市民課葬祭係

JUN

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忘れ得ぬ日(3)誓い

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「気が付いたら病院のベッドの上で。骨折やら何やらでな。
 で、兄は即死だったと聞かされた。そういう事になったんだ」
 向里がそう言って、ギリと奥歯を噛み締めた。
「俺達は、行成さんをあいつから取り戻し、解放する気なんだ」
 土村もそう言って、決意を込めた目で何かを睨み据えた。
 それに気圧されながらも、穂高は口を開いた。
「そうですか……あの……魂魄鬼というのは?死神なんですか?」
 それには土村が答える。
「俺は封印とか滅するための修行をしてたんだけど、2人で何か手がかりはないかと探してたんだ。そうしたら、先輩の友人から、魂魄鬼と呼ばれるている魂を集めて回っているモノがいると聞いたんだ」
「アレだってすぐにわかったな」
 向里が言い、2人で頷き合う。
「まあ、そういうわけだ。
 これまではどこに出るかさっぱりだったけど、幸い、俺が目を付けられたみたいだ。また来るだろう」
 それに土村が文句を言う。
「だから、それは危険だと言ってるじゃないか」
「どうせいつどこで出て来るのかわからないんだぞ?いつもお前といっしょとかいうわけにもいかないだろうが」
「それはそうなんだけど……」
「あの、お札とかそういうのは」
 それに向里も土村も考え込んだ。
「封じられるかわからないけど、もっておくのがいいか」
「逃がすわけには行かないからな」
 相談を始めるのを聞きながら、穂高は現実味のあるようなないような不思議な気分でそれを聞いていた。

 穂高はスーパーを出て空を見上げた。
(もうすぐ降るかなあ)
 空には雲が広がり、星も月も見えない。
(降り出す前に家に帰ろう)
 穂高は足を早めた。
 その時急ブレーキの音がしてそちらへ目をやると、軽ワゴン車と自転車が接触しそうになったらしく、自転車の出前配送員とワゴン車のドライバーが怒鳴り合いを始めていた。
 ケガがなさそうでホッとしたが、
(向里さん達は……)
と昼間に聞いた話を思い出し、思わず辺りを見回した。
(はあ。いないか。魂魄鬼かあ。あれが本当に現れたとしても、何とかできるのかな……)
 自分にはできそうにない。アレが現れた時の事を思い出すと、今でも背中の芯が寒々しくなって震える。
(とにかく、帰ろう)
 穂高は買い物袋を下げて、歩き出した。





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