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海外出張(1)豪華客船
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潮風が強く吹き付けるせいで、ギラギラと照り付ける日の下でも、意外と涼しい。海と空しか目に入らない甲板の上で、半袖シャツにジーンズというセレと半袖ポロシャツにスラックスというモトは、バカンスに出掛けた親子という風に、何の違和感もなく見えていた。
「料理、これだけ店の種類もあって、しかも基本的に無料なんて凄いな。まあ、その分は料金に入ってるだけだけど」
「そう考えると、食べないと勿体ない気がしてくるな」
「貧乏性だな」
「否定はできんな」
これまた無料のソフトドリンクを手に甲板の椅子に座り、セレとモトは海を見ていた。
定期テストが終わったその日、薬師からの指令で2人はこの豪華客船に乗り込んでいた。表向きは、探偵であるモトが仕事を請け負い、セレを助手にしてこの船に乗り込んでいるという事になっている。
だが本当は、夜を待ってこっそり下船して小島に渡って殺しを完遂し、この船が寄港するのに乗じて再び乗り込み、日本へ帰って来る事になっている。
豪華客船に乗っている間、かなり自由だ。好きな時に寝て、好きな時に好きなものを食べられる。映画館もあれば劇場もある。プールもジムもあるし、色んな催し物もある。ほぼ一つの街が存在しているようなもので、買い物にも不自由しない。
仕事がなかったら確かに最高の骨休めになるだろうが、仕事でなかったら乗る事も無かったに違いない。その確信はセレにもモトにもあった。
丸2日は船上で自由時間だ。モトはジムやプールを使いたいだけ使い、セレは本を読んだり、夕日、朝日、船内の写真を撮ってまわった。写真は、撮らない方が不自然だからだ。
記念写真をひととおり撮り終え、目的の小島近くで船が停泊するのを待つ。
下船はできないが、夜、ここで打ち上げ花火があり、それを見てから次へと進む事になっていた。その時、打ち上げに乗じて船から海に飛び込み、小島に渡るというのが計画だった。
飛び込むのは、スタッフ用通路の先にあるメンテナンス用の小さいドアだ。
そこで息も身も潜めて待つうちに、ドーンという音がし始めた。
「始まったか」
モトがやれやれと言いたげな声で言う。
海上では乗客が甲板に鈴なりになって、或いはレストランの席から、花火を見ている事だろう。
そのうち花火も連発され始め、大きな音が響き渡る。
「そろそろ行くぞ、セレ」
「わかった」
モトとセレはそっと辺りを見回し、海に飛び込む音を花火の音に紛れ込ませて、そっと暗い海に身を躍らせた。
皆は花火に夢中で、海面になど目を向けてはいないし、暗い海面を静かに泳ぐモトとセレになど気付かないだろう。
こうしてモトとセレは小島に渡り、まずは上陸を果たした。
この小島は特殊な島である。ある国の一部ではあるが、後ろ暗い連中が集まり、彼らの国と言って差し支えない状態になっている。
この後ろ暗い連中から「税金」をたっぷりと支払ってもらっている国が、この島を実質擁護しているようなもので、島への出入りは、命がけだし、色々な国が監視している。第一、島へ立ち入る許可がなかなか下りない。
なので、海から「不法入島」するのだ。
海から上がり、真水をかぶってから服を絞る。
ハーフパンツは水着兼用だしシャツも速乾性なので、この暑い島では、少しウロウロしているうちに乾いてしまう。
モトとセレは、人のいない海岸地帯を離れ、島の中央部分を目指して歩き出した。
「料理、これだけ店の種類もあって、しかも基本的に無料なんて凄いな。まあ、その分は料金に入ってるだけだけど」
「そう考えると、食べないと勿体ない気がしてくるな」
「貧乏性だな」
「否定はできんな」
これまた無料のソフトドリンクを手に甲板の椅子に座り、セレとモトは海を見ていた。
定期テストが終わったその日、薬師からの指令で2人はこの豪華客船に乗り込んでいた。表向きは、探偵であるモトが仕事を請け負い、セレを助手にしてこの船に乗り込んでいるという事になっている。
だが本当は、夜を待ってこっそり下船して小島に渡って殺しを完遂し、この船が寄港するのに乗じて再び乗り込み、日本へ帰って来る事になっている。
豪華客船に乗っている間、かなり自由だ。好きな時に寝て、好きな時に好きなものを食べられる。映画館もあれば劇場もある。プールもジムもあるし、色んな催し物もある。ほぼ一つの街が存在しているようなもので、買い物にも不自由しない。
仕事がなかったら確かに最高の骨休めになるだろうが、仕事でなかったら乗る事も無かったに違いない。その確信はセレにもモトにもあった。
丸2日は船上で自由時間だ。モトはジムやプールを使いたいだけ使い、セレは本を読んだり、夕日、朝日、船内の写真を撮ってまわった。写真は、撮らない方が不自然だからだ。
記念写真をひととおり撮り終え、目的の小島近くで船が停泊するのを待つ。
下船はできないが、夜、ここで打ち上げ花火があり、それを見てから次へと進む事になっていた。その時、打ち上げに乗じて船から海に飛び込み、小島に渡るというのが計画だった。
飛び込むのは、スタッフ用通路の先にあるメンテナンス用の小さいドアだ。
そこで息も身も潜めて待つうちに、ドーンという音がし始めた。
「始まったか」
モトがやれやれと言いたげな声で言う。
海上では乗客が甲板に鈴なりになって、或いはレストランの席から、花火を見ている事だろう。
そのうち花火も連発され始め、大きな音が響き渡る。
「そろそろ行くぞ、セレ」
「わかった」
モトとセレはそっと辺りを見回し、海に飛び込む音を花火の音に紛れ込ませて、そっと暗い海に身を躍らせた。
皆は花火に夢中で、海面になど目を向けてはいないし、暗い海面を静かに泳ぐモトとセレになど気付かないだろう。
こうしてモトとセレは小島に渡り、まずは上陸を果たした。
この小島は特殊な島である。ある国の一部ではあるが、後ろ暗い連中が集まり、彼らの国と言って差し支えない状態になっている。
この後ろ暗い連中から「税金」をたっぷりと支払ってもらっている国が、この島を実質擁護しているようなもので、島への出入りは、命がけだし、色々な国が監視している。第一、島へ立ち入る許可がなかなか下りない。
なので、海から「不法入島」するのだ。
海から上がり、真水をかぶってから服を絞る。
ハーフパンツは水着兼用だしシャツも速乾性なので、この暑い島では、少しウロウロしているうちに乾いてしまう。
モトとセレは、人のいない海岸地帯を離れ、島の中央部分を目指して歩き出した。
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