踏んだり蹴ったり殴ったり

JUN

文字の大きさ
上 下
7 / 22

捕獲作戦

しおりを挟む
 永世君が飛び込んで来た。
「どうかしましたか!?」
 言って、奇妙な顔付きになり、たもを片手に持っている事から気付いたのか、眉をハの字にした。
 私は何でもない顔をして、押し入れから降り立った。ふくらはぎが物凄く痛い。
「何か?」
「え、いや……物凄い悲鳴が聞こえたから……」
「そうですか?」
 永世君は頭を掻いて、メモを差し出した。
「役場の、外来種駆除の係の電話番号」
「……」
「まさか、自分で天井裏に特攻するとは……」
 クッ!そういう係があるなんて!
 いや、よく考えれば、確かにテレビでもそんな課が市役所にあるような事を言ってたような気もするわね。
「ああ、ええ。ありがとう」
 私はにっこりと笑ってそれを受け取った。
「急いだ方がいいかと思ったのよ」
 永世君は笑いをこらえるようによそを向いてから、咳払いして口を開いた。
「せめて相談してくれれば、手を貸したのに」
 それで私は思い出した。
 可愛げのない女。逞しい女。ダカラ、オットニモ、ステラレタ。
「それで、そいつは逃げたの?」
 言いながら永世君は周囲を見回す。
「ええ。そっちから飛んで来て、どこかに」
 動物の行った方向を見ると、押し入れの上段の奥の隅に、そこそこ大きな穴が開いていた。陰になっていたせいか、注意を払っていなかったせいか、初めて気付いた。
「ああ、結構大きな穴だなあ」
「前任者の人、平気だったの!?」
「荷物を置いてて気付いていなかったのかも」
 永世君はのんびりとそう言って、
「あの人、大らかだったからなあ。気付いてて放っておいたという事もあり得るな」
と笑った。
「ど、どうしよう。あ、電話」
「今日は土曜日だし、来週になるんじゃないかな」
 私は眩暈がしそうになったが、ふくらはぎが痛くて正気に戻った。
 布団の上を這いずり回るとか気持ち悪い。
「ホームセンターってどこにありますか」
 永世君は私の顔を見て、
「車で50分行った所だよ。電車なら、駅からバスで5分のところで降りて徒歩12分くらいかな」
 絶望した。
「まあ、待ってて」
 永世君はそう言いおいて、支社を出て行った。

 1時間後、支社の周囲に箱罠が仕掛けられ、押し入れの穴は板で完全に塞がれていた。
 双子のお婆さんであるキヌさんとアサさんは、罠猟もしているらしい。
「何がかかるかの」
「タヌキかハクビシンかのう」
「ヌートリアがかかった事もあったよな」
「ああ、あれね。はく製にして小学校に寄付したんだよね」
 キヌさん、アサさん、永世君、原山先生が話している。
「いろいろいるんですねえ」
 私はそう言いながら、箱罠を見た。
 タヌキにせよハクビシンにせよヌートリアにせよ、見た事は無い。ちょっと楽しみになってしまった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...