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夢(2)無理のある言い訳
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放課後、萌葱は高山と一緒に被疑者に会った。そしてすぐに、取調室へと連れて行かれる。
そこにはしょぼくれた感じの、空き巣で捕まった男がいた。
入って来た高山と萌葱を見て、首を傾ける。
「刑事さん?若すぎるような……」
それに高山が堂々と返す。
「童顔なんだよ」
「いや、それ、高校の制服だろ?知ってるよ、その校章」
「コスプレが趣味なんだよ」
真面目な顔で言い切るので、男は何度も高山と萌葱を見比べるようにしていたが、納得しておくことにしたらしい。
それで高山は、質問を開始した。
「死体のあった屋敷の話をもう一度聞きたい」
それで男は、話し出した。
いい家がないかと物色していた彼は、その家に目をつけた。そもそもこの辺りは人通りが少なく、広い敷地を囲むように塀がある。そしてその家は、塀が程よい高さで、玄関の前にオブジェのように刈り込んだ木があって、ドアを通りから隠している。ピッキングする姿を隠してくれる、ありがたい目隠しだ。
見た所、静かで物音もしないし、留守のようだ。
彼は訪問販売員のように堂々と敷地内に侵入し、慣れた手つきと素早さで鍵を開けると、家屋内に侵入した。
壺、絵画、銅像、時計、アンティークの食器、家具。いかにも金持ちの住む家らしく、金目の物がゴロゴロしていた。その内、タンスの奥にしまってあったネックレスと指輪、イヤリング、現金の入った財布を盗み出した。
そして、何気なくヒョイと窓越しにガレージを覗いた。
それで彼は、それを見た。
女の死体だ。長い黒髪を乱し、目を見開き、唇も半開きにして、空っぽのガレージの真ん中に横たわっていた。
「――!?」
彼は驚いたが、辛うじて声を殺した。大声をあげて見つかったら警察を呼ばれる心配もあるし、犯人に見つかったら自分も殺されるかも知れない、と思ったのだ。
男はなるべく素早く、しかし堂々と、その家を出た。
「それからその辺りには近寄らないようにしていたんですよ。でも、捕まった時に、そこでいただいて気に入って自分で使ってたブランド物のライターの出所を訊かれて。それで、ようやく久しぶりに思い出したんですよ」
男は罪の意識は無いような態度でそう話した。
「で、そこに入って仕事をした正確な日時は」
「2年前の成人式の日。間違いなく」
高山は萌葱を振り返った。
萌葱は男に、訊く。
「ほかに人を見なかったんですか?物音や、気になるにおいとか」
「いやあ。誰も見なかったし、これと言って記憶もないなあ。
でも、2階には上がってない。死体を見て、それどころじゃなくなったんで」
それで萌葱と高山は廊下に出て、取調室から離れた。
「どうだ?」
「一切、うそはないようですよ」
「そうか。
困ったな。一応調べに行ったんだが、死体なんてどこにも無かったし、住人も、キョトンとしていたんだよ」
高山はそう言って、何かを思い付いたように笑いを浮かべた。
「よし。今度はその家の住人を見てもらおうか」
萌葱は興味を引かれる事は認めながらも、面倒臭い事になりそうだと溜め息を堪えた。
そこにはしょぼくれた感じの、空き巣で捕まった男がいた。
入って来た高山と萌葱を見て、首を傾ける。
「刑事さん?若すぎるような……」
それに高山が堂々と返す。
「童顔なんだよ」
「いや、それ、高校の制服だろ?知ってるよ、その校章」
「コスプレが趣味なんだよ」
真面目な顔で言い切るので、男は何度も高山と萌葱を見比べるようにしていたが、納得しておくことにしたらしい。
それで高山は、質問を開始した。
「死体のあった屋敷の話をもう一度聞きたい」
それで男は、話し出した。
いい家がないかと物色していた彼は、その家に目をつけた。そもそもこの辺りは人通りが少なく、広い敷地を囲むように塀がある。そしてその家は、塀が程よい高さで、玄関の前にオブジェのように刈り込んだ木があって、ドアを通りから隠している。ピッキングする姿を隠してくれる、ありがたい目隠しだ。
見た所、静かで物音もしないし、留守のようだ。
彼は訪問販売員のように堂々と敷地内に侵入し、慣れた手つきと素早さで鍵を開けると、家屋内に侵入した。
壺、絵画、銅像、時計、アンティークの食器、家具。いかにも金持ちの住む家らしく、金目の物がゴロゴロしていた。その内、タンスの奥にしまってあったネックレスと指輪、イヤリング、現金の入った財布を盗み出した。
そして、何気なくヒョイと窓越しにガレージを覗いた。
それで彼は、それを見た。
女の死体だ。長い黒髪を乱し、目を見開き、唇も半開きにして、空っぽのガレージの真ん中に横たわっていた。
「――!?」
彼は驚いたが、辛うじて声を殺した。大声をあげて見つかったら警察を呼ばれる心配もあるし、犯人に見つかったら自分も殺されるかも知れない、と思ったのだ。
男はなるべく素早く、しかし堂々と、その家を出た。
「それからその辺りには近寄らないようにしていたんですよ。でも、捕まった時に、そこでいただいて気に入って自分で使ってたブランド物のライターの出所を訊かれて。それで、ようやく久しぶりに思い出したんですよ」
男は罪の意識は無いような態度でそう話した。
「で、そこに入って仕事をした正確な日時は」
「2年前の成人式の日。間違いなく」
高山は萌葱を振り返った。
萌葱は男に、訊く。
「ほかに人を見なかったんですか?物音や、気になるにおいとか」
「いやあ。誰も見なかったし、これと言って記憶もないなあ。
でも、2階には上がってない。死体を見て、それどころじゃなくなったんで」
それで萌葱と高山は廊下に出て、取調室から離れた。
「どうだ?」
「一切、うそはないようですよ」
「そうか。
困ったな。一応調べに行ったんだが、死体なんてどこにも無かったし、住人も、キョトンとしていたんだよ」
高山はそう言って、何かを思い付いたように笑いを浮かべた。
「よし。今度はその家の住人を見てもらおうか」
萌葱は興味を引かれる事は認めながらも、面倒臭い事になりそうだと溜め息を堪えた。
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