長は絶大な権力を持つという。
しかし、平凡な高校生・リュービには生徒会なんて無縁な話。そう思っていたはずが、ひょんなことから黒髪ロングの清楚系な美女とお団子ヘアーのお転婆な美少女の二人に助けられ、さらには二人が自分の妹になったことから運命は大きく動き出す。
妹になった二人の美少女の後押しを受け、リュービは謀略渦巻く生徒会の選挙戦に巻き込まれていくのであった。
学園を舞台に繰り広げられる新三国志物語ここに開幕!
このお話は、三国志を知らない人も楽しめる。三国志を知ってる人はより楽しめる。そんな作品を目指して書いてます。
今後の予定
第一章 黄巾の乱編
第二章 反トータク連合編
第三章 群雄割拠編
第四章 カント決戦編
第五章 赤壁大戦編
第六章 西校舎攻略編←今ココ
第七章 リュービ会長編
第八章 最終章
作者のtwitterアカウント↓
https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09
※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。
※この作品は小説家になろう・カクヨムにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる