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魔法のサプリメント(4)アジト

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 サプリメントの成分分析の結果はすぐに出た。
「間違いない。加藤は連中の仲間だ。後はその全貌を掴む事か」
 モトが言うのに、リクがあっさりと言う。
「じゃあ、顧客になるしかないね」
 セレも、それしかないと頷いた。
「せいぜい、よく効いたふりをしておくか」
「ああ。何回か買って様子を見よう」
 そう決まり、早速加藤に連絡を入れて、サプリメントを欲しいと頼む。
 リラックスできたと嬉しそうに言ってセレは電話を切り、氷のような目をした。
「こうやってクスリの常用者を増やしていくんだって、何で死んだやつらはわからなかったんだろうな。大体、サプリメントでも副作用だってあるのに。バカじゃないのか」
 モトは嘆息し、
「そういうもんなんだよ、クスリにはまる1歩目は」
と言った。

 連絡して、サプリメントを買う。
 その値段は、段々あがって行く。研究室で制作したものでたくさんはできないからというのが加藤の言い訳だ。
 それにセレは仕方なくといった感じで料金を払う。
 が、そろそろ調べも進んだという事で、次の段階に進む事になった。
『小遣いも貯金していたお年玉も使い切ったし、バイトもできない。何でもするからどうにかできませんか』
 イヤホンで聞いているモトは苦虫をかみつぶしたような顔をし、リクはそれに苦笑した。
「いや、本当に言ってるんじゃないからさ」
「わかってる。本当だったら、叱り飛ばしてる」
 リクは吹き出すのをこらえながら、
(お父さんみたい)
と思った。
『何でも?そうだねえ』
 加藤は考えるように言って、続けた。
『わかった。上の人と会ってみるかい?そこで、仕事をもらえたら、ね』
『はい!お願いします!』
 そして、セレの位置を示すGPSの点が、動き出した。

 セレは加藤に連れられて、あるビルに来た。1階がバーになっており、舞台のセットのような大きな階段で2階に上がれるようになっていた。そこはVIPルームらしい。
 そしてその階段の下に隠れるようにして奥へ続く通路と下へ下りる階段があった。奥には厨房があるのが見えた。
 どちらの階段にも、がっしりとした体格の強面の男が警備している。
(見かけだけだな)
 その脇を通って下へ下りながら、セレは思った。
 地下には大きな部屋があり、並んだソファにたくさんの男や女がゆったりと座り、未成年の男女が接客している。
(ガールズバーか?18歳以下の)
 辺りを観察しながら加藤に続いて奥へ歩いている間に、数組がソファから立ち上がって、廊下へ出て行く。
(ああ。未成年者の買春か)
 目付きも手つきも、それを示唆していた。
 そう思ってふと気付くと、何人かの客が、値踏みするような目付きを自分に向けているのに気付いた。目が合うと、わざとらしく舌なめずりして見せる者もいる。
 ようやく奥のソファセットに辿り着くと、中央に座っていた男が、セレの頭から足の先までを眺めながら加藤に訊いた。
「この子か」
「はい」
「ふうん。
 向井君だったか。ここでバイトするなら、バイト代としてサプリメントを融通するよ」
 男は笑顔を浮べながら言う。胡散臭い笑顔だ。
 セレは、気弱な向井を演じながら訊く。
「あの、どんな仕事なんでしょうか。ぼく、バイトってした事がなくて」
 男は笑った。
「なあに、簡単なもんだよ。癒しを求めに来るお客様に、気持ちよくなっていただくだけだ」
 セレは、
(物は言いようだな)
と思った。
「でも、ぼく、あんまり知らない人と、うまく喋る自信がありませんけど……」
 加藤は隣から、にこにこと笑いながら、セレの肩を抱いて言う。
「心配ないよ。にこにこして、あとはお客様の言う通りに、任せていれば平気だから」
 セレの視界の隅で、また1組の客と未成年者がソファを立って出て行った。
「ほかに何かありませんか。皿洗いとか、掃除とか」
 それに男も取り巻きも加藤もクスクスと笑い出す。
「それはプロのスタッフがいるからなあ」
 加藤が困ったような笑みを浮かべた。
「ああ。もうひとつあるにはある」
 男が言って、人差し指をピンと立てた。
「何ですか?」
「うん。デスマッチってわかるだろ。どちらが勝つか客は賭けをするんだ。で、それに出る事。
 どっちにする?デスマッチに勝てば、掛け金の1割が君のものになるけど……正直、君に向いてそうには見えないかな」
 それで彼らは、再び笑う。今度の笑みは、意地悪さが隠しきれていない。
 セレは周囲を見て、訊いた。
「それ、今からですか」
 男が驚いたような顔をしてからそばの女に顔を向けると、女は
「1人います」
と答える。秘書のような存在らしい。
「いいのか、それで」
 加藤が念を押す。
「はい」
「OK。
 1時間後にデスマッチを行うと知らせろ。賭けの締め切りは50分後だ」
 それで男達はさっと動き出し、セレは加藤に肩を掴まれた。
「控え室に案内しよう」
 優しい加藤先生には不似合いの、食いこむような力強い手だった。




 
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