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シャトーブリアン希望
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他の皆はダンジョンに入ったのは初めてで、最初に出て来る犬やトリで興奮しているのを尻目に、俺達は先を急いだ。
今や高い岩壁に区切られて「ボス部屋」というよりは「ボス廊下」という雰囲気になってしまった小部屋も、入った瞬間に先制して火を放った直後に、首を落とすか殴るかすればいける。
狭いので、刀や槍などの長いものよりも、こん棒などの方がよほどいい。このダンジョンを設計した者がいるのなら、
「そんなつもりの部屋じゃない」
と抗議されそうだが。
俺達はもう攻略済みの階層を、この前行った所まで手早く進む事にしていた。
魔術を使う魔物が出始める階に入ると、自衛隊チームが休憩していた。
どうやら浄化にせよ火などにせよ、魔術に適性のある者がいないらしい。幽霊相手には、海外のダンジョンでは聖水をまいたり宗教家を連れて入ったりして対応し、ゾンビにはひたすらしつこく物理攻撃を加えているらしい。自衛隊でも、ゾンビはひたすら殴りつけているらしいし、幽霊は塩を投げつけたりしていると聞く。
精神的にも肉体的にも、幽霊のフロアは疲れるのだろう。俺達はハルのライト一発で済むから楽だが。
俺達は軽く挨拶をして、先へ行った。
「顔色悪かったわねえ」
「わかるわ。殴って効かない相手なんて最悪じゃない」
「でも、そのせいで塩が高くなったら困るわ」
チサは、ほうと溜め息をついた。
「何を心配しているのやら」
俺は思わず苦笑した。
と、その横道から嫌な感じがした。
「そこっ」
イオが槍を振るうと、鹿の首がゆっくりとずれてごとりと落ちる。横から鹿が飛びかかって来るところだったらしい。
イオは本当は刀が欲しかったのだが、買える武器の中にこれという物がなく、仕方なく槍を使っている。しかし運動神経はいいし、武芸に関するカンがいいのだろうか。俺よりもうまく槍を扱うようになっている。
悔しいが、これがイオだ。
「鹿肉よお。シチューにしましょうかあ」
「お、いいな」
「うわ、凄い立派な角!見て!」
「立派だけど、ちょっと邪魔だなあ」
俺達は辺りを警戒しながらも、ワイワイと言いながら鹿を箱に放り込んだ。
鹿は角で突き上げる攻撃をするのだが、角で攻撃を受け止められたら、まず間違いなく放り上げられる。そしてどうかすると、落ちてきたところを角で突き殺される。
イオが一度危ない目に遭い、チサが角を掴んで辛うじて打ち身だけで済ませたというのが、鹿との最初の戦いだった。
そのままもう少し歩いたころ、それが見えた。
「ボス部屋だよ、あれ!」
この少し前の階から道が分岐するようになっており、この階のボス部屋がまだ見つかっていなかったのだ。
「何かしら」
「牛肉も食べたいわあ。得Aランクとか。あ、シャトーブリアンって聞いた事しかないのよねえ」
イオとチサがウキウキとして言う。
そういう俺も、ウキウキしてしまう。
「俺だってないよ。グラム1000円とかもないよ」
「シャトーブリアンって肉なの?ワインかホテルの名前みたいだなあ」
ハルの言葉に皆が納得の笑みを浮かべた。
「牛ですように」
イオが言い、扉を開けた。
そして、全員が黙ってそれを見た。
今や高い岩壁に区切られて「ボス部屋」というよりは「ボス廊下」という雰囲気になってしまった小部屋も、入った瞬間に先制して火を放った直後に、首を落とすか殴るかすればいける。
狭いので、刀や槍などの長いものよりも、こん棒などの方がよほどいい。このダンジョンを設計した者がいるのなら、
「そんなつもりの部屋じゃない」
と抗議されそうだが。
俺達はもう攻略済みの階層を、この前行った所まで手早く進む事にしていた。
魔術を使う魔物が出始める階に入ると、自衛隊チームが休憩していた。
どうやら浄化にせよ火などにせよ、魔術に適性のある者がいないらしい。幽霊相手には、海外のダンジョンでは聖水をまいたり宗教家を連れて入ったりして対応し、ゾンビにはひたすらしつこく物理攻撃を加えているらしい。自衛隊でも、ゾンビはひたすら殴りつけているらしいし、幽霊は塩を投げつけたりしていると聞く。
精神的にも肉体的にも、幽霊のフロアは疲れるのだろう。俺達はハルのライト一発で済むから楽だが。
俺達は軽く挨拶をして、先へ行った。
「顔色悪かったわねえ」
「わかるわ。殴って効かない相手なんて最悪じゃない」
「でも、そのせいで塩が高くなったら困るわ」
チサは、ほうと溜め息をついた。
「何を心配しているのやら」
俺は思わず苦笑した。
と、その横道から嫌な感じがした。
「そこっ」
イオが槍を振るうと、鹿の首がゆっくりとずれてごとりと落ちる。横から鹿が飛びかかって来るところだったらしい。
イオは本当は刀が欲しかったのだが、買える武器の中にこれという物がなく、仕方なく槍を使っている。しかし運動神経はいいし、武芸に関するカンがいいのだろうか。俺よりもうまく槍を扱うようになっている。
悔しいが、これがイオだ。
「鹿肉よお。シチューにしましょうかあ」
「お、いいな」
「うわ、凄い立派な角!見て!」
「立派だけど、ちょっと邪魔だなあ」
俺達は辺りを警戒しながらも、ワイワイと言いながら鹿を箱に放り込んだ。
鹿は角で突き上げる攻撃をするのだが、角で攻撃を受け止められたら、まず間違いなく放り上げられる。そしてどうかすると、落ちてきたところを角で突き殺される。
イオが一度危ない目に遭い、チサが角を掴んで辛うじて打ち身だけで済ませたというのが、鹿との最初の戦いだった。
そのままもう少し歩いたころ、それが見えた。
「ボス部屋だよ、あれ!」
この少し前の階から道が分岐するようになっており、この階のボス部屋がまだ見つかっていなかったのだ。
「何かしら」
「牛肉も食べたいわあ。得Aランクとか。あ、シャトーブリアンって聞いた事しかないのよねえ」
イオとチサがウキウキとして言う。
そういう俺も、ウキウキしてしまう。
「俺だってないよ。グラム1000円とかもないよ」
「シャトーブリアンって肉なの?ワインかホテルの名前みたいだなあ」
ハルの言葉に皆が納得の笑みを浮かべた。
「牛ですように」
イオが言い、扉を開けた。
そして、全員が黙ってそれを見た。
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