公安部公安総務課魔術係

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笙野のヤケクソの打ち上げ

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 6係での打ち上げを部屋でした後、深い事情を唯一知るあまねとヒロムと笙野は、オクトパスで飲み直していた。
「フン。上手くまとめたものねえ。そう思わないぃ?」
 笙野が、ビール、ワイン、ジン、テキーラ、日本酒、ウォッカと手当たり次第に注文して片っ端から飲みながら言った。
 紺野の遺体を解剖してみると、顔に整形の痕が見付かったのだ。それで、「紺野という人物に成り代わって入り込んだ」というストーリーに書き換え、「協力して、我々はテロに立ち向かう」と彼らは手を取り合って宣言して見せたのだった。
 笙野やあまねやヒロムがおとがめを受ける事もなく、警視総監賞をもらったくらいだ。
 ただ、口外禁止と、守秘義務の徹底を再確認させられただけだった。
「係長。明日も仕事ですから。二日酔いはきついですよ」
「はああ?大丈夫よ。あたしを誰だと思ってんの。ああ?」
「だめだ、あまね。目が完全に座ってるぜ」
 ヒロムは言って、それならと、果汁のいっぱい入った少しアルコールが入っただけの飲み物を作り、笑顔で笙野に手渡した。
「特製カクテルだぜ。かんぱーい!」
「かんぱーい!」
「これが社会人の知恵か」
 あまねはグレープフルーツジュースのソーダ割りを飲みながら感心した。
「紺野はねえ、いいやつだったのよう。アメリカに留学して、何かあったのよお。
 そうだ。何とかっていう官僚にもてあそばれて捨てるように振られてからかも知れないわ、そう言えば。
 あのクソ野郎。会ったら、もいでやる!」
「え。何を?」
 真顔であまねが訊き、ヒロムは膝をキュッと閉じた。
「紺野ぉ。これであたしの戦友はいなくなったじゃないのぉ」
 べしょべしょと泣き出す笙野に、あまねとヒロムも痛ましい目を向ける。
「もう、心のオアシスはあんたたちだけね。ああ、もう。目の保養ぉ。へへへ」
 あまねは冷たい目を笙野に向け、ヒロムは首を傾げた。
「んん?そう?まあ、オレはいい男だと思うしな。係長も見る目があるじゃん」
「でへへへへ」
 あまねは笑い合う2人を前に頭を抱えた。
「で、どっちが攻めでどっちが受け?」
「は?ん?まあ、どっちかって言うと、オレは攻めていくタイプだぜ!あまねはじっくり考えて受け止める係?」
「……ヒロム、意味が違う……」
「ふふふふふ」
「あはははは」
「……もういいや……」

 大海原の真ん中に、大きな船が浮かんでいた。ある大富豪の所有する、海上の宮殿とも言うべき豪華な船だ。
 その中の一室に、ゆったりとくつろぐ男女10名がいた。
「今回の代理人は失敗したようですね」
「強力な邪魔が入ったらしい」
「チャンスだったのに、惜しいわ」
「また、やればいい」
「そう。次のチャンスを、ノアに話し合ってもらってね」
 そう言って、一方を見る。そこには、脳を収めたたくさんの水槽が並んでいた。
「人類は一括管理されるべきだよ」
「そう。優れた先人の脳が導き出した答えに従っていればいい」
「その言葉を伝え、管理の代行をするのは我々ノアの代理人」
「国も首脳もいらない」
「ノアとノアの代理人がいればいい」
「新しい未来に」
「未来に」
 彼らは深い色の赤ワインを掲げ、上品に一口含んだ。




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