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季節外れのゆきだるま(3)治外法権
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早速狭霧は、雪だるまの会の店を探った。
店主の宗右衛門は、大きな荷物を背負って歩いて行く。
それを気配を殺して尾けて行くと、辺りを窺ってから、ある寺へと入って行った。
(信心深いようには見えないし、気になるな)
狭霧は後に続き、ひょいと屋根裏に忍び込んだ。
宗右衛門は、住職の雲海と奥の部屋に入り、担いで来た荷物を下ろし、積んであった箱のふたを開け、中に入れる。
小判がたくさんあった。
(出資金だな)
中には2口、3口と出資している者もいると聞いているので、相当集めているらしい。
(あるところにはあるんだなあ)
そう思いながら、雲海と宗右衛門に注意する。
「そろそろ、潮時だ」
「わかった。すぐに手配しよう。どこに行く?」
「そうだなあ。しばらく常陸あたりでほとぼりを冷ますか」
「約束の分はもらうぞ」
「がっちりしてやがるな。生臭坊主が」
「お互い様だ」
2人は含み笑いをして、千両箱の小判をじゃらじゃらともてあそんだ。
狭霧から話を聞いて、疾風も八雲も、想像して唸った。
「寺か。奉行所が立ち入れないな」
寺社は寺社奉行の管轄で、奉行所には踏み込む事ができない。
「このままじゃ、出資金を取り戻せないで、泣く人が出るわよ」
「雲海は船で宗右衛門を逃がすって言ってた」
「その前に、何とかしないと」
3人はどうしようかと考えた。
垣ノ上は、文太と連れ立って、肩で風を切るようにしながら歩いていた。
「旦那。今日のねこまんまは、何ですかねえ」
「今日は夕方から行って、じっくりと飲みたい気分だな。八重の酌で」
締まりのない顔で言う。
「あ、八重じゃねえですかい?」
「ん?」
通りの向こうを指して文太が言い、垣ノ上も慌てて目をさ迷わせた。
八雲は、垣ノ上の巡回コースに交わるように歩き、見つけさせることに成功した。
「ああら、垣ノ上様と文太親分」
「おう、八重じゃねえか。奇遇だな」
垣ノ上が気取って見せる。
「ええ。ちょっと出かけてたんですがね、ついでにお参りでもして行こうかと」
「お参り?」
「御存知ありませんか?浄福寺が御利益あるらしいんですよ。見合いが成功したとかいう話を立て続けに聞きましてね」
勿論うそだ。
しかし、八雲と縁結びのお参りというのに、垣ノ上が飛びつかないわけがない。
「本当か!?」
「ええ。よく知らないけど」
「よし、一緒に行こう!」
「いいんですか」
「女の一人歩きは危ないからな!」
「旦那。真昼間ですぜ」
「うるさい、黙れ、文太」
「へい」
そうして3人は連れ立って、雲海が住職を務める寺へと向かったのだった。
(さあて。上手くやってよ)
八雲は内心でほくそ笑みながら、垣ノ上の話ににこやかに相槌を打っていた。
店主の宗右衛門は、大きな荷物を背負って歩いて行く。
それを気配を殺して尾けて行くと、辺りを窺ってから、ある寺へと入って行った。
(信心深いようには見えないし、気になるな)
狭霧は後に続き、ひょいと屋根裏に忍び込んだ。
宗右衛門は、住職の雲海と奥の部屋に入り、担いで来た荷物を下ろし、積んであった箱のふたを開け、中に入れる。
小判がたくさんあった。
(出資金だな)
中には2口、3口と出資している者もいると聞いているので、相当集めているらしい。
(あるところにはあるんだなあ)
そう思いながら、雲海と宗右衛門に注意する。
「そろそろ、潮時だ」
「わかった。すぐに手配しよう。どこに行く?」
「そうだなあ。しばらく常陸あたりでほとぼりを冷ますか」
「約束の分はもらうぞ」
「がっちりしてやがるな。生臭坊主が」
「お互い様だ」
2人は含み笑いをして、千両箱の小判をじゃらじゃらともてあそんだ。
狭霧から話を聞いて、疾風も八雲も、想像して唸った。
「寺か。奉行所が立ち入れないな」
寺社は寺社奉行の管轄で、奉行所には踏み込む事ができない。
「このままじゃ、出資金を取り戻せないで、泣く人が出るわよ」
「雲海は船で宗右衛門を逃がすって言ってた」
「その前に、何とかしないと」
3人はどうしようかと考えた。
垣ノ上は、文太と連れ立って、肩で風を切るようにしながら歩いていた。
「旦那。今日のねこまんまは、何ですかねえ」
「今日は夕方から行って、じっくりと飲みたい気分だな。八重の酌で」
締まりのない顔で言う。
「あ、八重じゃねえですかい?」
「ん?」
通りの向こうを指して文太が言い、垣ノ上も慌てて目をさ迷わせた。
八雲は、垣ノ上の巡回コースに交わるように歩き、見つけさせることに成功した。
「ああら、垣ノ上様と文太親分」
「おう、八重じゃねえか。奇遇だな」
垣ノ上が気取って見せる。
「ええ。ちょっと出かけてたんですがね、ついでにお参りでもして行こうかと」
「お参り?」
「御存知ありませんか?浄福寺が御利益あるらしいんですよ。見合いが成功したとかいう話を立て続けに聞きましてね」
勿論うそだ。
しかし、八雲と縁結びのお参りというのに、垣ノ上が飛びつかないわけがない。
「本当か!?」
「ええ。よく知らないけど」
「よし、一緒に行こう!」
「いいんですか」
「女の一人歩きは危ないからな!」
「旦那。真昼間ですぜ」
「うるさい、黙れ、文太」
「へい」
そうして3人は連れ立って、雲海が住職を務める寺へと向かったのだった。
(さあて。上手くやってよ)
八雲は内心でほくそ笑みながら、垣ノ上の話ににこやかに相槌を打っていた。
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