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かどわかし(2)救出
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子供を隠しているなら、人里離れたところか、よほど大きな屋敷の奥でないとバレるだろう。そう思って、手当たり次第に探ってみた。
疾風がスズメに頼み、狭霧が侵入して調べるというやり方なので、素早く探れる。
そして、一カ所見つかった。
「10から15位の子がいたよ。女は飯盛り女や、岡場所に遊女として、男は、寺や侍に売るって言ってたな」
狭霧が報告する。
寺の僧侶は妻帯ができないので、上の方の生臭坊主は適当に女遊びをするが、それ以外は、男とそういう行為をする事になる。
そして侍は、戦国時代より男色、念弟という概念がある。妻を持ちながらも少年をという武士もいたし、女の数が少ない時代だ。あぶれる男は多い。それで男同士という者もいた。
年少の男は、それらの輩に売るらしい。
「売られる前に助け出そう」
「そうね。いくらかどわかされたと言っても、証文を作られちゃあ手遅れだものね」
疾風と八雲も気が早ったように、力強くそう言った。
夜陰に紛れて、外れにあるその建物へ近付く。元は剣術道場だったのが、寂れ、放棄されたようだ。古いが、道場は広く、それを囲む庭も生垣もあり、目隠しにもなっている。
擦り切れ、所々に穴が開いた畳の上に、子供達は数珠つなぎに縛られていた。それを、破落戸と浪人が酒を飲みながら見張っている。
子供が時折泣くのに、
「黙れ!」
と怒鳴りつけ、子供はビクッと身を縮め、ほかの子に慰められていた。
まず、狭霧が、ある薬草を乾燥させて作った香を焚く。睡眠作用があるので、1人、また1人と睡魔に襲われ、船をこぎ始める。
子供達は全員熟睡だ。
それで疾風と八雲と狭霧が中へ入ると、賊を片っ端から縛って回る。
武器の類を全て取り上げて遠くに放しておくのも忘れない。
アイコンタクトの後、疾風が1人の顔に水をかけて起こした。
「ん、んん?わっ!?」
気が付けば見知らぬ人物が自分を覗き込んでいて、自分が縛られているとなれば、驚くのが普通だ。しかも全員が縛られ、眠っている。
「先生!」
浪人へ声をかけるが、浪人も起きる様子がない。
「静かにしろ」
覆面をして疾風達の顔はわからないが、逆らってはいけない相手だというのはわかったらしい。大人しく口を閉じ、こくこくと頭を上下させた。
「かどわかして来た子供は、ここにいるだけか」
そいつは目をキョトキョトと動かし、どう答えるべきか考えているようだった。
「お頭。ほかにも質問する相手はいやすぜ。こいつが喋らないのなら、とっとと始末して、次の奴に――」
狭霧が言うと、慌ててそいつは答えた。
「そうだ、そう。寺とお武家に男を売ったら、残りの女を宿場に売りながら江戸を離れるつもりだった」
「もっと小さい子は?」
「お、俺達がかどわかしたのはこれだけだ。
でも、噂なら聞いた事がある」
男は唇を舐め、続ける。
「山の奥の天狗が、もっと小さいのをかどわかしているってな」
疾風達は、ちらりと目を見交わした。
「山?天狗だと?何の目的だ」
「し、知らねえよ。そう聞いただけだからよ」
「それで、その山というのは?」
疾風は聞き出すだけ聞き出すと、狭霧が薬草を男の口に放り込んで飲ませ、男も再び眠り始めた。
それで疾風達は外に出た。
「平太らしい子はいないわねえ」
「その山に行ってみよう」
「ああ。
こいつらの事は、手紙を奉行所に放り込んでおいて来てもらおう」
疾風はここにかどわかしの犯人達と子供達がいると書いたものを夜行性の鳥にくわえさせ、鳥にそれを奉行所に落としてくれと頼んで放した。
「さあて、天狗とご対面ね」
八雲が、指を鳴らして嬉しそうに言った。
疾風がスズメに頼み、狭霧が侵入して調べるというやり方なので、素早く探れる。
そして、一カ所見つかった。
「10から15位の子がいたよ。女は飯盛り女や、岡場所に遊女として、男は、寺や侍に売るって言ってたな」
狭霧が報告する。
寺の僧侶は妻帯ができないので、上の方の生臭坊主は適当に女遊びをするが、それ以外は、男とそういう行為をする事になる。
そして侍は、戦国時代より男色、念弟という概念がある。妻を持ちながらも少年をという武士もいたし、女の数が少ない時代だ。あぶれる男は多い。それで男同士という者もいた。
年少の男は、それらの輩に売るらしい。
「売られる前に助け出そう」
「そうね。いくらかどわかされたと言っても、証文を作られちゃあ手遅れだものね」
疾風と八雲も気が早ったように、力強くそう言った。
夜陰に紛れて、外れにあるその建物へ近付く。元は剣術道場だったのが、寂れ、放棄されたようだ。古いが、道場は広く、それを囲む庭も生垣もあり、目隠しにもなっている。
擦り切れ、所々に穴が開いた畳の上に、子供達は数珠つなぎに縛られていた。それを、破落戸と浪人が酒を飲みながら見張っている。
子供が時折泣くのに、
「黙れ!」
と怒鳴りつけ、子供はビクッと身を縮め、ほかの子に慰められていた。
まず、狭霧が、ある薬草を乾燥させて作った香を焚く。睡眠作用があるので、1人、また1人と睡魔に襲われ、船をこぎ始める。
子供達は全員熟睡だ。
それで疾風と八雲と狭霧が中へ入ると、賊を片っ端から縛って回る。
武器の類を全て取り上げて遠くに放しておくのも忘れない。
アイコンタクトの後、疾風が1人の顔に水をかけて起こした。
「ん、んん?わっ!?」
気が付けば見知らぬ人物が自分を覗き込んでいて、自分が縛られているとなれば、驚くのが普通だ。しかも全員が縛られ、眠っている。
「先生!」
浪人へ声をかけるが、浪人も起きる様子がない。
「静かにしろ」
覆面をして疾風達の顔はわからないが、逆らってはいけない相手だというのはわかったらしい。大人しく口を閉じ、こくこくと頭を上下させた。
「かどわかして来た子供は、ここにいるだけか」
そいつは目をキョトキョトと動かし、どう答えるべきか考えているようだった。
「お頭。ほかにも質問する相手はいやすぜ。こいつが喋らないのなら、とっとと始末して、次の奴に――」
狭霧が言うと、慌ててそいつは答えた。
「そうだ、そう。寺とお武家に男を売ったら、残りの女を宿場に売りながら江戸を離れるつもりだった」
「もっと小さい子は?」
「お、俺達がかどわかしたのはこれだけだ。
でも、噂なら聞いた事がある」
男は唇を舐め、続ける。
「山の奥の天狗が、もっと小さいのをかどわかしているってな」
疾風達は、ちらりと目を見交わした。
「山?天狗だと?何の目的だ」
「し、知らねえよ。そう聞いただけだからよ」
「それで、その山というのは?」
疾風は聞き出すだけ聞き出すと、狭霧が薬草を男の口に放り込んで飲ませ、男も再び眠り始めた。
それで疾風達は外に出た。
「平太らしい子はいないわねえ」
「その山に行ってみよう」
「ああ。
こいつらの事は、手紙を奉行所に放り込んでおいて来てもらおう」
疾風はここにかどわかしの犯人達と子供達がいると書いたものを夜行性の鳥にくわえさせ、鳥にそれを奉行所に落としてくれと頼んで放した。
「さあて、天狗とご対面ね」
八雲が、指を鳴らして嬉しそうに言った。
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