一大事!

JUN

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相続でござる

祝言

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 大島家では、おえいが離縁された後に阿片で死亡。要之助も病を得ての病死届けが出された。
 そして本宮家は、佐奈の婿取り相続が認められた。
「まあ、どうにか落ち着いたね」
 宗二郎が、ぼんやりとしている佐奈に言う。
「まあなあ」
「佐奈ぁ」
「だってのう、宗二郎。面倒臭かったのだぞ?上様にお目見えするのに、やたらめったら手順を踏んで、時間はかかるし、奏者番はうるさいし」
「あはは。お疲れ様。
 ばあやさんは、さぞ張り切っただろうね」
「他人事だと思うて……」
 怨めしそうに佐奈は宗二郎を睨んだ。
 と、秀克が笑う。
「まあ、仕方ないな。でも、これで文句は言われない」
 佐奈の婿養子として秀克が入り、上戸家は行克が継ぐ事が決まったのだ。
 これも、幕府の許可がないとできない事で、武家社会というのは、面倒臭い事のオンパレードだ。しかし後は、祝言さえ上げればおしまいだ。
 そして代々当主夫婦にしか伝えられない本宮家の秘密を、本宮から2人は伝えられた。
 本宮家は、万が一徳川将軍が自刃しなければいけなくなった時に、介錯する事を命じられている唯一の家であり、それを示す文書とその為になかごに徳川の紋と本宮の紋とを刻んである刀を賜っているのだ。それを、代が代わってお目見えする時には持参する事になっていたらしい。
 疲れた気分なのは、これを知ったせいもある。
 そんな日が来ない事を、祈るばかりだ。
「しかし、残念じゃ。国許へ行けばもっと自由になれるし、上戸家の皆ともまた会えると思うておったのに」
「いや、今でも物凄く自由だよね、佐奈」
 秀克と光三郎が噴き出す。
「しかし、秀克が若殿かぁ」
 光三郎が感慨深気に言う。
「人前で無ければこのままでいいぞ。なあ、佐奈」
「勿論。
 秀克も、私の苦労がわかっただろう?」
「ああ。わかった」
「ばあやの説教を受ければもっとわかる」
「それは勘弁してもらいたい」
 一同はひとしきり笑って、空を見上げる。
「祝言までもうすぐだねえ」
 小春日和の空に、ぽっかりと雲が浮かんでいる。
「寒いな。ちょっと体を動かして温まるか」
 佐奈がやおら起き上がって、いそいそと竹刀を手にする。
「佐奈。ばあやが――」
「まあ、佐奈様!何ですか!」
「ほら見付かった!」
「まずい、逃げろ!」
 4人は笑いながら庭へ飛び降り、走り出した。
 秀克は笑いながら、
(この様子では、退屈しない毎日になりそうだ)
と、佐奈の手を取って確信した。





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